やめて、俺を勇者と呼ばないで~元中二病勇者の憂鬱~

多崎リクト

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⑪新しい仲間

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 少し休んで、服を着て、次の街までもう少しというところで一人の男に出会った。

「勇者様、戦士様、私も魔王退治にお供させて下さい」

 ブルーノと名乗った男は長身のイケメンで、ユウキよりよほど勇者という言葉が似合った。ほんの少し前にユウキが養分にされかけていたスライムと同じようなものがブルーノの下に転がっていた。
 ……つまり、ブルーノとユウキの実力差はあのくらいということだ。

 さて、どうしよう。スイはきっと二人だけの旅に他の誰かが混ざるのを良しとしないだろう。チラリと横目で確認すると、スイの方もユウキを見ていた。
 どうやら、決定権はユウキにあるらしい。
 正直、肩透かしを食らった気分だ。だってスイのことだからユウキと二人きりじゃなきゃ嫌だと駄々をこねるかと思ったのに。そこに何故か三人目の投入を許すだなんて。

 いや、スイもそろそろユウキのポンコツさに気づいて、二人旅が辛くなってきていたのかもしれない。さっきのスライムにやられているようなユウキだ。雑魚相手から守りながら進むことも疲れて、かといって捨てていくのも後味が悪いから、ちゃんとした仲間を加えていこうと考えたのかも。

「……勇者様?」

 ブルーノがユウキの答えをじっと待つ。不思議だったのはブルーノが『勇者』をユウキだと思ったことだ。たいていスイとユウキが並んでれば『勇者』はスイだと思う。それなのにブルーノはユウキが勇者だと思った。
 珍しいが、スイの態度のせいだろう。

 それよりも、答えだ。
 ユウキもまた戦力が欲しいと思っていた。何せユウキ自身が欠片も戦力にならない状況だ。スイだけを頼るのも申し訳ないし、何より自分の身を守り切れる気がしない。守れないから触手やスライムの餌食になるのだ。
 仲間が増えればスイの負担も減るだろう。ブルーノの目的がいまいちわからないが、正義感溢れる善良な市民といったところか。スイとは大違いだ。

「わかった、一緒に行こう」
「――ありがとうございます!」

 ブルーノがユウキの両手を取ろうとしたところで、間に立ち塞がったスイがブルーノの手を取った。
 よほどブルーノの加入が嬉しかったらしい。許可してよかった。

「ブルーノ、よろしく。あと様はいらないから、ユウキって呼んでくれ。敬語も要らない」
「そうですね、勇者様を勇者様とお呼びしていいのは俺だけなので」
「ええと…………」

 明らかにブルーノが戸惑っていたが、そのうち慣れるだろう。慣れてもらわないと困る。

「戦士様は本当に勇者様――ユウキのことを尊敬しているのですね」
「俺もスイでいい。そうだな、俺はこの方ほど強い人を知らない」
「じゃあ、次の街に行こうか!」

 ブルーノにまで誤解されては堪らない。ユウキは慌てて二人の会話に割って入った。

 二人だけの静かだった旅に、たった一人加わるというだけでずいぶん雰囲気が変わる。
 ……ほんの少しだけ寂しかったような気がしたけれど。きっと気のせいだろう。
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