【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)

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28 準備 ※

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 翌朝、アレックスはめずらしく部屋で朝食を摂ると言い出した。
 すでに手配をしていたらしく、リュカがシャワーを浴びて浴室から出て来たときには食事の準備が整っていた。

「すみません、いろいろと準備していただいて……」
「昨夜は少し無理をさせたからな。休日くらいゆっくりしていろ」

 そう言われて、かっと顔が熱くなった。昨夜は朦朧としていて記憶の一部が飛んでいるとはいえ、自分が痴態を晒したことはよく覚えている。かなり取り乱してしまい、言わなくてもいいことまで口走ったような気がする。

「昨夜は、すみませんでした」
「なにを謝っている?」

 アレックスは笑っていた。どうしてリュカが謝っているのか、わかっていて訊いているのだ。

「あなたの言いつけを守らず、みっともないところをお見せしました。申し訳ありませんでした」
「かまわん。側仕えをしつけるのも主人の役目だからな。おまえは、実にしつけ甲斐がある」

 まるで我慢の効かない獣のようだと言われている気がして、ますます顔が熱くなった。アレックスの魔力が馴染めば、もっと理性的なふるまいができるようになると信じたいが、好きなひとに触れられて、冷静でいられるわけがない。

「用事があるから外出してくるが、おまえは部屋で待機していろ。昼までには戻る」

 そう言い残して、アレックスは出かけていった。

 昼までに寝具を交換して洗濯物を出してしまおうと思い、寝具と衣類を持って部屋の外に行こうとしたところで、リュカはおかしなことに気づいた。
 廊下に通じるドアが開かないのだ。何度か鍵を開けたり閉めたりと繰り返してみたが結果は同じで、一向にドアノブが回ってくれない。

「うーん……」

 そうこうしているうちに外側からドアがノックされて、応答すると相手は寮の職員だった。ドアが開かなくなってしまったことを告げると、外側から開けてみると言われ、試してもらったところドアはすぐに開いた。職員のひとりを外に残し、先に入った職員が内側からドアノブを回したが、リュカが苦戦していたのが嘘のようにあっさりと開く。念のため点検してもらったが、問題はないと言われた。さっき開かなかったのは、たまたまだったらしい。

 職員が部屋にやってきたのは、掃除のためだった。さらには寝具の交換と洗濯物の回収もアレックスが手配してくれたようだ。リュカを気遣ってくれたのだろうが、身体が少し熱っぽいくらいで、体調はいつもよりいいくらいだ。申し訳ない気持ちになりながらも職員に任せ、半刻も経たないうちに職員たちが帰っていくと、またひとりきりになった。

 きっと、夜になればアレックスはまたリュカに魔力を供給するに違いない。それまでに、リュカにはしておかなければならないことがある。アレックスの魔力がリュカの身体に馴染むまでどのくらいの日数を必要とするのかはわからないが、もう片方の準備が終わらなければ、先に進むことができない。

 男の身体に男性器を受け入れるには、準備が必要だ。そこをほぐし、拡げなければならない。同僚の男娼が教えてくれていたのに、すっかりと忘れていた。抱いてほしいとねだっておきながら、いままで自分でなにも準備をしなかったなんてあまりにも恥ずかしい。
 アレックスにそんな手間をかけさせるわけにはいかない以上、男娼たちが客に会う前に準備をするように、リュカも準備をしてからベッドへ向かうべきだった。最終的にはアレックスの性器を入れるとはいえ、そんな場所をアレックスに触れさせたくない。

 父に持たされていた香油の存在を思い出し、ベッドを汚さないよう浴室で準備をすることにした。洗浄魔法の作用がかけられている特別な香油だと聞いている。準備にどのくらい時間が必要かはわからないが、アレックスが不在のうちにできることは進めておきたい。

 汚さないように洗面所ですべての服を脱ぎ、裸になってから浴室に足を踏み入れた。まずは立ったまま香油で濡らした指を尻の割れ目に滑らせ、そっと指を埋め込んでみる。油の滑りを借りて、指は思いのほか簡単になかへ入っていった。

「ん……っ」

 浅い場所で指を回して拡げてから、香油を注ぎ足しさらに奥へ指を進めていく。違和感がひどく、指を奥に入れるのは怖かったが、指が入らないようではあの立派なアレックスの性器を受け入れることはできない。準備が足りなければアレックスが痛みを覚えてしまう。できるなら、アレックスに気持ちよくなってもらいたかった。

「指二本くらいじゃ、足りないだろうな……」

 昨夜、口で頬張った性器の大きさを思い出しながら、熱いため息を吐き出す。
 あの硬いものに腹のなかを擦られるのは、どんな感覚なのだろうか。想像するだけで触れてもいない性器が硬くなっていく。アレックスにあたえられる刺激は、すべてが気持ちいい。だから、この先に待ち受ける行為に不安はみじんもなかった。

 どちらかと言えば、感じるのはさみしさだった。アレックスに抱いてもらうことができたら、リュカはウィルフリッドのところへ行くと決めている。きっと、アレックスのそばにいられなくなる。それを考えると、どうしようもなくさみしさを覚えた。

「あれ……なんか……」

 香油をこまめに注ぎ足しながら少しずつなかを拡げているうち、違和感に気づいた。身体が熱い。昨夜のことを思い出して興奮したから、ではない。アレックスの精液を飲み込んで身体が暴走したときの感覚に似ていた。身体が熱く、汗が大量に流れ出し、性的な興奮を催している。性器は痛いほどに張り詰めていた。

「はあ……っ、ん……う」

 アレックスが帰ってくるまでに発散しなければ。そう思って自分で性器を扱きはじめたが、いくら射精しても一向に治まらない。

「なん、で……っ、や、も……っ」

 もう何度射精したのか、途中で数えるのをやめてしまった。指で擦り過ぎた性器は赤くなり、痛みを覚えて香油を塗りつけて擦ったが、身体の熱さは増すばかりだった。
 先端から飛び出す粘液にだんだんと勢いがなくなり、薄くなっていって、とうとうなにも出なくなった。でも、まだ身体は熱い。

「あっ、あ……や、やだ……っ、どうすれば……っ」
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