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新番組開始編
①「水の戦士ブルー」
しおりを挟む前世の記憶はぼんやりとモヤがかかっていて、目覚める直前に見ていた夢のようだった。黒川甲斐の前世はサラリーマンで、毎週『炎の戦士フレイム』の放送を楽しみにしていた。
そのせいか、フレイムの内容はわりとしっかり覚えているのに、前世の自分自身のことはほとんど覚えてない。サラリーマンで、男で、たしかフレイムが終わってしまったショックでトラックに轢かれて死んだんだった気がする……くらいだ。
どれだけフレイムが好きだったんだろう、と自分でもちょっとヤバいかなと思う。
そんな自分の、よくわからない前世のことを、恋人に打ち明けるべきなのかどうか、甲斐はずっと悩んでいた。
悩んで、先延ばしにし続けて、いつの間にか随分時間が経ってしまっていた。
「…………新人ですか」
「ああ、今後はその新人の仕事が増えるはずだ」
上司から聞いたのはエタニティに新人が入ること。今後はその新人の出番が増えるのでブラックナイトの出勤が減ること(どちらかというと戦いより事務作業が増えるようだ)。
そして、新人の名はアッシュという、ブリザードに憧れてエタニティに入ってきた男らしい。
現場が減るということはフレイムと戦う機会が減るということで、それは残念だったが、まあその分見学に徹することもできるだろう。
楽観的に考えていた甲斐はまだ、『物語』が進んでいることに気づかなかった。
※※※
「水の戦士ブルー、参上!」
アッシュの初仕事を見守るという名目でフレイムの活躍を記録しようと現場に赴いた甲斐は、見知らぬ戦士の登場に愕然とした。
いや、見覚えはあった。そもそもフレイムの赤い部分を青くしたような見た目だったし。でもそうじゃなくてその名前と見た目は――。
「水の戦士ブルー」
それは、『炎の戦士フレイム』の最終回後に放送された新番組『水の戦士ブルー』に出てくるヒーローだった。
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