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 僕の与り知らぬ設定の場所で問題が発生。したのが先か?偽物が出没したのが先か?は、知らない。但し、日を追う毎に偽物の数は増えたとの事だ。但し、宰相様及び、その他関係者様が本人と認めず。投獄後に処罰。その中に本当に本物が混じっていたか否かは不明だ。が、そこだけは本当に僕の与り知らぬ事だったりする。

 現在、国王が失踪する前に城を勝手に出て行った大盾さん、大盾さんに連れ出された魔法使いと正体不明の従者(僕)は、魔法使いの従者の出入り記録及び出入りの許可、管理局への個人情報の提出がされていなかった為、重要参考人として指名手配される事と成り、宰相様の邸宅から気軽に素顔で出て行く事が出来なく成っていた。
変装すれば良いだけの事だけど、宰相様が「直ぐには無理だが、手が空いたら指名手配を解いてやる、手続きが面倒に成るから我が家に留まってろ」と言っているし、既に体調不良の魔法使いの為に衣食住の世話に成っている上「報酬は払う!妻の気が済むまで付き合ってやって欲しい」と言われ、必要経費も宰相様持ちだし良いか♪と気軽に引き受けて、今、後悔している。

 因みに、僕が勝手に脳筋だと思い込んでいた大盾さんは、宰相様の家での仕事、宰相様預かりの領地に関するデスクワークを気軽に手伝い。宰相様に「このまま我が家で働いてくれてても良いんだぞ」と言われていた。彼は現状を後悔なんてしてないと思われる。

 それに引き換え…、僕と魔法使いは、宰相様の計らい…と言うか…宰相の奥様の計らいで…、宰相様の邸宅で保護…と言う名目の下…、奥様に寄って愛玩されている状態……。魔法使いが途方に暮れる程、奥様は魔法使いを実の娘の様に可愛がっている。
序に僕まで、息子さんの御下がり衣服を着せられ着せ替えられ、何故か魔法使いと一緒に「本当は結婚しないで、家庭教師に成りたかったんですのよ」と言う奥様に寄って勉強を強要され、最近では、魔法使いが健康を取り戻して来たので、そろそろダンスレッスンも強制的にさせられそうに成っている所だ。

 魔法使いには「義賊シーフ逃げるなよ?逃げたら呪うし、追跡して連れ戻して(奥様への)生贄にするから、な?」と脅されてもいる。生贄って何のだろう?( 「宰相様の奥様へのだよ」魔法使い談)
そんな状態で魔法使いは僕を信じてくれていないのだけども…、僕的には両親の形見を取り返して貰ったと言う借りがあって、魔法使いを置き去りにして逃げるとか有り得ないのになぁ~って思っている…、伝わらなさが…とっても悲しい現実だ……。今は何より、魔法使いからの信頼が欲しい。如何すれば信じて貰えるのだろうか?

 僕も僕で途方に暮れ、魔法使いの傍に何故かいる僧侶の方を眺めて見た。僧侶は魔法使いの体調不良の改善の為に呼び出されて以降ずっと、神殿に帰る事も無く魔法使いに付き添っている。
その訳は単純で簡単で、旅から帰るなり褒賞に寄って大出世、神殿に留まり続けていた同僚は勿論、上司にも嫉妬され、居心地が最悪。唯一の楽しみが、質素で素材の味しかしない美味しいとも言えない料理だけど、旅先で美味しい御当地料理を食べて来た所為で、耐えきれない程に不味く感じてしまえ、帰りたくないから居座る事にした感じなのだそうだ。

「所で僧侶さんは、どうやって魔法使いを手懐けたんですか?やっぱ餌付けとか?」
「(犬や猫じゃないんだから)餌付けって…、そもそも魔法使いは、動物ペットみたいに懐く種族の人ではないでしょう?無駄に話し掛けたり、パーソナルスペースに入り込まなきゃ逃げたりしないし、気が向けば寄っても来るわよ?」
「何だかそれって、日和見な感じで猫っぽくないですか?」
「…そっか…君はそう思っちゃうんだ…、なら…猫じゃらしで遊んでくれると良いわね…、庭に生えてたわよ、エノコログサ……」
僧侶は僕に生暖かい目を向け、それ以上は僕の悩みに答えてはくれそうに無かった。僕は相談する相手を間違えたらしい。

 この後に思い付きで、早朝、毎朝、庭で剣の素振りをしている宰相様と大盾さんに話を振ってみれば、一方、頭を抱え溜息交じりに、もう一方は鼻で笑われ「「頑張れよ」」と言われるに至り、メイドさんや奥様に話してみてもクスクス笑われるだけだった。

 そんな訳で魔法使いとの距離が縮まる事無く、周囲に何故か優しく見守られ半年もの間を平和に過ごしたのだが、しかし、ここに来て、僕は周囲の誤解に困惑する事に成った。僕自身は恋愛感情的な意味で魔法使いと仲良くなりたい訳では無かったのである。
その事を周囲に弁解しても、照れているだけだと思われ余計に誤解されてしまう有様。それを魔法使いに相談したら「義賊オマエの所為だったのか…」と呆れられ「もう、何もするな!余計な事も言うな!これ以上、私を巻き込むな!」と言われた。僕は更に、魔法使いに嫌われてしまったらしい。ので、また周囲に相談して、余計に困った事に成った。

「仕方がありませんねぇ~♪外堀を先に埋めてしまいましょう」と言う奥様の掛け声で、僕と魔法使いの婚約(仮)が決定していたらしい。

「おい!私は義賊オマエに、何もするな!余計な事も言うな!と言ったよな?何を勝手に巻き込んでくれてんだよ!」
「えぇ~っと、ゴメン?責任は取るから安心して♪」
「取らんで良いから、開放してくれ」
「無理かなぁ~…、そもそも、僕を騙してた魔法使いにもちょっとは責任あると思うんだよね…、責任持って道連れに成ってくれても良くない?」
「良くないし!騙すって言ったって、それ成りに伝えてはしたし、私は嘘を吐いてた訳じゃなくないかな?」
「そうだね、誰の事なのかを言わなかっただけだね…、でも、僕は君に騙されたんだ!その責任を追及させて貰うよ!だから、一緒に責任を取り合おう!」
「嫌だし!コレ、何の嫌がらせだよ!」

 この先の近い未来。僕と魔法使いは周囲の政治的な圧力で結ばれ、僕は自棄糞な部分もあったが面白半分、魔法使いは暫く納得せず我が儘を言ったが自暴自棄気味に僕と夫婦と成る誓いを立ててくれた。
その時「酷い話だ」と魔法使いが呟いていたけど、僕は気にしない。
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