人ならざるもの学園

幸輝

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十一話

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「き……貴様! 何をやった……!」

 ベルは、左手で左側の顔を隠す。
 その覆っている部分から、白い蒸気がでていることが目視できる。

「いたい……! 痛いぃ……っ!」

 とにかくベルは、大声で叫ぶ。
 痛みを紛らわさせようとしているのか、その叫び声に僕は怯んでしまった。

「いたいー!!」

 月明かりで見えたベルの左側の顔に、僕は息を飲む。

「とけてる……!?」

 自分でかけた聖水の小瓶を僕は、ぽとりと地面に落とした。
 ベルの左側の顔がドロドロにとけていた。
骨こそ見えないが、筋肉が見える。
目も瞼がなくなって眼球が剥き出しになっている。
白くて綺麗な肌だったのが、赤黒く変色していた。
 血のようなグロテスクなものが苦手な僕は、思わずしゃがみこみ、こみあげてくる吐き気と戦った。

「レイタ君!? どうしたの!?」

 塾が終わったのか、自動販売機裏にモモちゃんがきた。
 僕は、うずくまったまま、ベルを指差す。

「何あれ!?」

 モモちゃんが、悲鳴のような声をあげた。

「いたい……いたいー!」

 ベルは、ゾンビのようによろよろと僕らの方によってくる。
 僕は、もうベルの姿を一目でもみれば絶対に吐く自信があったので、地面に伏せたまま震えていた。

「来るな! このバケモノ!!」

 モモちゃんは、バッグをがさごそとあさり、折り畳み式の鏡をベルへと投げ捨てる。
 ベルは、鏡で自分の顔を確認した。

「なに……これ……」

 ベルは、歩みを止めて、鏡を拾い上げ、よく自分の変わり果てた左側をみる。

「誰……これぇ……!」
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