雪上の足跡

芙月みひろ

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 この日もいつものように、朝早く学校へ向かった。

 あの角を曲がったところで、彼の後ろ姿が見えるはず――。

 どきどきとワクワクが混ざった気持ちで、美容室のある交差点を左に折れた。途端にはっとする。私の視線の先にあったのは彼の後ろ姿ではなく、校門の手前に立つ人の姿だったからだ。

 あの人は誰かを待っているのだろうか。彼はもう行ってしまったのだろうか。それとも今朝はまだ来ていないだけなのか?

 今日は彼を見ることができないのかと残念に思いながら、校門に向かって歩を進めた。あと数メートルというところで、何気なく目を上げてどきりとする。そこに立っていたのは彼だったのだ。
 予想外の遭遇に動揺した。しかし彼は私のことを知らないはずで、例えば挨拶しないまま通り過ぎても問題はないだろう。とは言え無視するのも違うような気がして、彼に軽く頭を下げる。そのまま校舎へ向かおうとした時、彼に呼び止められた。

「待って、先輩」
「え、私?」

 足を止めて、私はおずおずと振り返った。
 白い息の向こうで彼は頷く。

「はい。安西先輩のこと、呼んだんです」
「どうして、私の名前を……」

 戸惑っている私に彼は近づいてきた。

「安西茉莉子先輩、ですよね?」

 間近で彼を見た途端、私の胸はどきどきし始めた。

「そうだけど……」
「俺はサッカー部一年の、風間智也です」

 彼はぺこりと頭を下げてから、私を見てにこりと笑った。

「安西先輩は、俺のこと、知ってます?」
「えぇと……」

 私は足下に目を落とした。
 彼の存在を知ったのは昨年の秋。自分の彼氏が出るからと、親友に付き合わされて連れて行かれたサッカーの試合でのことだった。上級生たちの中、奮闘する彼の姿に目と心を奪われた。しかしそれをそのままは言えない。けれど、「知っている」とだけ答えてすませたくない気もする。
 どう答えようかと迷っている私に彼は言った。

「俺は先輩のこと、知ってましたよ。去年の秋、サッカーの試合を見に来てくれる前から」
「え?」

 あの秋にはすでに、私が誰なのかを知っていたという意味?

 鼓動がいっそう早くなった。
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