2 / 42
イミガワラナイ
しおりを挟む何言ってんだコイツ。
おい、原作にこんなシーンなかったぞ。どうなってやがる!?
袖を掴んでくるハイネの手を強引に振り払う。
「ちょ、ちょっと待て! 離れないってお前、自分の立場分かってる? 俺はお前を追放したんだぞ!?」
「もちろん、分かっておりますとも!」
「ではなぜ、そんな馬鹿げたことが言える?」
すると、ハイネは花の咲くような笑顔で言った。
「未熟ゆえに私は追い出されるんですよね? だからこそ、敬愛する父上の元で学び、どこへ出しても恥ずかしくない立派な息子に私はなるんですッ!」
「俺が追い出すって言ってんのに、なんで俺から学ぼうとしてんだよ!」
やばいコイツ、言ってること無茶苦茶じゃない?
ああ、あかん!
また頭に血がのぼってきた。キレて殴りそう。
最近歳をとったせいか、やけに怒りっぽくなっている。ルドルフの性格に引っ張られているのかもしれん。
胸の奥底から湧き上がってくるマグマのような熱を、鋼の精神で必死に堪える。
ふうー落ち着け。なるべく冷静な口調で、生まれたてのサルにでも分かるように、伝えるんだ。
「いいかっ、もう一度だけ言うぞ、よく聞けッ! 俺は、無能なお前を、視界に映すのも不快なんだっ! だから、追放する、分かったか!?」
ここまでハッキリ言えば、誰でも理解できるだろう。
ふう、今日はなんだか色々あって疲れたな。
すぐに帰宅してソファーで横になりたい。
宣言通り、飛ぶ鳥跡を濁さず。俺は優雅にこの場から去るとして……
「はい、委細承知いたしました! 目に入れても不快にならない有能な男になればいいでのしょう? では改めて、日々精進し、尊敬する父上のそばでこれからも学ばせて頂きます!押忍ッ!」
「話をきけクソガキゃぁぁぁぁ」
「ふばああ!」
喉元までため込んでいた怒りのマグマが爆発した。渾身の右ストレートがハイネの左頬にクリーンヒットする。
鼻血を吹き上げ空中で回転を描き、ハイネが面白いように吹き飛んでいく。
しかし、ハイネは地面に衝突して転がされても、一切の怯む様子もなく、鼻血をたらしながら満面の笑みで華麗に立ち上がってくる。
「ち、てぃてぃうえ! 流石ですッ! 素晴らしい拳ですッ! でもぉっ、私はぁ! 何度殴らても考えを改めるつもりはありませんっ! 心より貴方をお慕いしておりますゆえに!」
「ふっふっ、ふざけんなぁぁぁ!」
支離滅裂な発言を繰り返す愚息。
怒りで頭が焼けきれそうな父親。
果たして間違ってるのはどっちだろうか。
「その考え改めるまで、何発でも鉄拳をくれてやるぞ!」
すると、左右から突然、何者かによって身体を抑えつけられる。
「誰だ!?」
それは、ハイネの兄であるジンと、妹のリアであった。
ジンは目眼を掛けた長身で金髪碧眼のクール系男子。リアもジンと同じ金髪碧眼で、おさげ髪がチャームポイントの可愛いらしい愛娘だ。
「おお~お前達ぃ! 父を助けにきてくれたか!」
何を隠そうこの二人は原作では俺と一緒にハイネを痛めつけた挙句、他領まで攻め入り大戦乱を巻き起こした大悪党!
ならば、無属性で無能になったハイネを追い出すのに一役を買ってくれるはず。
ふふふ、さあ、ゆけ。愛しき我が子供達よ。頭の狂った兄弟を救うのだっ!
「やめてくれ父上! 私は可愛い弟がいじめられてるのを、これ以上見てれられない!」
「そうよっ、リアの大切なお兄ちゃんを殴らないでっ! ハイネお兄ちゃんは……リアと結婚して一生暮らすんだからね! 絶対家から追い出させやしないわ!」
「お、お前らもかぁぁぁぁぁぁ!」
世界平和のために原作を忠実に守りたい俺だったが、子供達の様子がおかしすぎて、最初からシナリオブレイクしている件について。
―――どうしてこうなった?
そして、その原因について考えてみる。
『ああ、そういえば。なるほど・・・・・・』
そう、俺にはこんなあり得ない展開に発展した理由に、大いに心当たりがあったのだった。
409
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが
空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。
「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!
人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。
魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」
どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。
人生は楽しまないと勿体ない!!
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる