やめて、俺を勇者と呼ばないで～元中二病勇者の憂鬱～

⑬変な夢※

　そしてまた、夢を見た――

　体が動かず、目を開けることもできない。息苦しい。
　腹の辺りに何かが乗っているような重みを感じる。もしかすると金縛りと言うやつだろうか。幽霊の存在など感じたこともないユウキだったが、さすがに恐ろしく思う。

　腹の奥底が熱を持っていて、喉が酷く渇いた。

　――ユウキ、ユウキ

　誰かがユウキを呼ぶ。スイの声に似ている気がしたが、スイはユウキを名前で呼ばない。

　――っ！

　やめろと声を出したいのにそれも叶わず、上擦った声だけがかすかに出た。やはり夢だ。体があまりに命令を聞かなすぎる。
　腹の上にのしかかるものはスイの声音を使い、ユウキを甘く呼ぶ。体を撫で回すのは人間の手に似ていたが、幽霊にしては触られた感覚がやけにハッキリしていた。

　――ここはずいぶんいやらしくなったな。ほら、指を三本咥えこんでも余裕があるよ

　――っ、あっ、や……

　――中が熱いな。スライムの媚薬が残っているのか

　――びや、く……？

　ビヤクって何だろう。何かがぐり、と中を抉る。

　――ひぁっ！ 

　何も見えない暗闇の中ではあったが、中を抉られたと同時に自身が射精したことはわかった。
　そういえば自分は今どんな格好なのだろう。寝る前と同じ姿では無いと思う。下半身だけがスースーしていたし、じっとりと汗をかいた腹に冷めた空気が触れる。
　もしかすると、何も着ていないのかも。

　体はちっともユウキの言うことを聞かない。それどころかスイの声をした何かの言葉にばかり反応した。

　尻の中が熱く、そこが痒いように思える。そこを何かもっと、熱くて太いもので……もしもユウキの口が自由に動いたらそんなおかしなことを口走りそうだった。

　――はやく、中に入れたいな

　――ぁっ

　――キュンキュンしてる。ユウキも早く欲しいんだな。でもまだだよ

　――やっ……はやく、

　――大丈夫、今日は媚薬が抜けるまで弄ってやるから

　柔らかなものが唇に触れる。人間の、唇みたいな。思ったより柔らかいものなんだな。ふにっとして、何だか奇妙な感覚。
　……これ、ファーストキスってやつだ。

　夢だけど、何だかドキドキする。

「愛してる、ユウキ」

　……うん、変な夢だ。