嘘ではなく秘め事

mitokami

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012 [最後に残った秘め事]

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 私が普通に起きられる様になったのは夕方の事。
私の家には、今いる病院の奥様。アキのお母さんが電話してくれていて…、山に遊びに行ったら、沢に落ちて軽い怪我をしたと言う事にされ…、念の為、頭を打っている可能性を考え、預かる…、と言う設定になっていると言う事だった。

 私の効き手には、プラスチック製の水色な手錠が掛けられ、腕には点滴のチューブも繋がっている。そしてシン君が何故かまだ、私のその手を握り付き添ってくれていた。私は不思議に思い。声を掛けようと声を出そうとしたのだが、咳き込んでしまい、話す事が出来なかった。
私が咳き込み、私が意識を取り戻したのに気が付いたシン君は「おはようございます、先輩…今、御茶を準備しますねw」と目の下に隈を作った御疲れな様子で微笑んでいる。私は声にならない声で「ありがとう」と返した。の、だが…しかし……。私はシン君に対して違和感を禁じ得ない。ソレは私の気の所為であろうか?
私の不安を知ってか?知らずか?シン君は「リクライニングしますねw」とスイッチを押し、ベットを斜めにしてくれ、私に負担が無い様に手を貸して座らせてくれた。

 御蔭で、部屋の中の様子が全体的に見て取れる様になった。
此処はちょっと高そうな個室で(うっわぁ~怖いなぁ~…入院費用がヤバイ事になってるかもしれないぞ)と新たなる不安を私に齎してくれる。シン君が電気ポットの御湯で緑茶を入れてくれる。受け取って一口飲んで、高そうな御茶の美味しさに、更に金銭的に気が重くなった。
シン君は私の気持ちも知らないで、私の居る方向を見て、ニコニコ笑い嬉しそうにしている。でも、シン君が見ているのは…、私ではなく私の肩の後ろ辺りでは、なかろうか?そう、シン君が私の後ろをじぃ~っと見ている気がするのは、気の所為か?いや、起き上がってみて確証を持った……。コレは気の所為では無さそうだ。
私は妙な不安を抱えながら、シン君に掛ける言葉を見付けられず。咽喉も痛いので黙って、シン君を見詰め、視界に入ったシン君の瞳に映る私の背後に度肝を抜かれる事となるのであった。

 シン君の黒い瞳に映る私の首には、後ろから腕を回す様にして、誰かの両手が絡みついていたのである。私は一度、目を閉じ…ゆっくり開き直して…、もう一度「シン君の瞳の中に映るモノ」を見る……。今度は、さっきよりずっとはっきりと見えてしまった。
「もしもし…シン君?君は誰と一緒に居るつもりなのかな?」
なぁ~んて、訊きたい言葉を飲み込んで、私は少しだけ気分が悪くなって、私は此処から逃げ出したくて「御手洗いに行きたいのだけど…」と告げ、シン君に玩具の手錠を外して貰い。点滴を付けたまま、個室に標準装備のトイレに案内される。介護器具付の風呂まで完備だった。
(マジでかぁ~…掛けてる保険で、どれくらい費用を補填出来るだろう?あ…、だめだ!入院1泊からでは出ないかも?今までのバイトで貯めた預貯金、吹っ飛ぶかも…)何て、更なる嫌な事を考えさせられ、辛くて心で泣いた。

 トイレを出る時、私が洗面台で手を洗っていると、水に黒くて長い髪の毛が混じっている様に見えて、驚きの余り、後ろに下がって壁に激突してしまう。それから、洗面台の正面の鏡に映ったその場に存在していないモノ。長い綺麗なストレートヘアを見てしまって、本当に冗談抜きで、無駄に心臓に悪い思いをした。
本当に凄く、心臓に悪い思いをさせられたのだが…、鏡の中の[手の雰囲気]にも、その[髪の雰囲気]にも、心当たりがあるのだけれども、さて、どうしたものか?正直、出るなら出るで、部分だけで出るのは遠慮して欲しい。私は彼女に対して「尋ねたい事」を思い出して、答えて貰えないだろう事を幽霊として再会し、次第に存在感が薄くなって行くのを実感しながら感じ取る。「姫」と呼んでも彼女は何の反応も示してくれはしなかった。
私は色々な事を踏まえ、考えては見たモノの…今の所は、ちょっと不気味な時もあるけれど…、相手が[姫]ならまぁいっかw大きな不都合は無いので、取敢えずは放置する事に決めた……。

 トイレから出ると、シン君に半ば強引にベットに連れ戻らされ、何故だか「先輩、勝手に帰っちゃ駄目だから繋ぐねw」と、また、玩具の手錠で繋がれてしまう。「何のお遊びですか?」もしくは「監禁ですか?」と言ってみたくもなったけど、ベットに戻らされて、夕食を出されて、ソレが美味しかったので利き手を繋がれつつも我慢する。
(入院費って幾ら位になるのだろうか?つぅ~か、もう退院できるなら御家に帰りたいです。)ってのも、あるのだが…、それより何より(何がどうなって私が此処に居るのだろう?)ってのが気になって仕方が無い。
私の所持品が此処には何も無かった。身に付けている服も下着も総て、私の物ではなかった。
(誰が私を着替えさせたんだ?)って、疑問もあるし…、昨晩と同様、今の私の周りは、分からないモノばかりだった……。
(シン君にその答えを求めようか?)とも思ったのだが…、私が何か言う度に…「大丈夫ですw」「安心して休んで下さい♪」と言って、はぐらかされてしまう……。私はちょっと困ってしまって(病室から脱走してやろうか?)と考え始めた頃、ゴロちゃんが御見舞に、アキが様子を見に来てくれた。

 ゴロちゃんを見て私から、安堵の溜息が零れる。アキの少し暗い表情を見て、私は息を飲んだ。

 私は意を決して、近付いてきたゴロちゃんの腕を掴み「あのさ…今の状況、説明して貰っても良いかな?」と、まだ少しかすれ気味になってしまっている声で質問をした。
「その説明は私の役目なので、私からで構わないかね?」
部屋の出入り口付近で立ち止まっていたアキの後ろから、学校の偉い人が病室入って来て、ゴロちゃんの横に立つ。
偉い人は私が了承する前に勝手に話し出した。
「君は、死んでも知られたくない。墓場まで持って行きたい秘密と言うモノを持っているだろうか?」
私はそう言われて、一瞬、表現が抽象的過ぎて意味不明と思いながらも…、隠されていたファイルの中身と、姫やリカ、ユリちゃん…、そして、岡田さんの秘密を思い出す……。
「君自身、持っていようが持っていまいが、君の友人達は所持し、君に黙っていて欲しいと思っているだろう。君はその願いを叶えてあげられるだろうか?」
つまり偉い人は口止めに来たらしい。

 私は私の都合により、偉い人が続けようとした言葉を制止する。
「私は秘密主義な生き物です。他人様の秘密を偶然、暴いてしまっても、私と私の友人達に危害を加えないのなら、他言しませんよw」と伝えた。
背後から姫に「知らない人にまで、知られたくない。」と言われたからだ。

 私は偉い人に…、あの夜、追掛けられた理由についても秘匿を約束させられた……。私はコノ秘密をきっと、誰にも話さないし、そもそも、もう、誰にでもどんな理由があろうと話す事はできないであろう。だって…、ソレが姫の願いで、他の女の子等の願いでもあるだろうから……。
私の決意は姫に通じたのであろう。姫は「後は不義理で、女を性的に実験材料的に弄び続けたあの男を・・・だけねw」と呟いて消えてしまった。この事をシン君には、姫が[会いたい人の元へ行ってしまった。]と伝える事にしよう。重要部分を秘匿しただけで嘘ではない。

 色々あって、幸いな事に、入院費は偉い人持ち。日曜日の夕方にはバイトに出て、制服の予備のスカートに着替え、家に帰り。翌日は、SDカード回収の為、東条と連絡を取って待ち合わせ学校へ…、そんな月曜日からは、日常が戻り…、登校途中、岡田さんにも会った……。
岡田さんは意味あり気に「アナタの御陰で、ユリさんだっけ?同類の人に出会えたわwありがとうww」と私の預かり知らぬ御礼を伝えてくる。そして、私の耳元で「内緒にしてね?私も誰かに言ったりしないからw」との事らしい。
この国では、訴える者がいない限り。又は、マスメディアにバレ、証拠を掴まれ追求されない限り。死人が出ようと大きな問題にならないのが定石だ。
私も『私を止めて下さい。』を叶えられず終わってしまった事だし、それを岡田さんに軽く伝えて、私も誰かに話すつもりは全くもって無い事を伝えておいた。
岡田さんは驚いた様な表情で「そう言えば、女尊男卑主義って言ってたねw」と言って笑う。

 私が東条を蔑ろに岡田さんと話していると、後ろから、走る靴音が近付いてきた。後輩のシン君が、姫を目当てに寄ってきたのだろう。私は(もう、私の側に姫は居ないって言ったのに…)と思いながらも、私を[姫]の代わりにするシン君の行動に身構えた。
岡田さんは、私の腕に「姉さん♪」と言って飛びついて来たシン君を見て驚き一歩引き、動揺し曖昧な微笑みで「これからも、ソレでよろしくねw」と「じゃ、また…教室で……。」と言葉を残し立ち去り、足早に先に行って他の同級生に声を掛け、安心しきった笑顔で笑っていた。

 私は今日、再び、岡田さんの御蔭で[あの日のアレは真実。夢でも何でも無かったのだ…]と実感した。ユリちゃんの秘密。アキが抱えた秘密と…、アノ暗い表情の訳……。その他諸々繋がっている。

・・・今回の事で、秘め事が増えた・・・
私はこの朝、靴を履き替えて直ぐ、東条からSDカードを受け取り、処置に困る。東条はSDカードの中身を知りたがったのだ。
私は東条に対して…、嘘では無いけれど、真実の総てでは無い言葉を選び[勝手に借りちゃったカメラに入ってた他人様の私物]であると伝えた……。東条は体良く勘違いしてくれ「勝手に借りたって…怒られね?」と言う。私が「怒られるだろうねw」と返し、東条に「カメラ…返ってく来ると良いな……。」と言わせてミッションクリアだw秘密は守られた。けども、困ったぞw
私がカメラの本体に記録した動画と…、誰かさんへの処罰…、その誰かさんのコレクション、学校に置いてあった標本やファイル等は…、学校の偉い人が処分してくれる手筈になっている……。だけど、私の手元に結果的に残っちゃったコレはどうしたら良いのだろうか?どう処分すれば、確実に葬り去る事が出来るのだろう?

 そんな、私の悩みを余所に…、今回の事で浮かばれぬ者が嘆き…、誰かさん達に闇に葬られた者を捜す者が、消息を求めて学校の方に密かに忍び寄る……。誰かさんは急遽、転任したが、何時もドコゾの偉い人の許可を得て、何年かすると戻ってくるらしいので、また、同じ様な事が起こるであろう。まぁ~、強いて言えば、それって、私の与り知らぬ事だけどw
貯水槽のヘドロの中で死んだ時の姿をそのまま残す…屍蝋化した彼女等は…、その時を待っている……。それは[姫]が、引き金となって引き起こす最初で最後の復讐劇となるだろう。
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