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リップサービス【近下視点】
芽生えた恋心
しおりを挟むそこからの学校生活は今まで以上に高垣を意識するようになった。
そして、俺の妄想癖が本領発揮した。
集会で話せる日の前日は「急に遊びに行こうって誘われたらどうする?!高垣と俺ならどこに出かけるだろ?」って頭の中で幸せなビジョンを何度も想い浮かべたし、体育祭や文化祭は準備の期間から撤去まで高垣との妄想が捗った。
文化祭なんかは高垣とばったり会って「俺、近下とお店回りたいって思ってたんだよね」って誘われて、急遽二人でお店を回ることになるっていうシミュレーションという名の妄想を100回以上した。
けど当日は顔を合わせることすらなくて、ステージの上でクラスメイトとソーラン節踊ってる高垣を遠くから眺めることしかできなかった。
(これが現実……)
(俺は高垣から友達とカウントされてるかどうかも定かじゃない……そもそも住む世界が違うから。)
(たまたま集会で隣り合わせになっただけ。)
月日が経つごとに高垣の周りにはどんどん人が増えていった。
高垣が他校の女の子と付き合いだしたって噂も耳にすることがあった……。
高垣の中で俺の存在はどんどん薄まってるに違いない……。
と、希望を失いかけていたが、二年に進級すると俺たちは晴れて同じクラスになることができた。
(高垣、近下……前後の席だ。)
俺は正直入学初日くらい緊張していた。
いや、あの時は気分が悪くて吐きそうになる緊張だったけど、今回はワクワクドキドキで失神しそうな緊張だ。
(第一声目、なんて声かける……?)
(「おはよう、高垣!同じクラスになれたな!これからよろしく!」……平凡すぎか?コミュ障の俺がこんな明るく話せるか?「同じクラスになれて嬉しい」……キモいかな。「これからは集会以外もたくさん会えるな」いや、キモい……うぅ、どんどんキモくなる……)
「近下っ!」
「?!」
聞き覚えのある声に勢いよく反応して顔を上げた。
「おはよ!」
「……お、おはよ」
(た、高垣だぁぁぁ!!)
(話しかけてくれた……!!!!)
(もっと元気良くしゃべる予定だったのに……!!素っ気ない挨拶になった……)
「今日から毎日会えるな!」
「うん……っ」
俺が言うのを躊躇った言葉を高垣はさらっと言った……。
「高垣、かっこいいな……」
「なんで?」
「へ、え?」
「俺のことなんでかっこいいって思ったの?」
「え?!え、俺口に出てた?!?!」
「出てたよ。」
高垣がイタズラっぽく笑うから俺はさらに顔が熱くなった。
「ねぇ、なんで?」
「え、いや……」
「隠すなよ~。」
「……そのままの意味だけど。」
「ちゃんと説明して。じゃないと近下の好きな子に俺と間接キスしたことバラしちゃお!」
「へ?」
高垣が珍しく意地悪なこと言ってきた。
(俺が好きなのはお前だよ!!!!)
(あぁ……また口走るかもしれないからあんまり自分の世界に入るな……。)
この流れで話さないと『高垣との間接キスばらされてもいいって思ってる変な奴』って思われる可能性があったので、観念して話し始めた。
「高垣のこと、かっこいいって言ったのは、」
「うん。」
「俺が言うの恥ずかしかったこと高垣がさらっと言ったから……っ、」
「……じゃあ近下も毎日俺に会えるって思ってくれたの?」
「……っ!!」
ヤバい顔が熱い……!!
「ははっ嬉しい!」
高垣が嬉しそうに笑った。
(あぁ……好きだ。)
俺が幸せに浸ってる間に高垣の友人が来たことで、束の間の二人っきりの時間が終わってしまった。
(1日目でこれだけ会話できた……明日から毎日これが続くのか?!)
俺は心の中でガッツポーズを決めた。
それから俺の『高垣と仲良くなるプラン』という名の妄想が止まらなくなった。
しかし、翌日からは高垣の周りは人がたくさん集まってまともに会話できない状態になってしまった。
そしてまた高垣と俺の間にある距離を思い知らされた。
でも、毎朝HRが始まる前に高垣が「おはよう」って必ず声をかけてくれた。
隣の席でも前の席でもなく、俺に絶対挨拶してくれる。
(俺、高垣の友達にカウントされてると思っていいのかな……)
俺は高垣との関係をさらに進展させたいって切望するようになった。
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