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チュートリアルバトル
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人は生まれながらにして平等ではない。
「うおおおおおお!!」
突然叫び出して申し訳ない。突然の一人称で申し訳ない。
僕の名前は芥川翡翠だ。小学校の時に茶川と呼び間違えられ、名前が翡翠なので緑茶というあだ名がついている。悪くないね。
いやそんなことはどうでもいい。僕は今人生で最も危険な行為に走っているだろう。
いつも通りゲームセンターで遊んでいたはずなのに建物はテロリストに占拠されてしまった。後ろで驚いているふりをしている朱里さんに唆されて人生初めての暴力行為に臨もうとしている。いやマジで。
「ぐはっ!!」
鍛えてもなんともしてないパンチが相手の腹に刺さった。こういうのは顔を殴るのは菌とかの影響でだめらしい。僕は硬直した彼のうなじを思い切り殴りつける。
「かはっ」
漫画とかでよくあるこのアテミも実際はかなりの力がいるらしいから思い切り叩く。どうやら成功したようだ。うめき声あげ男は地に伏した。
「お前! 何をする!!」
異常を目の当たりにしたもう一人の男がトランシーバーを取り出す。
「せいっ!!」
「ぐあっ!!」
その瞬間朱里さんが回し蹴りをして男を気絶させた。なんだあれは。竜巻○風脚でもするのかと思った。
「ひ、ひいっ」
最後の男がびびりリュックをガサガサとあさる。おそらくコイツもトランシーバーを探している(なぜリュックにしまっているのかわからないが)。
「取り押さえろ!!」
僕は声を張り上げて人質達に指示を出した。そうしたらあとは筋肉質のおっさんを筆頭にひたすら最後の男に突進。男はたまらずダウンした。
「お兄さん、このまま急ぐよ!!」
「わかってます!!」
僕たちが階段に行こうとした。そのとき。
「っ!! お兄さん!!後ろ!!!」
「うっ!!」
頭に衝撃が走る。
後ろを振り向くと最後に取り押さえたはずの男が拳を構えていた。意識がはっきりしない、何が起きたのかさっぱりだ。
「なるほどねぇ。このままリーダーを制圧するつもりだったのだろうけどそうはいかねえよ?」
よく見ると押さえにいった人達は皆倒れている。なんて戦闘力だ、こいつまさか......
「その通り。俺は筋力強化のスキル持ち。ボクサー時代から所持していたがオヤジを人質にとられててなあ。協力せざるをえねんだよ」
「ならば私たちと協力すればいいじゃない!! あなたがうまくいればきっとテロリストに勝てるわ!!」
「勝てる......? ありえねえな! リーダーは、あいつは俺のスキルでも勝てねえ。なぜあんな奴がスキルを持っているかもわからねえ、それくらい理不尽なんだよ」
「リーダーもスキル持ち......? いったい能力者達に何が起きているの?」
男は俺にリュックから取り出した鉄パイプを向けた。
「悪いな小僧。スキル持ちのそこのお嬢さんならともかく、ここまで聞いた以上お前は始末しなきゃならねえ」
「おいおいまじかよ......あんた、こんな一般人に手を出すのか......」
「しかたねえだろ! オヤジは、俺にボクシングという生きがいを与えてくれたんだ!!」
振り下げられた鉄パイプは早いか遅いか、いや、時間が遅く感じるのは走馬灯なのか。
もうすべてがどうでもよく進んでいた。
だから。
「あんたもボクサーならさ、拳ひとつで戦いなよ」
僕もスキルを使うとするか。
「え......?」
鉄パイプが男の手から消滅した。
☆ ☆ ☆
「あーあーあー。使っちゃたよ。これ使うと面白くなくなるから抑えてたのに」
翡翠はどこからともなくあらわれた紙をプラプラ振った後に丸めて上に放り投げた。
「なっ、えっ、」
人は本当に驚く時、こんな声しか出せないのだろう。しかし朱里、彼女は冷静に起きたことを捉えていた。
「お兄さん、スキルで鉄パイプを紙にしたの......?」
「その通り。もはやこれでスキルが人の延長の力でしかないという定義はなくなってしまったなぁ。はっはっは」
翡翠はやけくそに笑った。ずっと隠し通してきたつもりだったがこんな形で明かされるとは。そう考えると笑えて仕方ない。
「さあテロリスト君。見たとおり僕のスキルはものを紙にすることができる、それでも挑むのかい?」
「う、うおおおおおおおおおおお」
彼は思い切り手を振る。まるで恐怖を振り払うかのように。
しかし翡翠はまさに紙一重で攻撃をかわした。
「てめえのスキルなんてなああああ!! 触れられなきゃどうってことねえんだよ!!!!」
怒涛のラッシュが翡翠を襲う。
「そうなんだよねー本当に。だからさ、こういう使い方をするのさ」
「......なっ!!」
男は突如直撃した鉄塊に驚きを隠せない。
翡翠は上に放り投げた紙を鉄に戻していた。
「元に戻すこともできるのさ、もっとも紙は丸めてしまったから鉄パイプそのままが降ってくることはなかったが」
翡翠は男に触れた。
「君の怪力のスキルは貴重だ。是非頂くとしよう」
「てめぇ......」
翡翠は意識が薄れ行く男の体から出た紙を取り出した。
「さあ朱里さん、この建物の開放を急ぎましょう」
「えっ、あっ、そうね」
朱里は一連の流れを見ることしかできなかった。見惚れていたのに近いだろう。
拳をかわし続けた身のこなし、鉄パイプのトリック。なにより――
触れたものを紙にしてしまうという恐ろしいスキルが存在していることに驚きを隠せなかった。
彼は何者だ。何者なんだ。
「安心して、オヤジさんは絶対に助けるよ」
その日に起きたテロリスト事件は、通りすがりの謎の少年によって解決された。
――芥川翡翠のチュートリアルは既に終了していたのだ。
「うおおおおおお!!」
突然叫び出して申し訳ない。突然の一人称で申し訳ない。
僕の名前は芥川翡翠だ。小学校の時に茶川と呼び間違えられ、名前が翡翠なので緑茶というあだ名がついている。悪くないね。
いやそんなことはどうでもいい。僕は今人生で最も危険な行為に走っているだろう。
いつも通りゲームセンターで遊んでいたはずなのに建物はテロリストに占拠されてしまった。後ろで驚いているふりをしている朱里さんに唆されて人生初めての暴力行為に臨もうとしている。いやマジで。
「ぐはっ!!」
鍛えてもなんともしてないパンチが相手の腹に刺さった。こういうのは顔を殴るのは菌とかの影響でだめらしい。僕は硬直した彼のうなじを思い切り殴りつける。
「かはっ」
漫画とかでよくあるこのアテミも実際はかなりの力がいるらしいから思い切り叩く。どうやら成功したようだ。うめき声あげ男は地に伏した。
「お前! 何をする!!」
異常を目の当たりにしたもう一人の男がトランシーバーを取り出す。
「せいっ!!」
「ぐあっ!!」
その瞬間朱里さんが回し蹴りをして男を気絶させた。なんだあれは。竜巻○風脚でもするのかと思った。
「ひ、ひいっ」
最後の男がびびりリュックをガサガサとあさる。おそらくコイツもトランシーバーを探している(なぜリュックにしまっているのかわからないが)。
「取り押さえろ!!」
僕は声を張り上げて人質達に指示を出した。そうしたらあとは筋肉質のおっさんを筆頭にひたすら最後の男に突進。男はたまらずダウンした。
「お兄さん、このまま急ぐよ!!」
「わかってます!!」
僕たちが階段に行こうとした。そのとき。
「っ!! お兄さん!!後ろ!!!」
「うっ!!」
頭に衝撃が走る。
後ろを振り向くと最後に取り押さえたはずの男が拳を構えていた。意識がはっきりしない、何が起きたのかさっぱりだ。
「なるほどねぇ。このままリーダーを制圧するつもりだったのだろうけどそうはいかねえよ?」
よく見ると押さえにいった人達は皆倒れている。なんて戦闘力だ、こいつまさか......
「その通り。俺は筋力強化のスキル持ち。ボクサー時代から所持していたがオヤジを人質にとられててなあ。協力せざるをえねんだよ」
「ならば私たちと協力すればいいじゃない!! あなたがうまくいればきっとテロリストに勝てるわ!!」
「勝てる......? ありえねえな! リーダーは、あいつは俺のスキルでも勝てねえ。なぜあんな奴がスキルを持っているかもわからねえ、それくらい理不尽なんだよ」
「リーダーもスキル持ち......? いったい能力者達に何が起きているの?」
男は俺にリュックから取り出した鉄パイプを向けた。
「悪いな小僧。スキル持ちのそこのお嬢さんならともかく、ここまで聞いた以上お前は始末しなきゃならねえ」
「おいおいまじかよ......あんた、こんな一般人に手を出すのか......」
「しかたねえだろ! オヤジは、俺にボクシングという生きがいを与えてくれたんだ!!」
振り下げられた鉄パイプは早いか遅いか、いや、時間が遅く感じるのは走馬灯なのか。
もうすべてがどうでもよく進んでいた。
だから。
「あんたもボクサーならさ、拳ひとつで戦いなよ」
僕もスキルを使うとするか。
「え......?」
鉄パイプが男の手から消滅した。
☆ ☆ ☆
「あーあーあー。使っちゃたよ。これ使うと面白くなくなるから抑えてたのに」
翡翠はどこからともなくあらわれた紙をプラプラ振った後に丸めて上に放り投げた。
「なっ、えっ、」
人は本当に驚く時、こんな声しか出せないのだろう。しかし朱里、彼女は冷静に起きたことを捉えていた。
「お兄さん、スキルで鉄パイプを紙にしたの......?」
「その通り。もはやこれでスキルが人の延長の力でしかないという定義はなくなってしまったなぁ。はっはっは」
翡翠はやけくそに笑った。ずっと隠し通してきたつもりだったがこんな形で明かされるとは。そう考えると笑えて仕方ない。
「さあテロリスト君。見たとおり僕のスキルはものを紙にすることができる、それでも挑むのかい?」
「う、うおおおおおおおおおおお」
彼は思い切り手を振る。まるで恐怖を振り払うかのように。
しかし翡翠はまさに紙一重で攻撃をかわした。
「てめえのスキルなんてなああああ!! 触れられなきゃどうってことねえんだよ!!!!」
怒涛のラッシュが翡翠を襲う。
「そうなんだよねー本当に。だからさ、こういう使い方をするのさ」
「......なっ!!」
男は突如直撃した鉄塊に驚きを隠せない。
翡翠は上に放り投げた紙を鉄に戻していた。
「元に戻すこともできるのさ、もっとも紙は丸めてしまったから鉄パイプそのままが降ってくることはなかったが」
翡翠は男に触れた。
「君の怪力のスキルは貴重だ。是非頂くとしよう」
「てめぇ......」
翡翠は意識が薄れ行く男の体から出た紙を取り出した。
「さあ朱里さん、この建物の開放を急ぎましょう」
「えっ、あっ、そうね」
朱里は一連の流れを見ることしかできなかった。見惚れていたのに近いだろう。
拳をかわし続けた身のこなし、鉄パイプのトリック。なにより――
触れたものを紙にしてしまうという恐ろしいスキルが存在していることに驚きを隠せなかった。
彼は何者だ。何者なんだ。
「安心して、オヤジさんは絶対に助けるよ」
その日に起きたテロリスト事件は、通りすがりの謎の少年によって解決された。
――芥川翡翠のチュートリアルは既に終了していたのだ。
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