人造人間(アンドロイド)

二章

23話

「こんなに早いとは……予想外だ……」

　クルエラは剣を納め、手を開いたり閉じたりと確認している。
どうやらガーディの弾かれたことで手が痺れているようである。

「今日はひいてやるが……レイホウの回収とジェーンの裏切りの代償は、後からしっかりもらいにくる」

　不敵な笑みを浮かべながらクルエラは姿を眩ませた。
　クルエラが去ったことをきちんと確認し、ガーディは小さく息を吐く。
小薙刀を鞘へと納めると、すぐにガーディはミナウィンの元へとかけよった。

「おい！　ジェーンも見てやってくれ！」

　イエンは心配した表情でガーディに言うが、ガーディは小瓶に入ったクリーム状のものをイエンに投げて渡す。

「……それは即効性のある塗り薬です」
ミナウィンに治癒術をかけながらガーディは言う
「……ジェーン様なら、それで事足ります。ミナウィン様は一刻を争います」

　ガーディの思いの外冷たい対応にイエンはムッとするも、ミナウィンがピクリとも動かなかったことを思い出し、それ以上は言わなかった。
　イエン自身も重く言うことをきかない体で、ジェーンを大木の雨をしのげる場所へと引きずり、イエンはジェーンの上半身の服を脱がせた。

「え……！？」

　イエンはジェーンの身体に昨日今日つけられた傷ではない数多くの古傷に絶句した。

「……あの、さっさと塗ってくれないか？」

　ジェーンは目が覚めたらしく、その言葉にイエンもハッと我に返る。

「ご、ごめん！」

　イエンは慌てて薬を塗り始めた。
肩に脇腹に胸に、真新しい傷一通りに薬を塗布する。
　ジェーンはたまにしみるのか顔をしかめていたが、黙々と手当てをしてくれるイエンに声をかける。

「聞かないのか？」

　イエンの手が止まる。何に対しての問いかは分かった。

「聞いていいのか？」
「古傷は全部、クルエラにやられたやつだよ」

　俯いたままジェーンは言う。

「すまないな……剣を向けて……」
「理由は教えてくれないのか？」

　ジェーンはイエンの持っていた小瓶を取り上げて立ち上がった。
血塗れの服も袖は通さないが羽織る。

「時期がきたら、な……」

　ジェーンは完全に雨でぺったんこになった髪をかきあげる。
そのまま、薬を返そうとジェーンはガーディの元へと歩いて行った。