人ならざるもの学園

幸輝

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十話

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「レイタ君は、あの建物から出てくる少女とお知り合いかな?」

 塾の方向を指差し、ベルは聞いた。
モモちゃんのことだと察しがついた。

「……はい、同級生です」
「では、交換条件を提示する。
私はお腹がぺこぺこである。
あの同級生の女の子か、レイタ君のどちらかの血をいただきたい」

 ベルは、腕組みをしながら続ける。

「血を吸ったら、私はもう二度とこの町には現れない。
しかし今は、この町から出ていく力も残っていない程の腹ペコである。
どちらか一人で良い。いかがかな?」
「……痛いのは、嫌だ」

 僕の答えにベルは、鼻で笑って続けた。

「痛くはない。
蚊と同じで、麻酔効果のある唾液も使う」

 僕は、眉をひそめて口を開く。

「……わかった。じゃあ、僕の方で」
「おぉ、話が早くて助かるよ。
そこの狐娘とは違うね」

 イナリちゃんは、まだ気絶したままだった。
 ベルは、僕の真正面まで近づいて止まった。

「……約束だぞ。
もうこの町からは出ていけよ」
「わかっている」

 ベルは、顔を僕の首元へとよせてくる。
 噛まれる、吸われる。

ーー今しかない……!

 僕はポケットの中で、親指で小瓶の蓋をはがし、勢いよく中の聖水をベルめがけてぶっかけた。
 ベルの左側顔面にそれは命中した。

「いったぁぁあああ!」

 ベルは、僕のことを力強く押し退け、もがき始める。
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