人造人間(アンドロイド)

幸輝

文字の大きさ
6 / 64
一章

5話

しおりを挟む
「この惨劇を私がやったとお思いですか?」

 モモの持っている見慣れぬ刃には血がついておらず、服装も汚れていない。
モモがやった可能性はあるかもしれないが、確証もない。
 ジェーンは何も返事が出来ずにいると、モモは続けた。

「一足遅かったのです……開発者の仕業でしょう」

 その言葉にジェーンは凍りつく。
 ツカサの前に立って話をしていたモモだったが、そこまで言うと同時に目にも止まらぬ速さで、イエンの鼻先に刃を突きつけた。

「んっなぁ!?」

 あまりのモモの速さにイエンは声をひっくり返した。

「力ずくでも、イエン様にご同行願います」

 モモの持っている刃が鈍く光る。

「させるか!」

 しかしその刃は、ジェーンの剣術に阻まれた。
イエンの耳元に金属音が響く。

「あなたは、まだ分からないのですか!? もう時間はないのですよ!?」

 モモの必死の訴えをジェーンは、彼女の後ろに回り込んで手刀を食らわし遮った。
その場にモモは崩れ落ち、意識を失った様子である。

「次はあんただぞ……」

 ジェーンは剣を構え、姿勢を低くし切りかかる。

「我は加減を知らぬぞ……」

 そう冷たく低い声が聞こえたかと思うと、ツカサはジェーンの剣を見事にかわし、固い拳を作りそのまま背中へ繰り出した。
背中にそれが入ると、ジェーンは激しく咳き込み、頭から地面に突っ伏した。
 一瞬の出来事にイエンは息を飲む。

「ようやく見つけた、イエン……」

 ツカサはイエンに向き直る。
 背中の大鎌にこそ手を掛けていないが、今までの流れでイエンを襲いかかるかもしれない。
 イエンは立ち上がり、心許ない木刀に手をあてた。

「あ、あんた、誰だ……?」

 必死に絞り出した声は震えていた。

「我は、ツカサ。殺しにきた訳ではない」

 呆れた、と言わんばかりに、ツカサはため息をつく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

痩せたがりの姫言(ひめごと)

エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。 姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。 だから「姫言」と書いてひめごと。 別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。 語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...