ふくしゅうはじめました

mitokami

文字の大きさ
11 / 13
蛇の道は蛇

011

しおりを挟む
 道方ミチカタ何所どこ如何どう歩いて来たのだろうか?夜の闇、動物の声が遠くから聞こえる白いタイルが敷かれた通路。薄暗いランタンの光で営業する露店街を見付ける。
その場所にはイギリス発祥はっしょうの路上販売雑誌を売る者を始め、中古であろう日用雑貨や古本、手作りの物を売る者等と、色々な露店が並んでいたのだ。

 興味を引かれ露店を見て回る道方ミチカタ
その通路を通る者達のほとんどは、足早に通り過ぎる素面しらふの者か、酔っ払い。商売が成り立っているのか?と道方ミチカタは他人事ながらに心配しながら露店の商品を遠目に眺めていた。

 そこで、とある露店にて、すみっこにかかげられた焼き板。周囲に書かれた赤い文字が妖しい模様にも見える[予習、ふくしゅうを手伝います]と日本語で書かれた看板と出会う。しばし看板を凝視する道方ミチカタに対して、ボロを着ているのに目だけが矢鱈やたらと活力にあふれる露店の店主はニヤリと笑いながら手招きをし「ベンキョウシマスヨ」と言った。道方ミチカタは、その目に気圧けおされ恐れおののき、後退あとずさる。

 そんな道方ミチカタの腕に突然、誰かが抱き付く。
道方ミチカタの腕に抱き付いた主は、この時間この場所に存在するには不味い、補導されかねない、ボーイッシュな髪型と服装の見るからに未成年で「おっちゃん、相変わらず商売向いてへんなぁ~」と言いながら楽しげに笑い。その笑顔を道方ミチカタにも向ける。そして「血の臭いするやん、誰かに虐められでもしいたん?」と言い。答えを聞かぬまま「にいさん見たくな目ぇしいた人、探しとってん♪」と言いながら道方ミチカタの腕を引き「あっしと一緒に来たってw治療したるさかい」と道方ミチカタをビルとビルの隙間にある路地裏の奥、細い金属製の階段を2つ上った先に存在する慈善事業じぜんじぎょう団体と言う看板を掲げる相談所[なんでも]と言う所に連れ込んだ。

 この時、抵抗して悪目立ちし補導員や警察に目を付けられ職務質問される可能性を危惧きぐし、看板を見ず無抵抗で連れられて来られてしまった道方ミチカタの脳裏には、ぼったくり店舗の客引きに捕まってしまったのでは無かろうか?と言う不安が渦巻く、実質、物理的に引っ張って連れて行かれてしまった以上、客引き行為等の適正化に関する条例に違反するキャッチ行為である。
のだが…、道方ミチカタは高額な料金を請求される事無く、何処かで見た事のある男と似た雰囲気の老女に「シラン…、りんとまた厄介やっかいそうなん拾ってきたんかい…ちゃんと世話するんやよ!」と勝手に拾って来られた事にされ…、道方ミチカタが何を言い掛けるにも「うるさいね、黙って治療されときや!」と言葉を完全にさえぎられ、道方ミチカタは言いたい事を半ば無視され続け、古傷を強引に治療され…、更には「不味まず成るからよ食べし!」とカップ麺を押し付けられ食べる事と成った……。

 道方ミチカタがカップ麺を受け取りながら保険証の不所持を伝え料金を尋ねると、治療をほどこしてくれた老女は「寄付は受付とうけど、慈善事業て言う看板ぶら下げとって治療費もろてたらアウトやろ」と大笑いし「寄付は1円からでも受け付けとおよ、気持ち分入れたらええ、次回から、その気持ち分に見合う治療するさかいに」と募金箱と書かれた大きめな箱を指しながら付け加えた。
もしかしてもしかすると、この地域に住み続ける人に寄っては、タダより怖いモノは無い代表の治療、お試し第一回目を受けてしまったのかも知れない。
と言うのも…、道方ミチカタの次ぎに来た御客様が見るからに堅気かたぎの方では無く…流血沙汰な患者様が数人……。机の上に積み上げられる札束。請け負う老女は「ねえさん」と呼ばれ、突然に奥(?)から出て来た看護師さんは泡姫(ソープ嬢)風と言うか、見るにそのまま、後に道方ミチカタが知る事に成る事実なのだが、エレベータのある表側には、そう言う店が隣接しており、看護師さんはそこの従業員さんでもあるそうだ。

 そう言う訳で、シランと呼ばれる存在に寄って、この日この場所に連れて来られた道方ミチカタは、この時。立地から、その他諸々もろもろ堅気かたぎから外れた世界を垣間見る事と成ったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...