簒奪~掛け違ったエピソードの中で…~

mitokami

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 私は家に連れ帰られた後、兄を含む死んだ者達を弔う合同葬儀まで、真っ暗にした部屋の中、虚ろな目をしてベッドの上で膝を抱えて座っていたらしい。

 その間に後継者であった兄が死んだ所為で、この戦いで生き残った両親と祖父が悲しみに暮れ、特に息子の事が大好きだった体の弱い母が悲しみで心を壊し、続いて体も壊してしまったそうだ。
この時点で生き残った私、まだ幼さが残る頃の長男にそっくりな私が被害を被る未来が決定付けられていたっぽい。

 そんな訳で、私自身で切り落とした髪を整えるのにも、自分の専属メイドと兄の専属メイドだった2人のメイドが互いに意気投合して見事にコラボレーション。
私を兄とそっくりに仕立て上げてくれ、母親が死んでしまう迄の間…、母の前だけでは…男であった兄の代わりに男装で兄の振りを強要された……。のだけども、途中から、母が語る兄の夢を自分代わりに叶えたく成ってしまい。私は自身で男装を頑張る事を決め、私は男装したままで騎士を目指し、騎士に成る為に奮闘するのであった。

 一方、父の方はと言うと「そこまでする事は無い」「自分の幸せも考えて欲しい」と私に言い。祖父の方にも「女の子なのだから」と、私が騎士を目指す事に苦言を呈されていた。
けれども、私が兄が死んだ年齢で、死ぬ数週間後に受ける筈だった騎士団の入団テストに合格して、母を喜ばし、私が正規の騎士に成ってしまうと、諦めた御様子で「そのまま士爵(騎士爵)まで上り詰めれば許す」と言い出し、文句を言う事も無く成って私をそれなりに自由にさせてくれる様に成った。

 その後の母親の死後の御話。
後継者問題の為に父親が死んだ母より若い後妻を娶ったのだけど…お義母さんはとっても良い人なのだが…、その連れ子の娘ちゃんが私と同い年な上に面倒臭いタイプで…時々…諦めの悪い父親が私用に女物を揃えると…、欲しがられて非常にウザったく…うっとおしい為…、私は私の意志で兄の遺品やら、父親の着ない(サイズ的に少しお太りに成られて着られなく成った)服をメイド達に仕立て直して貰い、悔い無く、男物だけを使い続ける事に成るのだった……。

**

 そんなこんなで地味に月日が流れる。
兄の死後、紆余曲折はあるだろうが、兄の名を継ぐ腹違いの弟が生まれてくれて後継者問題解決。よかったね。の後、王命で父親が王都に呼び出され、とやらが王子様と一緒に視察に来たりするまでは、それなりの暮らしをしていた気がする。

 …と…言う事で…、私に…この世界が何所なのか知らせる為かの如く…、聖女様が我が家も属する王国の第三王子と…何故か御高齢の護衛の爺さんを伴って…、我が家の領地内の騎士団の砦まで来やがったのであった……。

 取り敢えず。聖女とやらの印象は、2面性が色濃く、独り言の多い女である。
聖女様は事ある毎に、周囲の者にとって意味不明な言葉を繰り返していた。

 魔王討伐の旅に同行できる騎士を用意しろと言ったかと思えば、志願者全員に対して何が駄目だったのか分からないが「解釈違いが酷い!」「全員モブじゃん!他に居ないの?」と言ってみたり、私の腹違いの弟を名指しで呼んで来させたかと思えば「私を護衛する筈の攻略対象がまだ乳幼児だなんてバグが過ぎる」
とかも言っていたそうだ。
この時点では皆が、聖女の言葉に時々、意味の分からない単語が混じっていると言う認識だったのだが、後に聖女の護衛の爺さんからの情報で大体の意訳が伝えられ、理解する事と成る。

 因みに、その聖女の護衛に付いて来た爺さんは、領主である私の父と砦の代表者、何故か指名されて呼び出された私の前で、「拙者は王宮に使える影の一族の前頭領である事を御伝えさせて頂きます事そうろう」と自称していた。
聖女が本当に護衛に指名したのは、爺さんの御孫さんだったらしいが、死んでしまっていたので代わりに爺さんが護衛に成ったらしい。と、ここまでは良い。

 途中から、爺さんの話の内容の雰囲気がオカシク成った。

「ここに聖女のがありまする」
「「「…?!…」」」
皆が口を閉ざした。聖女の死後でなら、遺物的な扱いで写本される事もあるだろうが、何故に御本人様が健在の時点で写本があるのだろうか?

「あ、御安心下され!聖女殿はの存在を知りませぬ故」
「「「……」」」
私は父や砦の代表者である我が領地の騎士団長と顔を見合わせた。爺さんよ!何を安心したら良いのだろうか?

「現在進行形で、聖女殿が独り言を言いながら日記をつける度に内容は更新され、今回、最新の解読情報を御持ちした次第でありまする」
ちょっと意味が分からないけど、何か重要な話があるそうなので、取り敢えず私達は相打ちを打つに留める事にした。

 その結果で得られた情報は、聖女は如何も私達とはが、何かしらの力の御蔭で通訳され、会話が成り立っている。と言う事と、聖女は意識的に私達が理解できる文字とを使い分けている。と言う事。王宮に使える影の一族は、その言葉と文字を読唇術を使い解読している。と言う事。

 その上で、女の日記帳に挟まれていた年表っぽい物と人物相関図、攻略対象の情報と言うのの写しからの情報を合わせて、日記に書かれている攻略対象と言うのの一人が、死んでしまった私の兄である事が発覚。

 私は、聖女の主観も一緒に書かれたであろう
攻略対象としての兄に付いての説明に憤りを感じた。
特に[最初のアクセサリーとしては有り・完全攻略は無しの方向・攻略8割・一生飼殺し決定]と書かれた部分について、きっと父も、小さい頃から死んでしまうまでの私の兄の事を知る騎士団長も、同じ事を思った事であろう。

 そして最後に、詳しくはまだではあるが…、聖女に取って…この世界がゲームと言うモノの世界の中であると言う事を知る……。

 他にも、日記帳の後ろのページから書かき出されている武器や防具らしきイラストの写しから、聖女が身に着けている何度かサイズを詰めた形跡が見て取れる衣服と、王子が精神的に相当無理をして着込んでいる魔導士用のローブが、最強装備と言うモノで、特に王子が来ているローブは、聖女が勇者に選んだ者だけが装備できるデザインの装備と言うモノらしい事が分かった。

 日記は兎も角、影の内定が始まった頃は、別紙の物の写しの一部の内容が書かれたと言う時期の時点で、確かに未来を予知する物っぽかったらしい。が、しかし、聖女が未来を予知したと言って聖女と認められた後、第三王子の為に最強装備とやらを取りに行き、その衣服と杖をプレゼントしてから、別紙に書かれた情報も、聖女が言う未来の予知も少しづつ、予知とは掛け離れて行ったそうだ。
取り敢えず…聖女曰く…、魔王の復活の時期が早まったのは…、予知した未来を必要最小の人数だけに留めず…際限なく広めてしまった所為だ…、との事らしい……。が、今の時点では、本当かどうか定かでは無い。

 爺さんは私に向かって「うぬには魔王討伐の旅に参加して頂きたい」と言う。
「攻略対象の未来、魔王を倒す前の時点に関する記述に書かれた部分に、選ばれた者が覚醒するに至る切っ掛けの人間との戦いと言うのがございまする」と言い「うぬは身に覚えがあるのでは?うぬの兄君付きの影から、そう報告を受けておるのだが?」と言いやがった。

 身に覚えがある事はあるのだけど、ちょっと待って欲しい。あの現場に動ける人間が他にも居たのか?それならに、その影とやらが手を貸してくれていれば、兄は助かったのかもしれないのに、隠れてその現場を見ていただけ?
敵わぬ相手に突っ込んで行った自分が一番悪いのは分かってはいるけれども、解せない事実だった。

 私が何か言いた気に爺さんを見ると「拙者は、拙者の覚醒の切っ掛けとなった孫との再会を望んでおる」と「うぬは、兄君と再会したくなかろうか?」と言った。
私はの、何かを私に伝えようとしていた兄の最期を思い出し、目を閉じ、深呼吸をしてから爺さんを見据え「私は何をすればいい?」と答えるしかなかった。
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