僕と美鈴と思い人

mitokami

文字の大きさ
3 / 10

003

しおりを挟む
 喘ぎ声が漏れる事を恐れて声を殺し、乱れる呼吸。時に強く感じ、ビクッと震える体。また時に、溢れた温かい体液が肌を伝い流れるのにすら身悶え、股間を強く押さえて耐え切れず。飛び散らせ、溢れさせて着ていた服や絨毯の上にまで零し続ける。

 どのくらい時間が経過していたのだろうか?その場で何度も何度も不用意に熱を吐き出してしまった後の事。不意に電気ポットからティーポットに御湯を入れる音が響く。想定外の物音。
近くから聞こえて来る音に対して、ゾッとして振り返り、僕は小さく意味不明な悲鳴を上げて、正気に戻った。
そして、汚してしまった着ている服や、アトリエ側に敷いてあった絨毯、目の前のカーテンの惨状に一度青ざめ…、美鈴の冷めた「モノを描いてる時やったら資料として大歓迎やけど、今は、しまっときいさ」と言う言葉に…、晒してしまっていた下半身のブツを両手で隠し、耳まで真っ赤にして蹲り硬直する……。

 振り返った先は、来た時より片付いていて、脱ぎ捨てられていた衣類は畳まれ、物に寄ってはハンガーに掛けられ、片付けられ、僕がどれだけ覗き見に夢中に成り集中していたかを物語る。
何時の間にかアトリエのキッチンに立っていた美鈴は、勝手知ったる御様子。エプロン姿で何事も無かったかの様にキッチンの設備を活用して、4つのティーカップに緑茶を注ぎ、トレーの上に、準備した内2つのカップと和菓子を並べていた。

 カーテンで仕切られた先の様子を見に来たのであろう。寝室からナオさんの相手をしていた筋肉質で色黒な男が、下半身のブツをおっ立てたそのままの姿でカーテンを大きく開いて出て来る。
今回のナオさんの相手、色黒な男は、僕の存在に一瞬だけ驚き、美鈴に向かって「野良子ノラコちゃんも来てたのか…、一緒に混ざってくれても良かったのにw」と軽く笑う。
野良子ちゃんと呼ばれた美鈴の方は眉間に皺を寄せ「ざけんな、いらへんは!私が求めてんは私を巻き込まんラブ&エロスやwテメェ~を加えた肉欲なんぞ欲しい無い」と答え「それより何より、オッサン!ナァ~様は御姫様やでw姫様の為にオッサンの方がしっかりサービスせえや」と、御茶と茶菓子を乗せたトレーを男に手渡して、寝室を覗き込む事も無く「ナァ~様💕声枯れたら大変やし♪続きは休憩しいた後にして、御茶飲みやw」とナオさんに向けてであろう、微笑んだ。
それとは打って変わり、改めて眉間に皺を寄せた美鈴は僕に雑巾を投げ付けて来て「掃除しろし」と吐き捨てる様に言い放ち、今度は溜息を吐き無表情で使い終わった茶器を片付け始める。

 寝室にて、慌てた様子で体にシーツを巻き付けたナオさんの方は…、僕が寝室での事を覗いていた事を知り、僕の顔を見て一瞬だけ青ざめ…、続いて顔を赤らめ、俯き、胸元と股間部分を一度シーツの上から手で隠して一呼吸…、僕に手招きし、僕がそれに従い近付くと僕の腕を取って引っ張り、僕の耳元で「私の秘密、見た?」と囁く……。僕が頷き肯定すると、又、僕の耳元で「見返りは準備するから、美鈴には私の性別の事、黙っていて」と「着替えいるよね?彼氏のだけど貸したげるわ」と、覗き見た事や部屋まで汚してしまった事を許した上に、口止め料までくれるらしい。

 この時、最初にナオさんとの出会いをくれた美鈴を差し置いて、ナオさんの歴代の恋人達の様に、僕にもナオさんと触れ合えるチョンスが有るのかと思い。人知れず優越感に浸っていた。でも、それは随分後に成って、最初に出会った頃から、その可能性すら無かった事を知る事に成る。ナオさんにはナオさんの信念があって、僕や美鈴は、その信念に寄って機会を与えて貰えない存在だったらしい。
その為、美鈴は地元から通える範囲の一番遠い高校に入る前から、ナオさんのアトリエへ日和見にしか姿を現さなくなっていた。この事を知ったのも随分後に成ってからの事だ。ナオさんは最期まで、美鈴に与えるのと同様、どんなに強く求めても、僕にも触れるだけのキスしかくれず。させてもくれなかった。

 ナオさんが安心しきった優しい笑顔を僕に向けてくれる。
「ミイが秋の分も御茶入れてるんじゃない?貰ってきなよ」とナオさんに言われ、先に言われた事を思い出し、僕は期待に胸を膨らませ頬を緩めながら、ナオさんにミイと呼ばれる美鈴の居るキッチンへと向かった。そんな僕に対し…、美鈴は「茶は飲んでもえぇ~けど、先、着替えろし!部屋が汚れる」と冷たく言い放つ。

 これをこの態度を、何故か嫉妬と思い込んでいた僕は、美鈴から見たら相当の愚か者に映っていた事だろう。一足先にナオさんの思想に辿り着いていた美鈴は冷たくも優しく、掃除の手伝いをしてはくれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

処理中です...