吉原柄の法被と銀狐

mitokami

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02 私と、それなりの日常

009 私から見たソウセイ様と私の今

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 見た目は南蛮渡来の童話の挿絵のゴブリン、私が個人的に思うに成金バージョンと言う雰囲気だろうか?な、[傾奇者かぶきもの]な常連客。我等が金蔓かねづる[ソウセイ様]は、何者なのか良く分からないが…、買った花魁おいらんを食う事も無く、熱燗あつかいと温かい料理を食い…、大門の閉まる亥の刻午後10時頃に成る前には帰ってしまう謎の御仁……。
出会った最初の頃に「嫁にやった六女が死んだ」とか「去年生まれた十女が死んだ」とか言ってたし、話に出てくる子供の人数から考えて、側室が持てる上流階級の人間で、性的に不能者では無いのだろう。と、皆がうわさしている。(それで有りながら…、ソウセイ様は吉原…色町をどんな場所だと思っているのだろうか?)
ソウセイ様は、予約をして花魁を呼び、揚屋で飯を食う時、来る度に頼まれ収集していた[政治に対する不満に関する情報]を聞いて帰りはするが、遊女である花魁にも、それ以外を求めない。姐さん達は、情報屋では無く、売り専門であると言うのに、性的なぜん食わずに、今日も放置プレイで帰ってしまった。もしかして諜報員ちょうほういん的な仕事でもしているのだろうか?本当にソウセイ様に対しては、色々と不思議に思う事が有りはするが、誰も問い掛ける立場に無い為、謎は謎のままだ。

 私が知るソウセイ様情報は、天保12年1841に父親が死に「将来四男に家督かとくを継がせる事にしたw」と話していた事。天保14年1843に十一男と十一女が亡くなったらしいが、7人目の側室[オコト]を迎え、現在も溺愛中。ソウセイ様は絵の才能が有るらしく、最近[オコト様]の絵を描いて、どんなに美人かを力説していたのが印象的だ。後、最近まで吉原の外で掛かっていた規制の所為で家で焼き魚を食べる時に、大好物の生姜を付けて貰えなかったとかを愚痴っていた気がする。子供と側室の数は多いけど…、もしかしたら…本妻様には頭が上がらないのだろうか?そんな考えも、推測の域を出ない…、そんなソウセイ様の為に情報を仕入れて回る仕事を何年も続けてきた…今日この頃……。私に仕事を斡旋あっせんしてくれる妓楼ぎろうのオーナーの妻[アカネ様]から、表裏一体の依頼が舞い込んだ。
 
 片親である私の父親と兄は弁柄格子べんがらこうしや灯籠を丹塗りし、調度品を朱塗りする職人。私も同じく、その職人でも有る事から[表の仕事]は、茜様発行の紹介状を持って、大名・旗本が利用している楼閣へ行き、傷んだ漆器しっきを補修してくる事や、切見世周辺の景観を見て、補修すべき箇所を調べる事。
[裏の仕事]として、ソウセイ様からの依頼内容は、昨晩の宴の席で、ソウセイ様の指名した馴染みの花魁がうけたまわっているのを芸者として参加し見聞きしている案件。
相変わらず情報収集では有るが…、天保14年に出され、全く進まない[上知令]の詳細。進まない理由を大名・旗本方面から調べてくる事…及び、以前からの引き続きで…、新吉原含む6カ所意外に加えられた庶民の娯楽制限の結果を調べる事となっている……。

 吉原遊郭内の丹塗りの仕事の為の鉛丹えんたんと硫化水銀ににかわを練り合わせ始める時間。今回も、例によって例のごとく。卯の刻早朝6時頃、明け六つ。
客と客を見送る遊女を楼閣から送り出した若い衆わかいしの1人が我が家にやって来て、何時いつも通り、私の父親に[表の仕事]の説明だけして依頼書と紹介状、依頼の前金代わりの1段に1人分づつ入れられた3段の折詰弁当を置いて行った。

 字の読めない父[鉄男]は、その説明だけを信じ…、姉からの虐めで、私が[白髪]と[頬や首と上半身]に大きく広く[紅い傷痕]を持つ事に成ってから、今だに私と目を合わせず…、私の名を忘れたのか?頑なに一度も私の名を口にする事も無く、風呂敷に包まれた弁当を1段取り出し、2段分を仕事に持って行く用に籠に詰め、風呂敷から出した弁当を食べながら「仕事で遊郭の者と接点を持ちたい者は多い」と毎回、繰り返し、他の職人にも仕事を融通する様に言って来る……。
兄[春男]は、姉が9つで嫁に行ってから私と一緒に字を習い始め、依頼書が読める為、そこに書かれた[他言無用]を理解して「理由があって、ニシキ・・・に与えられた仕事だから、持って帰って来れる仕事を持ち帰らせて貰って、それを職人仲間で分け合うべきだ」と私の味方になってくれている。そんな兄でさえ気付けば、私の名を忘れてしまったのか?私を通称で呼ぶ様に成っていた。
それにしても…、私への報酬の前渡しとして、折り詰め弁当を3人分貰ってるのに…私の口に入るのは一人前の三分の一…、何故に1人前を親子3人で分けて食べ…残った2人分を父の職人仲間へ振る舞わねば成らないのだろうか?上前を撥ねられるにしても、こればかりは今も納得が出来ない……。
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