残された世界

幸輝

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『まじか、サ終か』

 部長のSNSの最新のつぶやきは、この一文だった。これはきっと、私達の世界・学討サービス終了のことを意味しているのでしょう。
 もう少し下に画面をスクロールさせ、過去のつぶやきを辿ってみる。

『もう10周年か、長くやったなぁ』
『惰性でやってるだけだけど、消せないんだよなw』
『ソシャゲを一年以上続けられてるの中々ないけど、学討だけは一応10年近くやってて草』

「部長……何気に学討のこと、たくさんつぶやいてるね……」

 どこに目があるかわからないあやなだが、きちんとパソコンに表示されている部長のつぶやきは読めているようだ。

「あ! これ! 先月のスズ先輩の誕生日にファンアートで、スズ先輩の絵をアップしてるー!」

 今までパソコンから離れていたスズ先輩が、メガネをくいっと持ち上げ、パソコンに食い入って見る。

「うま!」
「スズさん語彙力皆無ですね」

 先生の言葉に、スズ先輩は咳払いをした。

「リツイートとかコメントもいっぱいついてる~、もしかして、部長って有名人!? フォロワーは……500人! 結構いるねー!」

 フォロワーの数を確認してから、あやなはイラストの下に続いているコメント欄を読む。

『学討なつかし~』
『スズ先輩誕生日か、まだサ終してないの?』
『何のキャラか存じませんが、知的で魅力的ですね!』

 今まで、少しだけほんわかしたムードだったが、コメント欄を読むと、一気に胸がきゅっとなった。
 このコメントだと、もはや学討自体が過去のもの、になりつつある存在なのだ。

「長居してないで、部長が私達のことをきちんと大切なものだと思っていたことが知れただけで良いでしょう」
「スズ先輩は自分のおたおめイラスト見れたから良いでしょうけど、私のイラストも見たいです!」

 あやなは検索欄で自分の誕生日を打ち込む。
 すると予想通り、あやなの誕生日イラストがでてきたのだが、
「なにこれ……」
あやなは、思わず声をもらす。

 そこには、あやなだけどあやなではない、目も鼻も口も眉も、全てのパーツが揃ったあやなが、花束を持って微笑んでいたのだ。

『あやなハピバ。顔は願望w』
「ほら、大切に思われてるじゃない」

 ちょっと羨ましそうに、スズ先輩は言う。

「ゆま……」

 あやなは私によりかかってきた。

「ゆまぁ……」

 感激しすぎて、涙こそはないけれど、泣き声だけ漏らすあやな。
 私は優しくあやなの頭を撫でてあげる。

 皆の親愛度がカンストしてるのは、推しキャラがカンストしたから、別キャラを上げよう、という満遍なくカンストを目指している訳ではない。
 部長にとって、一人一人のキャラクター全員にきちんと愛を持って接していたのだ、と実感できた瞬間であった。

 生徒会室には、しばらくあやなの泣き声が響き渡った。

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