攻略対象様に寄る悪役令嬢攻略事情(仮)

mitokami

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 最初の方の繰り返しを思い出し「今度こそは、ファータが自分だけを選ぶ可能性があるのではないか?」と、彼はほんの少し期待していた。だが、次の日には、ファータが彼に対して発した言葉が嘘と成り、既に、彼はファータに裏切られている事に気が付いた。
「僕は何度、彼女に裏切られれば気が済むんだろうか…」
繰り返し繰り返し、繰り返しの中で何度も裏切りの現場に直面し、今度の繰り返しでも、また何度か直面してしまって、彼は裏切りの現場と葉を虫に食われた大木を背に、人知れず大きく溜息を吐いた。

 だが今回の繰り返しでは、天を仰ぎ「また、違う相手なのか…」と呟きながら[果たして、自分と同じ言葉を貰った相手がどれだけ存在するのだろうか?]と、ふと気に成り[知れば、何か変わるかもしれない]と、怖いモノ見たさ、興味本位で調べてみる事にした。
その結果、ファータを罠に掛けようとしているグループの存在に気が付いた。最初は同じ気持ちを抱えた同士なのかと思って近付いたのだが、少し思っていたのと違っていて驚いた。だが違うと分かった後でも、彼は彼等と手を組む事に躊躇は無かった。

 ある時、ファータの手口の証拠を完全に掴む為、誰が犠牲に成るか?誰を犠牲にするか?の話し合いの場が持たれる。その時、婚約者のを持つ彼等に彼は「僕には現在、恋人も婚約者もいませんので、僕が彼女への罠に成りましょう」と提案した。
その頃の彼等は自分の婚約者達を攻略する為に時間が必要で、暇が無く、彼の提案を安易に飲んでくれた。挙句の果てに、自分達の地位や権力を最大限に活用し協力する事を約束してくれる。この約束に寄り、国王の許可を得た[偽物の公爵令息]が生まれ、[偽物の公爵令息]に興味を持った新メンバーが、彼が参加する前の初期メンバーを牛耳る形で、唐突に加入して来た。

 そんな訳で、とある種類の女性の心理に詳しいと言う新規メンバーが、いつの間にか作戦を立ててたのである。[こう言う罠を仕掛ければ][こう言う心理で][こう言う風に罠に掛かる]と言う説明を聞き…、彼は半信半疑でながら、それを演じる事と成った訳だが…、作戦は面白い程簡単に効果を発揮し、苦笑いする事と成る……。

 策略通り、新規メンバーが言った通り、本物の王子様と親友の様に仲良くする事で、偽物の王子の存在は人目を惹き、ファータの目にも止まる。彼が嘗てファータの魅了に自分から掛かりに行っていた男の一人だと気付く事も無く、繰り返しの物語の最初の方からずっと、幾度となく交流し、この繰り返しでも交流した上で裏切った相手だと気付く事も無く、ファータは彼を自分の新たな攻略対象、獲物だと勘違いして嬉しそうに、初対面であるかの如くの様子で彼に近付いて来たのだった。

 本物の公爵令息、本物の王子様が静かに密かに「大丈夫か?」と声を掛ける。表情を隠す様に俯いた彼は顔を上げ虚ろな目で「自ら志願した事ですから」と、静かに上品な演技で微笑んだ。
この時の彼は、この繰り返しでも交流していたと言うのに顔すら覚えて貰っていなかった事がショックで青い顔でもしていたのかもしれない。それでも、仕掛けた罠の餌である彼は、ファータがしっかり罠に掛かり逃げ出せなく成る様にする為、美味しい餌を演じ続ける。

 攻略対象に婚約者がいると言う設定は、最高のスパイスに成るのだろう。
罠を仕掛けるグループのブレーンと成った新メンバーの提案で「婚約者がいるので…」とファータと距離を取ろうとすると、ファータは残念そうな演技をしながらも我らがブレーンの予想通り、押しの一手を打ち出して来た。
ファータが使った手段は、宗教勧誘や押し売りで御馴染みの、何度も何度も気を引く言葉に嘘や大げさな言葉を交え、時に誉め、時に同調して見せ、時に特別感を出し、時に自分から自分に言い訳させる隙を作り、時に秘密めいた言葉を共有させて、繰り返し獲物が信じるまで繰り返す。洗脳に近い話術だ。

[親の地位を笠に着てはイケナイ]と言う校則を[学園では皆が平等]と誤解釈させ、「学園では皆が平等」だからとファータは繰り返した。それに対して「周囲に地位や爵位を意識する者が多く居て難しい」と言う話をすると、ファータはこれまでの姿勢を誉め、同調して見せ[秘密の御友達]の提案を開始する。待ち合わせをし隠れて会う御友達って何なんだ?怪しくて仕方が無い。
そんな[秘密の御友達]を了承すると、最初の[二人だけの秘密]を共有する事と成り、ファータのさじ加減で、何時もは獲物の自分への言い訳を助長させる事が出来るように成るのだと思われる。手慣れ過ぎてて怖い。
そこで、新たに繰り出される話術は、恋人や婚約者以外の異性と持つべきではない、恋人や婚約者を持つ相手に持ち掛けるべきでない[内緒の相談]だ。それを繰り返す事で深く信頼関係を作り、嘘を言っても獲物は信じる様に成って行く事だろう。常識の範囲の事だが、相手のいる異性からの相談は勿論、特定の相手がいる者は異性の相談に気軽に乗って良いモノでは無い。
[内緒の相談]は、人の恋人を奪って、奪われた者の悲しみ苦しむ姿を喜ぶ人種の常套手段でもあるのだ。冷静に考えるとファータが口にする言葉は、相手を思っての言葉ではなく、恋人や婚約者を裏切る為の方便、言い訳を引き出す言葉でしかなかったのだろう。彼はファータの親身にも聞こえる言葉に「ありがとう」と言って目尻に涙を滲ませ、微笑んで見せる演技をした。

 知っていれば、相手に伝えた事が偽りなら、見えて来る真実。
彼の気持ちも知らず。ファータは自分の言葉に酔いしれ、相談に乗って貰うと言う名目から同調意思を引き出しそれを起点に話を逸らし、相手の不安を煽り、逆に相談に乗る様な成り行きに話を持って行っていた。

「何故?」「本気?」
「如何して?」「そう言うモノなのか?」
「そんな事が何故に言えてしまうんだ?」「あぁ、そうか…そう言う事か……」
「従わせる事が、操る事が望みか?」「何でだろう?何だか空しくなって来た」

「あぁ、ホント…、・・・・・・・良いのに……」

 策略通り、本物の王子が言うであろう言葉、返答を頭に入れてファータと話した彼は、この会話の終着点で何を感じ取り、何を思ったのであろうか?
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