憧れていたヒーローになったけど熱烈なファンに猛アタックされる俺の話

多崎リクト

文字の大きさ
2 / 33

②「ブルーさん、好きです!」

しおりを挟む
 室田青は幼い頃からヒーローに憧れていた。将来の夢は成長してもずっと変わらず、高校生の頃には担任に呆れられた。
 たしかに世界は平和で、敵なんて存在はどこにもいない。青の望むヒーローはテレビの中にしか存在しなかった。

 それでも、いつか、その時が来た時のために。
 いつか、ヒーローとして戦えるように。そうずっと思っていた。

 それが一年ほど前から変わり始めた。
 悪の組織エタニティ。平和を脅かす存在。そしてそれを倒すもの。
 炎の戦士フレイムが現れたのだ。
 ずっと一人で孤独に戦うフレイムを追いかけ、ようやく、二人目のヒーローとして認めてもらうことが出来た。
 これからは自分がフレイムを支え、一緒に平和を守っていくのだと思っていたのに……。




「なんで、また俺だけなんだ!」

 最近、フレイムが仕事しない。
 ……いや、さすがに幹部が出てくると戦ってくれるが、普段の雑魚や新人のアッシュの相手はもはやブルーしかしていない。ブルーを信頼しているのだと考えれば良いのかもしれないが、はたして本当にそうだろうか。
 とはいえフレイムの連絡先も、正体も、何も知らないし。ブルーは一人で戦うしかないのだ。

 フレイムだったらアッシュだってもう倒せているだろうに。いや、フレイムはブルーがアッシュを一人で倒せるようになるのを信じて待っているのだろうか。ちゃんと話したこともないし、とにかくフレイムの考えている事がわからない。表情も読めない。これは色違いのマスクであるブルーも同じではあるが。

 雑魚に当たり散らすように攻撃し、一通り倒す。周囲を見回すが、今回はアッシュも出てこないようだ。怪我人もいないようだし自分の仕事は達成できている。先輩への不満はまだまだあるが、ずっと憧れていたヒーローに慣れたことは単純に嬉しい。
 本当はフレイムなんて追い越してしまいたいのだけど新人相手に苦戦しているブルーではまだ遠い。

「……もっと強くならないとなあ」

 ため息混じりに呟いてから、物陰で変身を解く。水の戦士ブルーから、室田青という一人の青年へ。
 今日のトレーニングメニューを考えながら、さて帰ろうと顔を上げたところで、目の前に見知らぬ男が立っていることに気づいた。

「ブルーさん、好きです!」
「……は?」

 もしかしてブルーのファンということだろうか。だが、今の彼は室田青である。つまり正体がバレたということになる。
 まずい。ヒーローといえば正体は秘密なものだ。だが、どうして秘密なのか青は知らない。知らないが、とにかくまずいのだ。

 どうにかして誤魔化さないといけない。でも、どうやって?

 すっかりパニック状態になった青の両肩に手が置かれる。身長は少しだけ男の方が高い。上から押さえつけられるようで得体の知れない怖さがある。
 一見細身でやわらかな印象のある男なのに、肩に置かれた手はびくともせず、青はすっかり動けずにいた。

「先週、ブルーさんが助けてくださって……それから毎日ブルーさんのことを考えてました」
「は、はあ」

 たしかに先週も出動したが、この男を助けたかどうかは思い出せない。危険な場所にいたらたしかに助けただろうなとは思う。線の細い美人という見た目だからだ。腕も腰も細いのに、どこにそんな力があるのだろう。

「…………可愛い、ブルーさん」

 うっとりと青の顔を見つめたかと思うと、男の整った顔がどんどん近づいてくる。頭突きされるのかと思ったが、違う。気づけば男の息が唇に触れそうになるほど近づいていて、反射的に突き飛ばしていた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた

BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。 断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。 ーーそれなのに。 婚約者に婚約は破棄され、 気づけば断罪寸前の立場に。 しかも理由もわからないまま、 何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。 ※最終的にハッピーエンド ※愛され悪役令息

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...