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2 嘘に良し悪しはない。人に善悪があるだけだ。
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人は嘘をつく時に必ず綻びが生まれる。表情、しぐさ、声のトーン、らしくない言動などなど。内面と外面で生じるズレを隠そうとする行動が違和感を生む。それでも大抵の人は嘘を嘘だと見抜けない。だから人はリスクを冒してでも嘘をつくのだ。
そして嘘にはいくつか種類が存在する。
星宮望愛が信用できないのはこの女が嘘をついたからではない。嘘は人の性であるので嘘=悪と単純に決めることはできない。
信用できない理由は、この女が自分の利益のためだけに嘘をつくタイプの人間だからだ。
俺には言葉の真偽が分かる。先天的なもので、物心がついた頃から人の発言に対して稀に違和感を覚える時があった。それが嘘だと分かった時から今まで、人の発言一つ一つに敏感になってしまっている。
なぜ嘘だと分かるのか。嘘をついた際に生まれるズレ、綻びを感じ取ることができるとでも言うのだろうか。
先程の星宮の発言、
みんなの夢も全力で応援してる。私で良ければいつでも力になる。
これは全てが嘘で構築された言葉だ。この女は自分の夢以外興味がない。親も友人も全てファンの1人という数字でしか見てないのだろう。
アイドル。和製英語で偶像を意味する。この女はアイドルの星宮望愛という偶像を作り出し、自分を全てその影に隠している。
だからこそ信用ができない。多分SCを稼ぐためなら一クラスまるごとを騙し切れるだろう。
警戒しておくか。面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。
星宮が別の席に挨拶しに行ったあと、天坂が再び話しかけてきた。
「望愛ちゃん、すごくキラキラしてたね」
「そうだな。ああいうのがSCを稼いでいくタイプなんだろうな」
「すごい人と同じクラスになっちゃったね…でも良い子そうでよかったな」
「…ああ」
天坂が不器用タイプなのを差し引いてもあの演技力は見事だ。キラキラで全てを覆い隠している。多分このクラスで星宮の内面が見えているのは俺だけだろう。もし何か良からぬことを企てることがあったとしても巻き込まれることは確実にないだろう。
もし俺がただの凡人であったならば。皆と同じように騙されて、ただ盲目に応援することができたなら。今頃は幸せだったのだろうか。
真実には価値がある。そして時にそれは残酷だ。
14:50。才堂学園はこの時間で全ての授業が終了する。各々が自分の能力を磨くも良し、部活に熱を注ぐも良し、友達との青春を謳歌するも良し。とにかく校風が自主性を重んじているのだ。
入学から4日が過ぎた。俺は特に部活に所属する気もなく、遊びに出かける友人がいるわけでもないので帰宅以外することがない。
とはいえ時間が余りすぎる。今後のことを考えると、何か考えておかないといけないな。金がかかりすぎず、1人でできそうなものは何があるだろうか。そんなことを考えていると、いつの間にか天坂がこちらを向いている。人に話しかけるのが苦手な彼女は心の準備が必要なのだろうか。それともタイミングを計っているのか。
「どうした」
埒が明かないのでこちらから話しかけてみる。肩の荷が下りたのか、表情が和らいだように見える。
「鷹野瀬君って入る部活決めた?」
「いや、部活には入らないつもりだ」
「え?でも、全員どこかに所属しないといけないって聞いたよ」
初耳だ。少なくとも俺の聞いていた限りではそんな情報は入ってきていない。かといって天坂が嘘をついているわけでもない。
「それはどこの情報なんだ?」
「私の隣の席のひとが『あーー。部活が決まらねぇー!どこかに入らなきゃなのになー』って言ってたから…」
天坂の隣。中村か。会話したことがないからどんな奴かはあまり把握できていないが、見た感じ悪質な嘘をつくようなやつじゃない。いや、嘘がつけないようなやつだ。
それでも情報そのものの信憑性は薄い。だが、ここの学校は色々と特殊だ。本当の可能性も否定はできない。
「一度先生に聞きに行けばいいんじゃないか」
確実な情報を持つ人物に聞く。まぁ普通の判断だ。
「でも、入部締め切り今日の17時までだよ。今から体験に行ったりしてたら間に合わないかも」
それに…と続ける天坂。
「せっかくならどこか入ってみようかなって」
「いいんじゃないか。部活に打ち込むのも高校生活の正しい使い方だ」
「それでさ…私、人と話すのがあまり得意じゃないから、よかったら一緒に回ってくれないかな?」
なるほど。だいぶ俺は信頼されているらしい。実際、天坂が俺と星宮以外と会話している姿を見かけない。星宮はアイドルのための講習を受けているようだから必然的に俺に役目が回ってくる。
だがまぁちょうどいい。俺も流れでどこか過疎ってる部活に入部して幽霊になろう。
「分かった。それなら一緒に部活を探そう。入部が強制なら俺もどこか見つけないといけないしな」
「ありがとう!1人だと不安だったんだ」
「それで、希望の部活とかはあるのか?」
中学でやってた部活に入るのが安牌だろう。俺の場合だと英語研究会。英語のボードゲームで時間を潰すだけだったので幽霊になるのも簡単だった。
「私、中学の時は芝刈り部やってたんだけど、流石に無さそうだから新しい所探さないといけないなぁ」
なるほど。芝刈り部なんてここでは間違いなく存在しない。というか芝刈り部ってなんだ?嘘を言っていないからこそ余計に訳がわからない。
さっきの中村のモノマネといい、天坂は実は面白いやつなのかもしれない。
「それじゃあ適当に見て回ろう」
とりあえず今日は退屈しなさそうだ。それに、せっかくの高校なら何か部活に入ってみるのもありかもしれない。そこで何か面白いものと出会うかも。
そんな期待をしながら俺は教室を後にした。
そして嘘にはいくつか種類が存在する。
星宮望愛が信用できないのはこの女が嘘をついたからではない。嘘は人の性であるので嘘=悪と単純に決めることはできない。
信用できない理由は、この女が自分の利益のためだけに嘘をつくタイプの人間だからだ。
俺には言葉の真偽が分かる。先天的なもので、物心がついた頃から人の発言に対して稀に違和感を覚える時があった。それが嘘だと分かった時から今まで、人の発言一つ一つに敏感になってしまっている。
なぜ嘘だと分かるのか。嘘をついた際に生まれるズレ、綻びを感じ取ることができるとでも言うのだろうか。
先程の星宮の発言、
みんなの夢も全力で応援してる。私で良ければいつでも力になる。
これは全てが嘘で構築された言葉だ。この女は自分の夢以外興味がない。親も友人も全てファンの1人という数字でしか見てないのだろう。
アイドル。和製英語で偶像を意味する。この女はアイドルの星宮望愛という偶像を作り出し、自分を全てその影に隠している。
だからこそ信用ができない。多分SCを稼ぐためなら一クラスまるごとを騙し切れるだろう。
警戒しておくか。面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。
星宮が別の席に挨拶しに行ったあと、天坂が再び話しかけてきた。
「望愛ちゃん、すごくキラキラしてたね」
「そうだな。ああいうのがSCを稼いでいくタイプなんだろうな」
「すごい人と同じクラスになっちゃったね…でも良い子そうでよかったな」
「…ああ」
天坂が不器用タイプなのを差し引いてもあの演技力は見事だ。キラキラで全てを覆い隠している。多分このクラスで星宮の内面が見えているのは俺だけだろう。もし何か良からぬことを企てることがあったとしても巻き込まれることは確実にないだろう。
もし俺がただの凡人であったならば。皆と同じように騙されて、ただ盲目に応援することができたなら。今頃は幸せだったのだろうか。
真実には価値がある。そして時にそれは残酷だ。
14:50。才堂学園はこの時間で全ての授業が終了する。各々が自分の能力を磨くも良し、部活に熱を注ぐも良し、友達との青春を謳歌するも良し。とにかく校風が自主性を重んじているのだ。
入学から4日が過ぎた。俺は特に部活に所属する気もなく、遊びに出かける友人がいるわけでもないので帰宅以外することがない。
とはいえ時間が余りすぎる。今後のことを考えると、何か考えておかないといけないな。金がかかりすぎず、1人でできそうなものは何があるだろうか。そんなことを考えていると、いつの間にか天坂がこちらを向いている。人に話しかけるのが苦手な彼女は心の準備が必要なのだろうか。それともタイミングを計っているのか。
「どうした」
埒が明かないのでこちらから話しかけてみる。肩の荷が下りたのか、表情が和らいだように見える。
「鷹野瀬君って入る部活決めた?」
「いや、部活には入らないつもりだ」
「え?でも、全員どこかに所属しないといけないって聞いたよ」
初耳だ。少なくとも俺の聞いていた限りではそんな情報は入ってきていない。かといって天坂が嘘をついているわけでもない。
「それはどこの情報なんだ?」
「私の隣の席のひとが『あーー。部活が決まらねぇー!どこかに入らなきゃなのになー』って言ってたから…」
天坂の隣。中村か。会話したことがないからどんな奴かはあまり把握できていないが、見た感じ悪質な嘘をつくようなやつじゃない。いや、嘘がつけないようなやつだ。
それでも情報そのものの信憑性は薄い。だが、ここの学校は色々と特殊だ。本当の可能性も否定はできない。
「一度先生に聞きに行けばいいんじゃないか」
確実な情報を持つ人物に聞く。まぁ普通の判断だ。
「でも、入部締め切り今日の17時までだよ。今から体験に行ったりしてたら間に合わないかも」
それに…と続ける天坂。
「せっかくならどこか入ってみようかなって」
「いいんじゃないか。部活に打ち込むのも高校生活の正しい使い方だ」
「それでさ…私、人と話すのがあまり得意じゃないから、よかったら一緒に回ってくれないかな?」
なるほど。だいぶ俺は信頼されているらしい。実際、天坂が俺と星宮以外と会話している姿を見かけない。星宮はアイドルのための講習を受けているようだから必然的に俺に役目が回ってくる。
だがまぁちょうどいい。俺も流れでどこか過疎ってる部活に入部して幽霊になろう。
「分かった。それなら一緒に部活を探そう。入部が強制なら俺もどこか見つけないといけないしな」
「ありがとう!1人だと不安だったんだ」
「それで、希望の部活とかはあるのか?」
中学でやってた部活に入るのが安牌だろう。俺の場合だと英語研究会。英語のボードゲームで時間を潰すだけだったので幽霊になるのも簡単だった。
「私、中学の時は芝刈り部やってたんだけど、流石に無さそうだから新しい所探さないといけないなぁ」
なるほど。芝刈り部なんてここでは間違いなく存在しない。というか芝刈り部ってなんだ?嘘を言っていないからこそ余計に訳がわからない。
さっきの中村のモノマネといい、天坂は実は面白いやつなのかもしれない。
「それじゃあ適当に見て回ろう」
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