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一章
3話
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木刀がイエンの手から離れたかと思うと、宙を舞い地面に落ちた。
「どうだ? まだやるか?」
ジェーンは、くすりと笑いながらイエンの様子を伺う。
「もう! 少し休憩!」
イエンは、すねた様子でそっぽを向いた。
一時間しない程度の稽古の末、疲れたイエンの言葉である。
「ちょっとくらい手加減しろよなー」
イエンは息を切らしながら芝生に横たわった。
どこからか吹き抜ける風がイエンの火照った体と芝生をかけて行く。
「おいおい、最初の勢いはどうした?」
ジェーンはイエンの顔の近くにしゃがみこみ、苦笑いしながら頭を指で小突いてやった。
「……この頃、体調悪いんだよ……」
ぼそりと何気なく呟いたイエンの言葉に、ジェーンの目つきが急にきつくなる。
「どういうことだ?」
いつも話しかけやすいオーラを出しているジェーンであるが、心配とは別の険しい表情で問う。
「え、いや……たぶん寝不足なのかな? あとは節々が軋むように痛いっていうか……稽古のしすぎで筋肉痛かな……」
「他には!?」
どうってことはない、と最後を締めくくろうとしたイエンだったが、真剣な眼差しでたたみかけるジェーンを見、言葉を詰まらせた。
「別に、俺の体のことなんだから、ジェーンがそんなに心配しなくても……」
いや、とジェーンは間髪いれずに否定をして続ける。
「イエン様のお守りが俺の仕事なんだから、体調管理も役目だ……異常があったら、すぐに教えること」
「……わかった」
あまりにもジェーンの真面目な表情に、イエンはそれしか言葉が見つからなかった。
「あ! そうだ! 気分転換に街で買い物でもしようよ!」
重苦しい空気に耐えかねたか、イエンは弾みをつけて芝生から起き上がる。
「……節々が軋むように痛いってのは本当かぁ?」
「休憩して体力回復したの!」
ジェーンは腕を組み、軽くため息をついた。
「そうですか……じゃぁ、あまり大荷物にならない程度で頼みますよ」
ジェーンはイエンの少し前を歩き始め、イエンもひょこひょことついていった。
「どうだ? まだやるか?」
ジェーンは、くすりと笑いながらイエンの様子を伺う。
「もう! 少し休憩!」
イエンは、すねた様子でそっぽを向いた。
一時間しない程度の稽古の末、疲れたイエンの言葉である。
「ちょっとくらい手加減しろよなー」
イエンは息を切らしながら芝生に横たわった。
どこからか吹き抜ける風がイエンの火照った体と芝生をかけて行く。
「おいおい、最初の勢いはどうした?」
ジェーンはイエンの顔の近くにしゃがみこみ、苦笑いしながら頭を指で小突いてやった。
「……この頃、体調悪いんだよ……」
ぼそりと何気なく呟いたイエンの言葉に、ジェーンの目つきが急にきつくなる。
「どういうことだ?」
いつも話しかけやすいオーラを出しているジェーンであるが、心配とは別の険しい表情で問う。
「え、いや……たぶん寝不足なのかな? あとは節々が軋むように痛いっていうか……稽古のしすぎで筋肉痛かな……」
「他には!?」
どうってことはない、と最後を締めくくろうとしたイエンだったが、真剣な眼差しでたたみかけるジェーンを見、言葉を詰まらせた。
「別に、俺の体のことなんだから、ジェーンがそんなに心配しなくても……」
いや、とジェーンは間髪いれずに否定をして続ける。
「イエン様のお守りが俺の仕事なんだから、体調管理も役目だ……異常があったら、すぐに教えること」
「……わかった」
あまりにもジェーンの真面目な表情に、イエンはそれしか言葉が見つからなかった。
「あ! そうだ! 気分転換に街で買い物でもしようよ!」
重苦しい空気に耐えかねたか、イエンは弾みをつけて芝生から起き上がる。
「……節々が軋むように痛いってのは本当かぁ?」
「休憩して体力回復したの!」
ジェーンは腕を組み、軽くため息をついた。
「そうですか……じゃぁ、あまり大荷物にならない程度で頼みますよ」
ジェーンはイエンの少し前を歩き始め、イエンもひょこひょことついていった。
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