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⑭あっという間に魔王城

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「そろそろですね」

 一年前の旅との大きな違いは、レベル上げの必要が無いということだ。魔王を倒したことがあるのだから、わざわざ回り道をして鍛える必要も無い。
 本当は、ユウキにはあるのだけど、それをスイに隠れてできるはずもない。ブルーノもおそらく、一年前の賢者と魔法使い程度の実力がある。やはり足でまといはユウキただ一人である。

 回り道しなければ魔王城はすぐそこだった。うん、まあ、そうなるよな。

 どうしよう、今更ユウキだけ戦えませんと逃げ出す訳にもいかない。スイとブルーノの真剣な目を見ると、ここで逃げ出したら殺される気がする。

 相変わらずスイとブルーノは仲良くない。二人ともユウキの言葉には返事をしてくれるけど、二人の会話というものは無い。
 一刻も早く戦いを終わらせて、このパーティを解散させたい。


「よく来たな、勇者よ」

 などと考えている間に魔王のお出ましである。

 黒いマントに、フードを深く被っているため顔がよく見えない。
 今回の魔王はユウキより少し背が低いし、威圧感のあったあのオーラもそこまでないような気がする。声も少しだけ高い。

 魔王が「勇者よ」と呼びかけたのは明らかにスイだったが、もうそれでいい。見た目で油断したらたぶんユウキはあっさり消し飛ぶ。だって魔王だ。

「俺は貴方の望みを知っていますよ」
「俺の望み……そんなものは無い」

 スイが訳知り顔で魔王に話しかける。

「これです」

 スイが魔王の腕を掴み、壁側に叩きつけようとする。えっ、和平交渉に見せかけてから急に暴力に訴えるの? 怖くない?
 突然のことに魔王は呆気なく投げられて壁に叩きつけられ――その前に、ブルーノがいた。

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