愛しい隠れ美少年はサキュバスだった。

RED

文字の大きさ
1 / 18
想田くんに夢中

愛しの想田くん

しおりを挟む
(またか?)

朝登校してきて靴を履き替えようと下駄箱を開けるとメッセージアプリのIDが書かれたメモが入っていた。
ここ数日で何回もこういうのが入ってる。

ここ最近ある出来事がきっかけで何でか注目を集めてる。
そのある出来事っていうのは階段から落ちた一年の女の子を俺が助けたこと、それで俺の好感度が上がってるらしい。

「倉本先輩おはようございます!」
「おーおはよー」

メモを見つめていると後輩女子二人が駆け寄ってきた。

「昨日SNSからDM送ったんですが見てくれました?」
「?いや、SNSあんま見ないから気づかなかった」
「えー!先輩と話したいことがあったから送ったんですよ」
「おー、ごめん」

(朝から元気いっぱいだな。)

「先輩、SNSじゃなくてメッセアプリの方で連絡先交換しましょうよ!」
「あー俺あんま連絡先交換しないようにしてるからごめん」
「えーなんでー??」
「連絡無精だから」

話してると視界の端に俺の意中の人が音楽聴きながら登校してきたのが見えた。

「ごめん、俺行かなきゃ!」
「あ、先輩!送ったDM返事下さいね!!」
「思い出したらねー」

俺は彼女たちを置いて想田くんの元に駆け寄った。

「想田くん、おはよー」
「……おはよう」

想田くんの顔を覗きこんだら驚いた様子でイヤホンを取った。
想田くんは少し照れてる顔で視線を落として挨拶した。

(今日も可愛いな……!!)

想田くんは綺麗な黒髪だけど前髪が重くて目元が隠れている、おまけに黒ぶちメガネかけてるから表情がわかりにくい。
基本無表情だからちょっととっつきにくい雰囲気だったけど、話すようになって感情が声とか顔色とか雰囲気に出てしまう素直な子だって知った。

「昨日の夜カミナリすごかったねー!」
「……うん」
「俺カミナリの音で起きちゃった!うちの姪っ子も起きちゃって、姪っ子が寝付くまで一緒に小声で歌うたって過ごしたんだー」
「そうなんだ」

(あ、ちょっとだけ微笑んでくれた)

1日で唯一想田くんとお喋りできる時間がこの朝の時間。
……いや、俺が一方的に話してるように見えるけどこれは想田くんなりの最大限のコミュニケーションだと思う。

「それからさ、」
「クラぁ!」

クラっていうのは俺、倉本彰悟のあだ名。
友人たちが俺の元に駆け寄ってきた。

(貴重な想田くんとの時間なのに……)

教室に向かう足を止めたら想田くんが俺を置いていくだろうし、今日のお喋りが終わってしまうのはわかりきってたから、何とか友人たちの会話を切り上げて想田くんとの時間に移行しようと考えを巡らせていた。

「クラお前、笹木ちゃんにデート誘われたんだろ?」
「デートじゃない!ていうか断った」

(うわぁ……想田くんの前でデート誘われたとか言うなよー!!)

「は?!断った?!?!なんで?!?!」
「行く必要ないから」
「いや、行けよ!笹木ちゃんお前に気があるのわかりきってるじゃん」
「気なんかないよー。この間のお礼したいって言われただけ」

みんなが笹木ちゃん笹木ちゃん言ってる子はこの間階段から落ちた女の子。
フィギュアスケートで活躍していて地元で有名な子らしくて、こいつらみたいにファンしてる人間が多い。
あそこで怪我してたら選手生命に関わることだったって、笹木さんにもすごく感謝された。
それで今度の休みお礼がしたいから一緒に過ごさないか?って誘われた。
二人が気まずければ友達も呼んで会いましょうとまで言ってくれた。
笹木さんが申し訳なさそうにしてるのも、感謝してるのも、ひしひしと伝わってきた。
けど俺はたまたま笹木さんの後ろにいただけだから気にしないでって断った。
けどこのファンボーイたちはそれが納得できないらしい。

「笹木ちゃんとお近づきになれるチャンスを不意にするのか……?」
「俺には必要ないチャンスだからね」
「イケメンでモテるからって余裕見せやがって!!」
「そういうの関係ないよー」
「お前の代わりに俺が行くから代われよー!!」
「やましい事考えてる奴をホイホイ女の子に近づけるわけないでしょ」
「イケメンぶりやがってぇー!!」

友人がふざけて肩をポカポカ殴ってきた。
友人と軽口を叩きながら想田くんの横をキープし続けた……けど教室に着くなり想田くんは一直線で自分の席についてイヤホンして本を読みはじめた。

(想田くんとの時間、終わっちゃった……)

想田くんは人と極力関わらないようにして過ごしてるみたいだ 。
だから一対一で会話できる朝のタイミングしか話さないようにしてる。
1日の数分間だけなんだけど、俺はその時間を大事にしている……なのに、アイツらぁ……。
俺は少しずつでいいから想田くんと仲良くなりたい……いつか心置きなく話せるようになって、遊びに出かけたりもして、そして行く行くは恋人にしてもらえると嬉しいな!!と、自分は思ってる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...