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prologue
005
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銀行へ向かう道中、道方は…、道方の古い記憶の中でも、母親が大切そうに保管していた様に見え、その頃から凹み歪みのあった…道方が触れる事すら許されなかった銘菓の缶を…、通年劣化で錆の出た箇所のある…その古びた銘菓の缶を…ドキドキしながら、ゆっくりと開ける……。
その中身は、多くも少なくもない分量。
仰々しい上に厨二病を拗らせた者が付けたのであろう名称の探偵・興信所の名刺が一枚。
何度かくしゃくしゃにされたのであろう皺になった場所があちこち擦切れているボロボロな写真と、当時はカメラ屋で無料で貰えたのであろう現像した店の名前が入った安物のアルバムに納められた複数の写真。
黄ばんだ紙にプリントアウトされたポケベルと言う昔の連絡手段の通信情報、それに添えられた電話番号の当時の所在情報。集められ過去を垣間見れる様に成った文字、何所から誰かからかに送り込まれた短い言葉が涙で濡れ、文字を滲ませた状態で保管されていた。
古いボロボロの写真には高校の制服を着た2人。キッさんに「これ、君の母親の撫子さんだよ」と教えて貰わなければ分らない。幸せそうな笑顔をした若かりし頃の母親と、寄り添い笑う恋人らしき男の姿が映し出されていた。アルバムの方には恋人らしき者と友人らしき者達が写った写真が複数収納されている。
取り敢えず。ポケベルの通信情報、最初の方の[084][14106]は良く分らないが、途中からの[2タッチ入力]解読分と言うのに書かれている愛を語る言葉に続けられた[マコト]は、恋人らしき男の名前であろうか?この最後の方では気遣う様な内容の文章を送って来ていた[マコト]は、もしかしたら自分の父親ではないのだろうか?と道方は短い文章に対して期待を募らせる。そんな事を道方が一人、色々と考えている間に銀行へと辿り着いた。
銀行員に出迎えられ、通される応接室。大和さんとキッさんの存在が、身分証明と成ったらしい。何も言わないのに運ばれて来る書類ケース程度の大きさの金属製で鍵付き取っ手付きの箱。
キッさんに促され、道方が鍵を開けると中身は、通帳と印鑑。通帳に記入されているのは…、定期的で大きくは無い預金の入金と、年一回の実家であろう病院からの多額の入金、銘菓の缶に入っていた名刺の会社からの引き落としだけだった。
引き落としは定期的で大きくは無い方の預金を超える事も無く、残金は母親の妹弟がしゃしゃり出てくるに遜色無い金額である。
道方が見た事の無い金額に驚いている間に、準備される無数の書類。キッさんが「免許証は持ち歩いていますよね?」と道方がポケットに入れていた財布を取上げ、キッさんの主導指示に寄って手続きが勝手に進行して行く。
気付いた時には、預かり金額が0に成った母親名義の通帳と取上げられた物を渡され、新しく発行された道方名義の通帳の方は印鑑と共に「年間1万円にも満たないセーフティボックスだ。面倒が片付き安全が確保されるまで、そのまま預けて置くと良い」と片付けられ、気を利かせてなのか?「他の名義の変更や面倒な手続きは、キッさんに委任状を渡しておけば総て済ませるだろう。何時でも何でもキッさんに頼むと良い」と、大和さんが先に総てを勝手に決めてしまっていた。
そして、この日を境に、道方の生活環境は大きく様変わりする。
「空き巣や強盗に入られるのは不本意だろう?どのマンションが良い?職場の近くを求めるなら駅前のコレとか、家賃収入もそれなりに成るんじゃ無いかと思うんだが……」
「…家賃収入とは?え?もしかして、マンションを丸ごと買わされる方向?!」
貧乏人と金持ちの考え方の違いに相応のカルチャーショックを受けながら、法律のグレーゾーンを垣間見せられて、道方は、キッさんに助けられながら自分史上、未到領域の生活に踏み入れてしまうのだった。
因みに、購入させられたマンションは大和さんの持ち物件。キッさんの「何も知らなかったヒロの罪滅ぼしに付き合ってやって欲しい」と言う説得にて、法外な格安価格で道方の物と成るのだが、これはまた別の御話。
その中身は、多くも少なくもない分量。
仰々しい上に厨二病を拗らせた者が付けたのであろう名称の探偵・興信所の名刺が一枚。
何度かくしゃくしゃにされたのであろう皺になった場所があちこち擦切れているボロボロな写真と、当時はカメラ屋で無料で貰えたのであろう現像した店の名前が入った安物のアルバムに納められた複数の写真。
黄ばんだ紙にプリントアウトされたポケベルと言う昔の連絡手段の通信情報、それに添えられた電話番号の当時の所在情報。集められ過去を垣間見れる様に成った文字、何所から誰かからかに送り込まれた短い言葉が涙で濡れ、文字を滲ませた状態で保管されていた。
古いボロボロの写真には高校の制服を着た2人。キッさんに「これ、君の母親の撫子さんだよ」と教えて貰わなければ分らない。幸せそうな笑顔をした若かりし頃の母親と、寄り添い笑う恋人らしき男の姿が映し出されていた。アルバムの方には恋人らしき者と友人らしき者達が写った写真が複数収納されている。
取り敢えず。ポケベルの通信情報、最初の方の[084][14106]は良く分らないが、途中からの[2タッチ入力]解読分と言うのに書かれている愛を語る言葉に続けられた[マコト]は、恋人らしき男の名前であろうか?この最後の方では気遣う様な内容の文章を送って来ていた[マコト]は、もしかしたら自分の父親ではないのだろうか?と道方は短い文章に対して期待を募らせる。そんな事を道方が一人、色々と考えている間に銀行へと辿り着いた。
銀行員に出迎えられ、通される応接室。大和さんとキッさんの存在が、身分証明と成ったらしい。何も言わないのに運ばれて来る書類ケース程度の大きさの金属製で鍵付き取っ手付きの箱。
キッさんに促され、道方が鍵を開けると中身は、通帳と印鑑。通帳に記入されているのは…、定期的で大きくは無い預金の入金と、年一回の実家であろう病院からの多額の入金、銘菓の缶に入っていた名刺の会社からの引き落としだけだった。
引き落としは定期的で大きくは無い方の預金を超える事も無く、残金は母親の妹弟がしゃしゃり出てくるに遜色無い金額である。
道方が見た事の無い金額に驚いている間に、準備される無数の書類。キッさんが「免許証は持ち歩いていますよね?」と道方がポケットに入れていた財布を取上げ、キッさんの主導指示に寄って手続きが勝手に進行して行く。
気付いた時には、預かり金額が0に成った母親名義の通帳と取上げられた物を渡され、新しく発行された道方名義の通帳の方は印鑑と共に「年間1万円にも満たないセーフティボックスだ。面倒が片付き安全が確保されるまで、そのまま預けて置くと良い」と片付けられ、気を利かせてなのか?「他の名義の変更や面倒な手続きは、キッさんに委任状を渡しておけば総て済ませるだろう。何時でも何でもキッさんに頼むと良い」と、大和さんが先に総てを勝手に決めてしまっていた。
そして、この日を境に、道方の生活環境は大きく様変わりする。
「空き巣や強盗に入られるのは不本意だろう?どのマンションが良い?職場の近くを求めるなら駅前のコレとか、家賃収入もそれなりに成るんじゃ無いかと思うんだが……」
「…家賃収入とは?え?もしかして、マンションを丸ごと買わされる方向?!」
貧乏人と金持ちの考え方の違いに相応のカルチャーショックを受けながら、法律のグレーゾーンを垣間見せられて、道方は、キッさんに助けられながら自分史上、未到領域の生活に踏み入れてしまうのだった。
因みに、購入させられたマンションは大和さんの持ち物件。キッさんの「何も知らなかったヒロの罪滅ぼしに付き合ってやって欲しい」と言う説得にて、法外な格安価格で道方の物と成るのだが、これはまた別の御話。
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