男装王女はくじけない

お豆腐大好き

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プロローグ

男装王女は抜け出したい

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『おはよう、私の愛しい子』


「うん、でもまた行かなくちゃ」


『辛いことを押し付けてごめんなさいね、でも、
   あなたにしか出来ないことよ』


「大丈夫、そのために今まで頑張って来たんだから」


『忘れないで、いつでも私が着いているわ。だからその時まで________おやすみ、愛しい子』









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エレンシア王国、そこは海に囲まれた資源豊かな国であり、魔法都市として有名な国であった。




アリアナ・エレンシアはエレンシア王国第三王女である。しかし、その存在はほとんど公にされておらず、一部の貴族達しか知らない、言わば極秘事項のようなものであった。






何故か__それは彼女が“魔力なし”だからである。






エレンシア王国では全ての住民が魔力を持っている。魔力は親から子へ、子から孫へと代々伝わって行くものであり、この海に囲まれた孤島の島では魔力なしなど存在するはずもないのだ。
ましてや王の子である王女が魔力なしなど、あってはならないことなのである。故に、彼女は呪われた子、として王宮からは遠く離れた小さな古塔に幽閉されていた。






「はあ、今日もたいくつだわ………」





何回読んだかも分からない本をぼーっとみつめながら、少し癖のある銀色の髪を弄りながら、小さくため息をついた。


生まれてから10年間ずっとこの場所で暮らしているので、一人なのは慣れている。しかし退屈なのだ。使用人達はあんまりにここに近寄らないし、唯一わたしに優してくれる姉様たちにも年に1回しか会えない。


やる事と言ったら、ここにずっと置いてある部屋いっぱいの本を読む(もうぜんぶ読んじゃったけど)か、最近仲良くなった小鳥さんからの手紙を待つことくらいである。





わたしには生まれつき魔力がない、らしい。わたしに魔力がないのはわたしが呪われているから……この色違いの瞳も、その証拠、だそうだ。

本で読んだことがある。エレンシア王国の王族はみんな紫の瞳を持っている。
わたしの右目の金色の瞳は、罪を冒した罪人の生まれ変わりなのだと_______________



魔力があったらどうなっていたのだろう…と思うことは少なくない。物語に出てくる勇者様や魔法使いを見る度に、自分もこんなふうになれたら、どんなに楽しいだろうと夢にみる。

(分かってるわ、ないものねだり、なのよね)



そう考えているうちにチチチ、と小さく鈴のなるような声が聞こえた。





「ルリ!きてくれたのね!」





この瑠璃色のように美しい羽を持つ、わたしがルリと名付けた鳥は、数ヶ月前に窓の傍で怪我をして倒れていたのを助けたところ、それからよく通ってくれている子だ。



この鳥は時々、口に小さな手紙を加えて持ってきてくれる。手紙の主は分からないのだけれど、街であったこと、最近流行りの食べ物や花など、ここでは知ることが出来ないことをたくさん教えてくれるので、わたしはこの手紙が来るのを毎回とても楽しみにしている。





「ええと……今日は街でこの国のはんえいを祈るお祭りがありました。とても賑やかで……私は弟達と一緒に色々な所を回りました……………お祭りかぁ……楽しそう…」





わたしは生まれてからこの塔を出たことがない。なので街の様子や、行事ごとなどは姉様たちが教えてくれることでしか知らないのだ。




私も姉様たちと一緒にお出かけ出来たら………そう考えて、止めた。姉様達はこの国において神様のような存在。だけどわたしはいちゃいけない存在で……姉様たちと一緒にお出かけなどしたらきっと姉様たちにめいわくかけちゃう……




私は手紙を読み進めていくうちに、ふと、最後の一言に目を見開いた。







______君は外に出たいと思うかい?






外に出る……?外に出られたら…………綺麗なお洋服や花畑、人がたくさんいる街が見れる……それに、この国を囲んでいる海というものも……!



「……出たい!外に出て、色んなものを見てみたい!」



なにかに突き動かされるように、そう叫んだ途端、部屋の中がカッと白い光で包まれた。






「その願い、僕が叶えてあげるよ」







眩しい光に目がくらみ、再び目を開けるとそこには目を黒の仮面で覆い、青い服に白いマントであちこちを金の装飾で飾った、まるで絵本の中の王子様のような人が、キラキラとした笑顔でこちらを見つめていた。





「あなたは、わたしの王子様?」



「ああ、可哀想なお姫様を救う正義のヒーローさ!」



「でもどうやってここへ?ここは、仮にも王城の中よ?」



「そんなの、僕の魔法でちょちょいのちょいさ!さあ、早速外へ出よう?マイプリンセス」



そう言って彼はわたしに手を差しのべる。


凄い凄い!魔法使いと、王子様に一度に会えるなんて!これも何かの運命だわとその手を取った。





すると体を横抱きにされたかと思うと、ふわりと宙に浮き、いとも簡単に塔から出ることが出来た。



(こんなにも簡単に出られるものだったのね…いままでどうして出なかったのかふしぎなくらい…)




「まだまだ驚くには早いよ、これから沢山色んな場所に行くんだからね!」


わたしはこれから起きるであろう素晴らしいことに心を踊らせ、コクリと小さく頷いた。

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