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prologue
009
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この日の午前中に、ボロボロの写真を手に取り道方は、父親を求めて夢を見て…、銘菓の缶に入っていた名刺の…その探偵・興信所を頼る事にし…、その探偵・興信所から持ち帰った資料にて…、この日の夜、道方は母親に愛されなかった理由に辿り着き、母親の態度は[仕方が無かった]のだと納得した……。
愛される訳が無かったのだ。マイクロSDカードに録音された会話の中には醜悪な事実、不幸の始りの総てが入っていたのだった。
道方が生まれる前の事。集団暴行を受けた若かりし日の撫子が階段から落ちたと言い張り、その後、妊娠が発覚…、マコトと言う名の男は本当の事を知りながらも喜んだ振りをして[自分の子供と親子三人]と言う言葉「幸せに成る為」を強調し「良い所に就職して、迎えに行くから」と、撫子に「付き合っていた事、内緒だよ」と言う枷を付け、言動を縛っていたらしい……。これは、先輩とやらに献上した生け贄達、須く全員に使っていた手口なのだそうだ。
真実を知り、詰め寄って来た女の子供のDNA鑑定をすれば、真実は有耶無耶に成り…、近年では、妄想癖のストーカーとして接近禁止令がゲット出来るのだと…、幼稚園児を連れた女が来た時は驚いたけど…本物のストーカーに成る様な気質の執念深い女を餌食にしてないから大丈夫だったのだ…と、マイクロSDカードに録音された会話の中でマコトは武勇伝として、それを語っていた……。
人生で初めて包丁を向けられ、信じていた唯一の存在である母親に切り裂かれた場所へと残る傷痕が疼き出す。道方は録音されていたマコトの言葉を思い出し幾度も反芻し、それを聞いたであろう母親の事を思い、感じた憤りと自分を抱き締めた。
すると不意に新たに痛み出す古い傷痕と、そこに触れていた指先。取り敢えず先に、痛みを感じた手を見ると、指先に赤い滴が浮かび上がり滴り落ちる。
続いて目を向けた腕。道方が幼稚園に通い出した頃、母親に切り裂かれ母親に手縫いで縫い合わされた場所。そこからは時々…、突然化膿したりして劣化した糸くずが出て来るのだが…今回、それと一緒に折れた針の破片が浮き出して出て来ていたみたいだ……。
洗面所に向かい、小さな洗面台の小さな鏡の前で道方が着ていた服を脱ぎ、鏡越しに硬くなった皮膚から飛び出した針の破片らしき物を見付けて引き抜くと、つぅ~っと一筋二筋と赤い滴が涙を流しているかの如く流れ落ちる。
まるでそれは、道方の母親の撫子が泣きながら無念を訴えているかの様に、憤りと悲しみを抱えながらも泣く事すら出来ない道方の代わりに泣いているかの如くに、先程に水を浴びた髪から滴り落ちていた透明な滴をも赤く浸食する様に染めながら暫く血は流れ続けた。
頭に上る筈だった血は流れ出し、昔の様に床に真っ赤な染みを作り上げる。
取り敢えずの止血は、道方にとって昔懐かしい配管用の水止めテープ。この場所には、古くなってベトベトするソレ以外、仕えそうな物が無かったのだ。道方は幼少期を思い出し突然に声を出して笑い出す。
深夜の製造業、とある仕出し弁当の工場で勤務する者しか住んでいない場末のアパートは暗く静まり返り、道方の声だけを木霊させた。
道方は何かを振り払うように暫く笑い続け…深呼吸し、疲れたように溜息を吐く…、そして、意を決したかの様に、母親と繋がる資料や書類をキッチンの上にある空っぽの戸棚に仕舞い込み…、母親が住んでいた…嘗ての幼少期、母親と一緒に住んでいた家を後にする……。
道方は虚ろな表情で、住む者が少なく成り、空き家が増え、街灯も少ない古い町並みの闇の中へと歩き出したのだ。
愛される訳が無かったのだ。マイクロSDカードに録音された会話の中には醜悪な事実、不幸の始りの総てが入っていたのだった。
道方が生まれる前の事。集団暴行を受けた若かりし日の撫子が階段から落ちたと言い張り、その後、妊娠が発覚…、マコトと言う名の男は本当の事を知りながらも喜んだ振りをして[自分の子供と親子三人]と言う言葉「幸せに成る為」を強調し「良い所に就職して、迎えに行くから」と、撫子に「付き合っていた事、内緒だよ」と言う枷を付け、言動を縛っていたらしい……。これは、先輩とやらに献上した生け贄達、須く全員に使っていた手口なのだそうだ。
真実を知り、詰め寄って来た女の子供のDNA鑑定をすれば、真実は有耶無耶に成り…、近年では、妄想癖のストーカーとして接近禁止令がゲット出来るのだと…、幼稚園児を連れた女が来た時は驚いたけど…本物のストーカーに成る様な気質の執念深い女を餌食にしてないから大丈夫だったのだ…と、マイクロSDカードに録音された会話の中でマコトは武勇伝として、それを語っていた……。
人生で初めて包丁を向けられ、信じていた唯一の存在である母親に切り裂かれた場所へと残る傷痕が疼き出す。道方は録音されていたマコトの言葉を思い出し幾度も反芻し、それを聞いたであろう母親の事を思い、感じた憤りと自分を抱き締めた。
すると不意に新たに痛み出す古い傷痕と、そこに触れていた指先。取り敢えず先に、痛みを感じた手を見ると、指先に赤い滴が浮かび上がり滴り落ちる。
続いて目を向けた腕。道方が幼稚園に通い出した頃、母親に切り裂かれ母親に手縫いで縫い合わされた場所。そこからは時々…、突然化膿したりして劣化した糸くずが出て来るのだが…今回、それと一緒に折れた針の破片が浮き出して出て来ていたみたいだ……。
洗面所に向かい、小さな洗面台の小さな鏡の前で道方が着ていた服を脱ぎ、鏡越しに硬くなった皮膚から飛び出した針の破片らしき物を見付けて引き抜くと、つぅ~っと一筋二筋と赤い滴が涙を流しているかの如く流れ落ちる。
まるでそれは、道方の母親の撫子が泣きながら無念を訴えているかの様に、憤りと悲しみを抱えながらも泣く事すら出来ない道方の代わりに泣いているかの如くに、先程に水を浴びた髪から滴り落ちていた透明な滴をも赤く浸食する様に染めながら暫く血は流れ続けた。
頭に上る筈だった血は流れ出し、昔の様に床に真っ赤な染みを作り上げる。
取り敢えずの止血は、道方にとって昔懐かしい配管用の水止めテープ。この場所には、古くなってベトベトするソレ以外、仕えそうな物が無かったのだ。道方は幼少期を思い出し突然に声を出して笑い出す。
深夜の製造業、とある仕出し弁当の工場で勤務する者しか住んでいない場末のアパートは暗く静まり返り、道方の声だけを木霊させた。
道方は何かを振り払うように暫く笑い続け…深呼吸し、疲れたように溜息を吐く…、そして、意を決したかの様に、母親と繋がる資料や書類をキッチンの上にある空っぽの戸棚に仕舞い込み…、母親が住んでいた…嘗ての幼少期、母親と一緒に住んでいた家を後にする……。
道方は虚ろな表情で、住む者が少なく成り、空き家が増え、街灯も少ない古い町並みの闇の中へと歩き出したのだ。
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