世界を救った勇者のパーティーに所属していたシーフです…

mitokami

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 道中、激しい揺れに耐えきれず。魔法使いが荷馬車の後方、外側に吐瀉物を撒き散らし、僕が介抱し続ける。と言う事もあったが、何やかんやで辿り着いたは、宰相様の大きな御屋敷。
僕と魔法使いを連れて来た大盾さんは今、家令の人らしき老人と怒鳴り合いをしている。非常識だと怒る家令の人に、僕は清き1票を投じたい。そして、宰相様を呼ぶ前に、魔法使いの為に、まず、御医者様を呼んでやって欲しい。

 現在の魔法使いは、僕が工夫して寝かせて回復させたのに、大盾さんに振り回され荷馬車で揺られ、体調不良が悪化して目は虚ろ、受け答え等が出来ないレベルの瀕死状態と成っている。
勝手に行動して魔法で後宮を氷漬けにしたり、魔法で何かしらをぶっ壊したりしないでいてくれる事は救いだが、僕の苦労がまたもや無駄に成った残念な状況、何だかとっても酷い御話だ。
それにしても、ここ数日、僕の努力が無駄に成り過ぎではなかろうか?と思っている内に、宰相らしき人物が屋敷から出て来て、そこで何かしらの話が終了したっぽい。

 その後、僕と魔法使いは客室へと別々に通される。
家令の人らしき老人に、魔法使いが魔力の回復ポーションに寄る魔力酔い状態である事を伝えたから、罷り間違って、魔法使いが回復ポーションを飲まされて死んだりはしないだろう。けれども、その後の魔法使いの安否が気に成る所だ。
でも、取り敢えず。今夜は疲れたし、使用人の人に勧められるがまま、風呂に入って、軽く夜食を食べて寝る事にした。勿論、この時、僕は庶民な為、貴族仕様の着替えや入浴の介助を全て断ったのは言うまでもない。

 翌朝は快晴。この日、メイドさんがカーテンを開けた事で、僕は目を覚ました。気配に敏感な義賊シーフである僕が、人の気配で目覚めれなかったと言う事は、久し振りに熟睡した。と言う事。若しくは、宰相様の御屋敷のメイドの隠密レベルが僕より上である可能性が高い。いや、寧ろ、メイドさん達から今も足音が聞こえない事から、後者っぽくて、ちょっと怖かった。が、貴族仕様のオモテナシを断り、謝り、謝られ、何時の間にか打ち解けて、僕専属で付けられたメイドさんとは一緒にアフターヌーンティーを嗜む仲に成っていた。

「所で僕って、如何言う扱い?」
「宰相閣下の御客様扱いですね」
先程まで、ケーキスタンドの一段目、サンドイッチを食べていたメイドさん。今度は二段目のスコーンに手を伸ばしていた。
「僕って、密かに放置されてませんか?蚊帳の外的な感じで」
「ん~…そうですねぇ~…って…、このスコーンしょっぱい系のチーズ味だわ、こんな事ならハムサンドの次にジャムサンドを食べとけば良かった…」
「スコーン食べた後にでも食べれば?」
「うぅ~ん残念、マナー違反です!二段目から一段目に戻っちゃ駄目なんですよぉ~、下から順番に食べるってルールがあるんです」
「そうなんだぁ~って…」
今、メイドさんに話をはぐらかされた感があるのは気の所為だろうか?

「あ、そうそう、宰相閣下からの伝言を御伝えするのを忘れていました!御連れの方、勇者パーティーの僧侶様を招集して治療する事に成ったそうですよ」
「へ~そうなんだぁ~って?如何言う事?!」
大盾に治療は必要ない。治療が必要と成ると言えば魔法使いの魔力酔いの症状だ。
魔法使いアイツそんなに体調が悪いの?」
「私には寝てれば治る程度に見えましたけどね…」
「ん?」
何だか変な話だ。僕の知る限り、魔法使いに起きて貰わなければ困るって理由が思い当らない。寧ろ、魔法使いが目を覚まして、後宮の事柄に関係した王侯貴族への報復活動に出たら困るので、ある程度物事に整理が付くまでは、確実に眠っていて欲しい。これは個人的な意見ではあるが、紛う方無き事実の筈だ。

 うん、やっぱり変だ。気に成る。
僕が「あのさ、ちょっと、その魔法使いの治療の様子を見に行きたいんだけど…」と言うと、メイドに「私へ最上段に飾られたスイーツを諦めろと言うのですか?」と涙ながらに訴えられた。
一瞬悩んだけれど、食べ物の恨み程に恐ろしいモノは無いと言う経験から「好きなだけ、存分に食べた後で良いから、案内して」と言うに留まった。

 メイドがケーキスタンドに盛り付けられた最上段のスイーツを食べ終わるまでの間、僕は暇だったので…、後宮の真下に存在していた土砂降りの雨の様に水の滴る排水路の始まりの場所の奥、魔法使いが僕に手伝わせて開けた城門より大きな扉と…その時の魔法使いの表情を思い出す……。

 魔法使いは扉の中を見て、大きな溜息を吐いていた。その溜息で僕は、その場所が魔法使いの思っていたであろう目的地では無いのだと思うに至った。

 そう言えば、あの青い装飾の扉は外からだけではなく、赤い装飾の内側からも扉をゴリ押しして開けようとした痕跡が存在していたような気がする。それに内側の扉に続く床や階段は、薄汚れてはいたが、その場所に置かれ残された物の様に、埃が積もってはいなかった。と、思う。それは最近、その場所へ何者かが何度も通った証拠ではなかろうか?それに魔法使いが持っていた地図。新しい方は縮尺もしっかりしていたが、古い方は手書きで作業も粗雑、縮尺も明らかい揃ってはいない。と、言う事は、若しかして若しかすると、魔法使いは青い扉と赤い扉の間に部屋や通路、階段等があると思い込まされていたのではなかろうか?と、思うに至るが…取り敢えず…、これは飽く迄も仮説だ……。仮説だけど、僕は僕の考えが間違っていない気がする。と成ると、魔法使いの最初の目的地、魔法使いが扉の先に存在すると思っていた場所は何処で如何言う場所だったのだろうか?今更乍らに気になってしまった。

 それに魔法使いは「簒奪さんだつ?いや、違うか?簒奪されたモノを返還させようかと思っててね」と言っていた。「偶然なんだけど最近、先王の息子さんの御子息を見付けちゃったんだよねぇ~、宰相さんに教えてあげたら喜んじゃって、正当な継承者に返還させようって話に成ったんだ♪」とも言っていた。

 魔法使いが扉の先に求めたモノ・・・・・・・・・簒奪・・には繋がりや関連はあるのだろうか?繋がりや関連があるなら、簒奪に必要なアイテムの一つであろうから、宰相様に聞けば答えが返ってくるだろうけど、違ったら魔法使いに聴いてみないと分からない。
僕が盗って来た書類から僕が読み解けなかったモノ。魔法使いを蒼褪めさせ、涙を零し声を殺して泣く程に魔法使いを悲しませたモノの正体。魔法使いが怒っていた理由も聴いてみよう。いや、聴き出そう。

 この時の僕は、[辛い事…感情的な辛さ]は[話せば楽に成る]と信じていた。

 話して楽に成る者は、話したい・自分主体の話を誰でも良いから共感して欲しいと願う者だけだと、僕は知らなかった。そこに含まれる[罪悪感]の種類に寄って[共感]して良いモノ、[共感]以外を求められないモノ、[共感]を示す事も駄目なモノもあると、僕は知らなかった。気持ちを言葉に変換する事で、追い詰められてしまう者だって存在している事すら、僕は知らなかった。
僕は僕が思っているより、軽率で傲慢、無知で愚かな人間だったらしい。
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