転生したら悪の組織の幹部だったけど、大好きなヒーローに会えて大満足だった俺の話

多崎リクト

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ブラックナイトの不在(黒川甲斐記憶喪失編)

⑤こんなシーン、絶対になかった※

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 少なくとも『炎の戦士フレイム』にはこんなシーン、絶対になかった。
 子供向けなのだから当たり前だが、行間にだってこんなものは存在しなかったはずだ。だって、正義の味方と悪役がくっつくって……いや、男女なら無くはないのか?

 混乱している間に、焔が後ろからぬいぐるみにでもするように、抱きしめてくる。そのままテレビから目を逸らせないように頭を顎で固定される。

『甲斐のここ、トロトロだね』
『あっ、いいから……はやく入れて』
『もう我慢できなくなっちゃった?』

 テレビの中の黒川甲斐はやけに色っぽい。自分も焔との行為であんな風になったのだろうか。妙にドキドキして、頭を固定されたって目を閉じれば良かったのに画面の中の二人を凝視していた。
 じっくり指でアナルを慣らされて、もどかしそうに焔のペニスを強請っている。

 あそこをあの熱いもので貫かれるのか。意識を失う前の行為を思い出してしまい、自身のアナルがほんの少し疼いた。

 ベッドに座る焔の膝の上に乗せられているせいで、尻に硬いものが触れる。それがついほんの少し前まで、自分の体内に入っており、動画の中でこれから黒川甲斐に挿入されるのだ。無意識に唾を飲み込む。

「どう?何か思い出した?」
「――ひっ」

 前触れなしに背後から耳元で囁かれ、間抜けな悲鳴を上げてしまう。急にいい声を出すんじゃない。

「な、何も」
「そう……」

 残念そうにされるが、こんな動画を見て記憶が戻るわけが無い。これはただのセクハラなのではないか。
 パジャマ越しに尻に熱を押し付けられ、焔の膝から下りようと暴れるが、しっかりと腹に巻きついた腕のせいで叶わない。それどころか暴れたせいで焔のペニスを刺激してしまい、押し付けられたものがどんどん硬くなっていく。

「ほ、焔……おろして」
「動画と同じことしたら思い出すかも」
「無理!思い出さない……ちょっとまって」

 腹に巻きついていた腕がパジャマの隙間から入り込んで乳首を摘む。そんなこと、動画でしてない。そう指摘しようと思って口を開けば甘い声にしか成らない。

「ああっ、やっ……だめっ」
「嫌じゃないよ。甲斐はここを弄られるのが好きだもんね」
「ちが、……あっ」

 俺は黒川甲斐じゃないし、乳首なんて弄られても気持ちよくならない。そう思いたいのに、ツンツンとつつかれて、先っぽを押し潰すようにされて、爪で軽く押されると恥ずかしい声が止まらない。自身がパジャマのズボンを押し上げてくるのがわかる。

「ほら、テレビの中の甲斐も同じだよ」

 快楽に堪えるためにいつの間にか閉じていた目を、ふと開く。
 画面の中の二人はまだ挿入しておらず、焔が甲斐の乳首を弄っているところだった。シャツを全開にされておりピンク色だった乳首が赤く勃起している。
 いっそ痛そうなくらいなのに、画面の中の男はうっとりと腰をくねらせている。
 自分はどうだろう。彼と同じ事になってしまっているのだろうか。だってこれは甲斐の体だ。だから、仕方ないのか?

「――あっ」

 ズボンの隙間から焔のペニスが擦り付けられる。下着をズラされ、アナルに直接ペニスが触れてくる。

『欲しい……焔の 』

 これは誰の言葉だろう。テレビの中の黒川甲斐。この体の本来の持ち主の黒川甲斐。それとも、もはや誰だかわからない自分自身の?

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