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駆け引きは地の果てに
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住み慣れた町を出て数日経った。
漸く辿り着いた西の町。
入口には、数名の護衛が立ち並んでいた。
その内の一人に、ラルフは近付く。警戒が強まる。
ボソリとフルネームを告げると、聞いた事があるのか、数名顔を見合わせる傭兵達。
「ここで待て」
一人が町中へと姿を消した。
「待とうか、二人共」
「呑気だな、お前」
レイの言葉にそうだね、と笑うラルフ。
無口はシェンは慣れているのか、傍に生えてる木に身体を預けて。暫く待つ。
漸く傭兵が戻り「領主が会うと仰せだ」と応える。
「まだ使えるねぇ、俺の苗字」
「………」
レイはそれには応えず、案内する傭兵の後を三人着いて行った。
町の奥にある大きな建物、屋敷と言ってもいい。
「でけぇ」
戦火の中、まだこんなの残ってんのか、とレイに疑問すら浮かぶ。
「ここは比較的安全な筈、武力が違うからね」
ラルフの言葉に声を失う。思い出すは戦火に焼かれた町、行き場を失う子どもや大人。生活すら生き延びる事さえ困難な場所。次々と毎日誰かの命が失われる所。
ギリ、と歯を食いしばる。
こいつらは知らない、俺達の生活を生きる術を。
知らず拳を握り締めた、爪が掌に食い込んで血を滲ませる。
「行こうか」
レイは、はと我に返る。
促されるまま、屋敷へと足を踏み入れた。
「久しいな、生きていたか」
「まぁ何とか…お久ぶりです、伯爵」
「お前の家族は気の毒だった」
貴賓室、レイは落ち着かないでいた。入った事すら無い。ラルフとシェンは慣れた様子。
「で、何か用事あるのだろう?ラルフ」
「話が早い、資金援助を申し出たいのです」
伯爵の目線が細められる。
「………遠い親戚、頼みは聞いてやりたいが、見返りは?」
やはりそう来るか、とラルフは思ったが表面には出さず、
「異能ってご存知ですよね?」
切り札を切る。
「ここにいる三人共、異能持ちです」
ほう、と伯爵の視線に興味が浮かぶ。それ程に稀なのだ、異能持ちは。
「ラルフ、お前も異能持ちとは知らなかった」
「戦争時に発覚しました」
そうか、と頷く伯爵。
「……今、度々攻め込んでくる集団が居てな」
武力だけでは
「持ちそうに無い、異能持ちが数名いる」
ラルフ、お前の事だ…見返りが欲しいのだろう?との返答。
「話が早いですね、俺は国を興したいんです」
「………随分と大層な夢だな」
「夢で終わらす気はありません」
「本気か……」
「はい、そして伯爵には後ろ盾になって貰いたいんです」
「見返りとしては、釣り合いが取れないぞ」
「………そこはそれ、俺達の実力を見てからと言う訳で」
一歩も引かない、やり取り。
確かにこれも争いの一つと、レイは感じた。
先に根負けしたのは伯爵。
「分かった、お前達の力見せて貰おう」
それまでは
「滞在を許そう」
◇◇◇
そうして、レイは準備された客室へと案内された。
「風呂とか入った事ねぇし」
用意されたそれにレイは戸惑う。侍女達が寄ってきて服を脱がしにかかる。
「ま、待てって!」
抗議の声も虚しく。風呂に突っ込まれ、始終無言の侍女達。
服はどっかに持って行かれ、ゴシゴシと洗われる身体隅々まで、羞恥心など意にも介さずに。
髪も整えられ、生まれて初めてさっぱりする。
レイの整った顔立ちと引き締まった身体に、無言だった侍女達が顔を赤くしたのは、言うまでも無い。
「そりゃ汚ねぇのは分かってんだけどよぉ」
されるが儘ってのは我慢できねぇ、だけど。あの迫力には何故か逆らえなかった。
「らしくねぇ」
整えられた髪だけは、ぐしゃりと崩す。着ているのはバスローブ、落ち着かない。
その夜はなかなか寝付けないでいた。
翌朝、元の服を持って来た侍女から受け取ると、解れが修正され綺麗に洗濯されている、ソレに袖を通す。
やっと一息付くと、呼び出しがあった。
向かう先は、先日通された貴賓室。
既にラルフとシェンがいる。伯爵も。
「待ってたよ」
ラルフの明るい声が出迎える。
「応、悪かったな」
「気にはしてないよ…で、早速なんだけど昨日の話」
こちらから
「攻め入ろうと思う」
「居場所分かんのか?」
「大体の見当は付いてる、ね?伯爵」
ラルフの言葉にうぬ、と頷く伯爵。
「町外れのあばら家だ、奴等の根城は」
なら、話は早い。
血が騒ぐ。元々好戦的なレイ、既に戦闘態勢。
シェンをチラリと見ると、彼もそうなのだろう。普段の落ち着いたものより表情が険しい。
ラルフは呑気なものだが、纏う気配は違う。
「異能持ちが居る、油断は出来ないよ」
「誰が相手だろうと油断なんかしねぇ」
レイは頼もしいねぇ、とラルフの言葉。
「じゃあ向かうか、早速」
ラルフの声に、出発が決まった。
◇◇◇
「随分とボロだな」
目的地は、聞いてたよりあばら家で外壁すら崩れ落ちている。化け物屋敷か?と思う程。規模はそれなりにデカい、多分元金持ちの家と推察される。
「さて、どうやって乗り込もうか?」
ラルフの言葉にレイは拳を鳴らし。
「んなもん決まってる、正面突破だ」
言うより先に、門を蹴り飛ばすレイ。ギッと嫌な音を立て開く柵で出来たそれ。
「せっかちだね、レイは」
そう言いながらも、続くラルフ。そして無言のシェンが最後に着いてくる。
レイが両手で、屋敷の正面ドアを開く。鍵は壊れているのだろう、簡単に開く。
「んだぁ?テメェら勝手に入ってくんな」
エントランスらしき所に数名男達の姿、大人だ。銃器もナイフも手にしているのを目にする。
多勢相手に三人、だが十分。
「潰す」
それだけ言うと、レイが床を蹴り一人の男の頭を踵で蹴り落とす。悲鳴すら上げずに沈む姿に、周囲の男達は息を飲む。
喧嘩の申し子。戦闘の為だけに生まれてきた少年・レイ。
電光の様に翻り、次の相手の服を掴み投げ飛ばす。男の背中が床に叩き付けられる。
漸く我に返ったのか、男達が手にしたナイフが襲いかかる。チラリと視線を送り、それを交わし頭を掴み膝蹴りを顔に食らわす。
銃を構える男にラルフが動く。身に付けた体術で瞬間身を屈め、銃弾を交わし膝を男の腹に叩き込み、男が怯んだ隙に片足でそれを蹴り飛ばす。
見ればシェンも数名相手に立ち回り、次々と周囲を重い拳でねじ伏せていた。
「異能持ちは…」
レイがそう呟いた途端、火が周囲を渦巻く。肌が焼ける。
風が起きる。レイの周囲に。
火の手が、中心から消える。
階段の上から青年が見下ろしていた。
「そっちも異能持ちか」
うっすらと笑う男。
光がラルフから発する、視界を遮られた男は舌打ちをする。
「まだ居るのか」
「………生憎俺もだ」
シェンが床に手を付けると、家全体が揺れる。激しい程に。床に亀裂が入る。
「異能持ちが、三人か」
これは恐れ入るね
だが言葉とは裏腹に奥から、二人出て来るのを確認。
「ほらよっと」
壁から木の枝が伸び、レイ達の周囲を取り囲む。
「んなの効かねぇ」
レイの切り札、雷鳴が起き、枝を切り裂く。
「こいつ、二つ属性持ちかっ!!」
稀どころが、見た事は無い筈。
男達が怯む。
「少し力上げる」
捕まってろ、とのシェンの言葉に咄嗟に近くの柱にレイとラルフは掴む。
床が揺れる。亀裂は壁まで走り、パラパラと瓦礫が降ってくる。
持ち出される銃器、ラルフの光が一層眩しさを増し、男達の視界奥底を焼く。
「くそっ」
後に続くは一般人、異能持ちでは無くレイ達の身体能力と力だけで制圧。
全員を縛りあげ、レイが言い放つ。
「殺さなくていいのか」
「引き渡して牢に閉じ込めるだけさ」
物騒な物言いのレイにラルフは苦笑いを浮かべた。
「甘めぇ」
ラルフは思う、詳しくは聞かないし話そうともしないレイ。どんな生き方をしてきたのだろう、と。
多分人を殺す事にも慣れているのは感じ取れる。
もうそんな事はしなくていい。
そう言ってやりたい、だけど彼を縛りたくない。縛るのも出来ない、それがレイにはあった。
はぁ、と一息吐き、
「戻ろうか、用件は済んだ」
ラルフは二人に、そう告げた。
◇◇◇
「キミが守りたい物は分かるよレイ」
太陽はいつだってこちらを見ている。金の髪を風が揺らす。
「でも今は仲間だ、キミの事も俺は守る」
「はぁ?俺は守られんのは御免だ」
「レイが強いのは知ってるよ、守りたいのはキミの背中…俺に任せて欲しいんだ」
「………俺は一人で戦える」
うん、そうだねとラルフは笑う。
「相棒になりたいんだキミと」
その言葉はレイの胸の中にこだまする。ラルフは強い、自分と肩を並べる程に。
そしてレイも持つ、人を惹きつける物も持つ。周囲が勝手に集まってくる何か。
「………ったく」
最初に根負けしたのはレイ、頭をボリボリ掻きながら。シェンが珍しく微笑む。
「分かったぜ、お前に預けてやらぁ」
「決まりだね…宜しく相棒」
一層深まるラルフの笑顔が、レイに向けられた。
◇◇◇
所と時は代わり、少し前に遡る。
「異変は無かったのですか?」
周囲の見廻りから帰った少年に、イシュリーンが尋ねる。
「今の所は無いね」
そうですか、とイシュリーンが頷いた時。一人屋内に駆け込んでくる。
「襲撃だっ取り囲まれてる!」
「さっきはいなかったぞっ」
すくっと、四人が立ち上がる。レイに後を任せると言われた。ドウーエ、トレとノイン、イシュリーンに闘気が漲る。周囲にいたラルフの仲間達が息を飲む。
「行きましょうか」
イシュリーンの言葉が口火を切る。途端走り出す四人。
「待ってくれっ俺達も!」
「邪魔です」
イシュリーンがそう言い放つ。その迫力に皆動く事さえ叶わなかった。
外に躍り出ると、囲む敵は多数。鉄や木の棒、瓦礫を持つ面々。
「随分と物騒ですねぇ」
言葉とは裏腹に残忍な笑みを浮かべるイシュリーン、そして身構えるドウーエ、トレとノイン。
「やれ」
向こうの合図が初まりの合図。
襲いかかる相手の腹を蹴り一発でイシュリーンは落とす。続けてノインが身体を抱え込んでくる敵の頭を両手を組み叩きのめす。トレとノインは双子らしく連係を取り、二人を相手取り攻撃を交わしながら、蹴りと拳を振るう。そしてドウーエはくるりと相手の勢いを利用し片手で回転、落ちてきた所を蹴り飛ばす。
流れる様な動作、屋内から覗く仲間達は黙った儘それを見つめていた。
噂には聞いていた。レイを筆頭にするこの五人、今は四人か。持っている筈の異能さえ使わずとも、強過ぎる少人数グループ。次々と相手集団の立っている数が減っていく。武器を持っていても五人には敵わない。
最大火力を持つ少年達は、呻き倒れる連中の中心に立っていた。
「これに懲りたら、もうここには近付かないで下さいね?」
次は
「命、貰います」
残忍な笑みを浮かべ、イシュリーンが身を屈め倒れ込んでる一人を覗き込む。
ひいっと青年の股の間に染みが滲む。人外めいた美貌の持ち主の殺気は青年達の恐怖を刺激する。それ所か、他のメンバーも殺気と闘気を宿している。
バラバラと逃げていく集団に、屋内から歓声が上がる。
「アンタ達凄いな」
「大人が敵わないって」
口々に言葉が掛けられる。が、
「レイなら一人であれ位沈められます」
「だね」
イシュリーンの声にドウーエが返す。
二人の言葉にトレとノインも頷く。
自分達の代表・ラルフとやり合ったレイの姿を目撃した仲間達は納得する。この四人より強い少年レイ。
「今頃、どこにいるのかなぁ」
仲間の一人が、そう呟いた。
◇◇◇
「もうすぐ町に着くね」
大きく伸びをするラルフ。
「そうだな」
レイが応える。三人の背には伯爵から渡された食料と物質。ちゃっかりとラルフが要求したそれは結構重い。
「帰りは無事に済みそうだね」
ご機嫌な口調の割に、ラルフは周囲への警戒は怠らない。それはレイとシェンも同じで。
いつどこで襲撃に合うか分からない。それ程に緊迫しているのだ。この世の中は。
今もどこかで血が流れ、命が消えている。
「まあ、この三人なら簡単には負けないけど…頼りにしてるよ、二人共」
「どの口が言うか」
レイが呆れた様に口を開く。自分と匹敵する力の持ち主のクセに、と。
「ほら、見えてきた」
ラルフの言葉に前方を目を細め、レイは眺める。懐かしい、とさえ感じる。離れていたのは数週間位だと言うのに。
四人には信頼している。何があっても無事な筈だ、とレイは考える。
アイツらは強い、異能を使わなくても。
「戻ろう、仲間達の元にさ」
三人は歩みを進めた。
◇◇◇
「お帰りなさい、三人共」
応、と出迎えたイシュリーンに応える。次々と集まってくる自分の仲間やラルフのグループ。
ドウーエがレイに抱き着いてくる。それを引っ剥がし、不満気な彼の頭を撫でると、途端ご満悦そうな表情に変わる。
ノインとトレも口々に。
「レイ、お帰り」
「……お帰り…レイ」
「ああ、留守中何も無ぇか?」
「襲撃が一度ありました」
イシュリーンが双子の代わりに、そう言う。
「お前らなら片付けられんだろ」
「楽勝だよ」
ドウーエが答える。頷くレイ。
「流石だね」
「こいつらがそこらの連中に負ける事はねぇ」
ラルフの言葉にレイが返す。それ程に強いのだ、残した四人は。
恐らくは異能すら使わずに。
「そうだね、まあ先ずは荷物運ぼうか…皆食料あるよ」
ラルフの声に歓声が上がる。
「レイ、シェン手伝ってくれるかい?」
「背中に背負ってんだ、やるしかねぇだろ」
シェンは無言で頷く。
そうして、食料と物資は根城にしている廃屋内へと運び込まれた。
配られたパンを齧りながら、レイが言う。
「学校作る、ってたなラルフ」
「うん」
「どこに作るんだ?」
そうだね、とラルフは少し考え立ち上がる。釣られてレイが視線を上げる。
「ちょっと待ってて」
奥の部屋へと、姿を移し。少し経つとラルフが戻る。手には一枚の紙。それを広げる。
そこに描かれていたのは簡易的な地図。
「……どこで手に入れた?」
「俺が描いたよ、自分の足で調べた」
「暇か」
レイのツッコミに笑うラルフ。
「ここが現在地、で周辺…高台がある、自然に出来た所」
そこに
「城を作る、城下町に学校と住居だね」
「……国興すってマジ話か」
「冗談は言わないよ俺」
前に聞いた、王の器が俺にはあると。
だが。
「俺は王にはならねぇ」
ラルフ
「お前の方が適任だろ」
ラルフにはカリスマ性がある。人を惹きつけて止まない性質。
「王はキミだ、レイ」
「やだね、面倒事は嫌いだ」
はあ、と溜息を吐くラルフ。短い付き合いだが、レイは一度言い出したら聞かない。それは嫌と言う程痛感している。
「仕方ない、俺がやるよ…だけどもし俺に何かあったら」
レイ、キミが
「俺を引き継いでくれ」
親友、と呼ばれレイは驚く。ガシガシと頭を掻きレイは答える。
「親友って、お前ねぇ」
「少なくとも俺はレイの事、そう思っているよ」
屈託の無い笑顔。多分俺も気を許し始めている、こいつに。レイはそう思う。
「面白れぇ、だったら俺もそう呼ぶ」
握り締めた拳と拳、レイのそれとラルフのそれが。
コツンと合わさった。
◇◇◇
伯爵からの援助が届き、ラルフが示した場所高台に急ピッチで城が建設されていく。
「早ぇえな」
「そうだね、俺の想像より早かった」
レイとラルフは建設中の城壁を眺めていた。
「で、住人は?」
「来る人は拒まない、それが盗賊だろうと」
「荒れんぞ」
「俺達も似たようなものだろう?レイ」
だな、とレイは返す。
ラルフには自信があるのだろう。覚悟がある。
レイは珍しく夢を馳せる。自分達の国、飢え苦しむ事が無いそれに。
だが、奪いに来るヤツらはいる。
守る、それが増えるだけだ。
守り抜く、レイは身体に力が漲るのを感じる。
「レイ、一度帰ろう」
ラルフの言葉にレイは頷いた。
「どうだった?」
「楽しみだなぁ」
ラルフの仲間達が口々に言葉を発する。
「着々と進んでいるよ、皆楽しみにしていて」
ラルフの言葉に歓声が上がる。飛び上がる子もいる。
それらを眺め、レイは思う。
守る物が増えた。右手、掌を広げ握り締める。
「レイ?」
ラルフの言葉に顔を上げ
「んでもねぇ」
そう答える。
「ラルフ様っ、城に族が攻め入ってきましたっ」
建設に携わった者が数名、廃屋に飛び込んでくる。
立ち上がる五人、レイ、イシュリーン、ドウーエ、トレとノイン。ラルフとシェンも続く。
異能持ちが闘気を纏う。
それを見た周囲が息を飲む。
「行くぞ」
「ああ」
レイとラルフの言葉を皮切りに、七人は駆け出した。
建設中の城壁の一部が破壊されていた。見れば相手は大人数。銃器も手にしている。
「派手にやってくれたなぁ」
レイの挑発が飛ぶ。無言の儘敵側が攻撃を仕掛ける。飛ぶ弾丸、それを避け
「手加減は無用だ、お前ら好きにやれ」
四人は一斉に異能を使う。イシュリーンは闇を繰り出し男達を飲み込む。ドウーエは水の渦で数名を取り囲む、息が出来なくもがく男数名。ノインが重量を扱う、男達は地面に倒れ込む。トレは炎の渦を巻き起こし、敵を焼き尽くす。
そして響き渡るレイの風と雷鳴。それは敵側を沈黙させるには十分過ぎる程だった。
「俺達の出番無かったねぇ」
「………あいつらが本気出したらこうなるのか」
ラルフとシェンは少し離れた場所で会話していた。
噂には聞いていたし、調べは着いていた。
だけど、これ程とは。
ラルフは感心する。
この中にレイは立つのか、異能と身体能力を持つ四人が認めたリーダー。
本当に王の器を持っている。君なら周囲を纏め上げられるのに。
興味が無い、それだけで切り捨てる。
頑として動かないレイにラルフは溜息一つ吐いた。
漸く辿り着いた西の町。
入口には、数名の護衛が立ち並んでいた。
その内の一人に、ラルフは近付く。警戒が強まる。
ボソリとフルネームを告げると、聞いた事があるのか、数名顔を見合わせる傭兵達。
「ここで待て」
一人が町中へと姿を消した。
「待とうか、二人共」
「呑気だな、お前」
レイの言葉にそうだね、と笑うラルフ。
無口はシェンは慣れているのか、傍に生えてる木に身体を預けて。暫く待つ。
漸く傭兵が戻り「領主が会うと仰せだ」と応える。
「まだ使えるねぇ、俺の苗字」
「………」
レイはそれには応えず、案内する傭兵の後を三人着いて行った。
町の奥にある大きな建物、屋敷と言ってもいい。
「でけぇ」
戦火の中、まだこんなの残ってんのか、とレイに疑問すら浮かぶ。
「ここは比較的安全な筈、武力が違うからね」
ラルフの言葉に声を失う。思い出すは戦火に焼かれた町、行き場を失う子どもや大人。生活すら生き延びる事さえ困難な場所。次々と毎日誰かの命が失われる所。
ギリ、と歯を食いしばる。
こいつらは知らない、俺達の生活を生きる術を。
知らず拳を握り締めた、爪が掌に食い込んで血を滲ませる。
「行こうか」
レイは、はと我に返る。
促されるまま、屋敷へと足を踏み入れた。
「久しいな、生きていたか」
「まぁ何とか…お久ぶりです、伯爵」
「お前の家族は気の毒だった」
貴賓室、レイは落ち着かないでいた。入った事すら無い。ラルフとシェンは慣れた様子。
「で、何か用事あるのだろう?ラルフ」
「話が早い、資金援助を申し出たいのです」
伯爵の目線が細められる。
「………遠い親戚、頼みは聞いてやりたいが、見返りは?」
やはりそう来るか、とラルフは思ったが表面には出さず、
「異能ってご存知ですよね?」
切り札を切る。
「ここにいる三人共、異能持ちです」
ほう、と伯爵の視線に興味が浮かぶ。それ程に稀なのだ、異能持ちは。
「ラルフ、お前も異能持ちとは知らなかった」
「戦争時に発覚しました」
そうか、と頷く伯爵。
「……今、度々攻め込んでくる集団が居てな」
武力だけでは
「持ちそうに無い、異能持ちが数名いる」
ラルフ、お前の事だ…見返りが欲しいのだろう?との返答。
「話が早いですね、俺は国を興したいんです」
「………随分と大層な夢だな」
「夢で終わらす気はありません」
「本気か……」
「はい、そして伯爵には後ろ盾になって貰いたいんです」
「見返りとしては、釣り合いが取れないぞ」
「………そこはそれ、俺達の実力を見てからと言う訳で」
一歩も引かない、やり取り。
確かにこれも争いの一つと、レイは感じた。
先に根負けしたのは伯爵。
「分かった、お前達の力見せて貰おう」
それまでは
「滞在を許そう」
◇◇◇
そうして、レイは準備された客室へと案内された。
「風呂とか入った事ねぇし」
用意されたそれにレイは戸惑う。侍女達が寄ってきて服を脱がしにかかる。
「ま、待てって!」
抗議の声も虚しく。風呂に突っ込まれ、始終無言の侍女達。
服はどっかに持って行かれ、ゴシゴシと洗われる身体隅々まで、羞恥心など意にも介さずに。
髪も整えられ、生まれて初めてさっぱりする。
レイの整った顔立ちと引き締まった身体に、無言だった侍女達が顔を赤くしたのは、言うまでも無い。
「そりゃ汚ねぇのは分かってんだけどよぉ」
されるが儘ってのは我慢できねぇ、だけど。あの迫力には何故か逆らえなかった。
「らしくねぇ」
整えられた髪だけは、ぐしゃりと崩す。着ているのはバスローブ、落ち着かない。
その夜はなかなか寝付けないでいた。
翌朝、元の服を持って来た侍女から受け取ると、解れが修正され綺麗に洗濯されている、ソレに袖を通す。
やっと一息付くと、呼び出しがあった。
向かう先は、先日通された貴賓室。
既にラルフとシェンがいる。伯爵も。
「待ってたよ」
ラルフの明るい声が出迎える。
「応、悪かったな」
「気にはしてないよ…で、早速なんだけど昨日の話」
こちらから
「攻め入ろうと思う」
「居場所分かんのか?」
「大体の見当は付いてる、ね?伯爵」
ラルフの言葉にうぬ、と頷く伯爵。
「町外れのあばら家だ、奴等の根城は」
なら、話は早い。
血が騒ぐ。元々好戦的なレイ、既に戦闘態勢。
シェンをチラリと見ると、彼もそうなのだろう。普段の落ち着いたものより表情が険しい。
ラルフは呑気なものだが、纏う気配は違う。
「異能持ちが居る、油断は出来ないよ」
「誰が相手だろうと油断なんかしねぇ」
レイは頼もしいねぇ、とラルフの言葉。
「じゃあ向かうか、早速」
ラルフの声に、出発が決まった。
◇◇◇
「随分とボロだな」
目的地は、聞いてたよりあばら家で外壁すら崩れ落ちている。化け物屋敷か?と思う程。規模はそれなりにデカい、多分元金持ちの家と推察される。
「さて、どうやって乗り込もうか?」
ラルフの言葉にレイは拳を鳴らし。
「んなもん決まってる、正面突破だ」
言うより先に、門を蹴り飛ばすレイ。ギッと嫌な音を立て開く柵で出来たそれ。
「せっかちだね、レイは」
そう言いながらも、続くラルフ。そして無言のシェンが最後に着いてくる。
レイが両手で、屋敷の正面ドアを開く。鍵は壊れているのだろう、簡単に開く。
「んだぁ?テメェら勝手に入ってくんな」
エントランスらしき所に数名男達の姿、大人だ。銃器もナイフも手にしているのを目にする。
多勢相手に三人、だが十分。
「潰す」
それだけ言うと、レイが床を蹴り一人の男の頭を踵で蹴り落とす。悲鳴すら上げずに沈む姿に、周囲の男達は息を飲む。
喧嘩の申し子。戦闘の為だけに生まれてきた少年・レイ。
電光の様に翻り、次の相手の服を掴み投げ飛ばす。男の背中が床に叩き付けられる。
漸く我に返ったのか、男達が手にしたナイフが襲いかかる。チラリと視線を送り、それを交わし頭を掴み膝蹴りを顔に食らわす。
銃を構える男にラルフが動く。身に付けた体術で瞬間身を屈め、銃弾を交わし膝を男の腹に叩き込み、男が怯んだ隙に片足でそれを蹴り飛ばす。
見ればシェンも数名相手に立ち回り、次々と周囲を重い拳でねじ伏せていた。
「異能持ちは…」
レイがそう呟いた途端、火が周囲を渦巻く。肌が焼ける。
風が起きる。レイの周囲に。
火の手が、中心から消える。
階段の上から青年が見下ろしていた。
「そっちも異能持ちか」
うっすらと笑う男。
光がラルフから発する、視界を遮られた男は舌打ちをする。
「まだ居るのか」
「………生憎俺もだ」
シェンが床に手を付けると、家全体が揺れる。激しい程に。床に亀裂が入る。
「異能持ちが、三人か」
これは恐れ入るね
だが言葉とは裏腹に奥から、二人出て来るのを確認。
「ほらよっと」
壁から木の枝が伸び、レイ達の周囲を取り囲む。
「んなの効かねぇ」
レイの切り札、雷鳴が起き、枝を切り裂く。
「こいつ、二つ属性持ちかっ!!」
稀どころが、見た事は無い筈。
男達が怯む。
「少し力上げる」
捕まってろ、とのシェンの言葉に咄嗟に近くの柱にレイとラルフは掴む。
床が揺れる。亀裂は壁まで走り、パラパラと瓦礫が降ってくる。
持ち出される銃器、ラルフの光が一層眩しさを増し、男達の視界奥底を焼く。
「くそっ」
後に続くは一般人、異能持ちでは無くレイ達の身体能力と力だけで制圧。
全員を縛りあげ、レイが言い放つ。
「殺さなくていいのか」
「引き渡して牢に閉じ込めるだけさ」
物騒な物言いのレイにラルフは苦笑いを浮かべた。
「甘めぇ」
ラルフは思う、詳しくは聞かないし話そうともしないレイ。どんな生き方をしてきたのだろう、と。
多分人を殺す事にも慣れているのは感じ取れる。
もうそんな事はしなくていい。
そう言ってやりたい、だけど彼を縛りたくない。縛るのも出来ない、それがレイにはあった。
はぁ、と一息吐き、
「戻ろうか、用件は済んだ」
ラルフは二人に、そう告げた。
◇◇◇
「キミが守りたい物は分かるよレイ」
太陽はいつだってこちらを見ている。金の髪を風が揺らす。
「でも今は仲間だ、キミの事も俺は守る」
「はぁ?俺は守られんのは御免だ」
「レイが強いのは知ってるよ、守りたいのはキミの背中…俺に任せて欲しいんだ」
「………俺は一人で戦える」
うん、そうだねとラルフは笑う。
「相棒になりたいんだキミと」
その言葉はレイの胸の中にこだまする。ラルフは強い、自分と肩を並べる程に。
そしてレイも持つ、人を惹きつける物も持つ。周囲が勝手に集まってくる何か。
「………ったく」
最初に根負けしたのはレイ、頭をボリボリ掻きながら。シェンが珍しく微笑む。
「分かったぜ、お前に預けてやらぁ」
「決まりだね…宜しく相棒」
一層深まるラルフの笑顔が、レイに向けられた。
◇◇◇
所と時は代わり、少し前に遡る。
「異変は無かったのですか?」
周囲の見廻りから帰った少年に、イシュリーンが尋ねる。
「今の所は無いね」
そうですか、とイシュリーンが頷いた時。一人屋内に駆け込んでくる。
「襲撃だっ取り囲まれてる!」
「さっきはいなかったぞっ」
すくっと、四人が立ち上がる。レイに後を任せると言われた。ドウーエ、トレとノイン、イシュリーンに闘気が漲る。周囲にいたラルフの仲間達が息を飲む。
「行きましょうか」
イシュリーンの言葉が口火を切る。途端走り出す四人。
「待ってくれっ俺達も!」
「邪魔です」
イシュリーンがそう言い放つ。その迫力に皆動く事さえ叶わなかった。
外に躍り出ると、囲む敵は多数。鉄や木の棒、瓦礫を持つ面々。
「随分と物騒ですねぇ」
言葉とは裏腹に残忍な笑みを浮かべるイシュリーン、そして身構えるドウーエ、トレとノイン。
「やれ」
向こうの合図が初まりの合図。
襲いかかる相手の腹を蹴り一発でイシュリーンは落とす。続けてノインが身体を抱え込んでくる敵の頭を両手を組み叩きのめす。トレとノインは双子らしく連係を取り、二人を相手取り攻撃を交わしながら、蹴りと拳を振るう。そしてドウーエはくるりと相手の勢いを利用し片手で回転、落ちてきた所を蹴り飛ばす。
流れる様な動作、屋内から覗く仲間達は黙った儘それを見つめていた。
噂には聞いていた。レイを筆頭にするこの五人、今は四人か。持っている筈の異能さえ使わずとも、強過ぎる少人数グループ。次々と相手集団の立っている数が減っていく。武器を持っていても五人には敵わない。
最大火力を持つ少年達は、呻き倒れる連中の中心に立っていた。
「これに懲りたら、もうここには近付かないで下さいね?」
次は
「命、貰います」
残忍な笑みを浮かべ、イシュリーンが身を屈め倒れ込んでる一人を覗き込む。
ひいっと青年の股の間に染みが滲む。人外めいた美貌の持ち主の殺気は青年達の恐怖を刺激する。それ所か、他のメンバーも殺気と闘気を宿している。
バラバラと逃げていく集団に、屋内から歓声が上がる。
「アンタ達凄いな」
「大人が敵わないって」
口々に言葉が掛けられる。が、
「レイなら一人であれ位沈められます」
「だね」
イシュリーンの声にドウーエが返す。
二人の言葉にトレとノインも頷く。
自分達の代表・ラルフとやり合ったレイの姿を目撃した仲間達は納得する。この四人より強い少年レイ。
「今頃、どこにいるのかなぁ」
仲間の一人が、そう呟いた。
◇◇◇
「もうすぐ町に着くね」
大きく伸びをするラルフ。
「そうだな」
レイが応える。三人の背には伯爵から渡された食料と物質。ちゃっかりとラルフが要求したそれは結構重い。
「帰りは無事に済みそうだね」
ご機嫌な口調の割に、ラルフは周囲への警戒は怠らない。それはレイとシェンも同じで。
いつどこで襲撃に合うか分からない。それ程に緊迫しているのだ。この世の中は。
今もどこかで血が流れ、命が消えている。
「まあ、この三人なら簡単には負けないけど…頼りにしてるよ、二人共」
「どの口が言うか」
レイが呆れた様に口を開く。自分と匹敵する力の持ち主のクセに、と。
「ほら、見えてきた」
ラルフの言葉に前方を目を細め、レイは眺める。懐かしい、とさえ感じる。離れていたのは数週間位だと言うのに。
四人には信頼している。何があっても無事な筈だ、とレイは考える。
アイツらは強い、異能を使わなくても。
「戻ろう、仲間達の元にさ」
三人は歩みを進めた。
◇◇◇
「お帰りなさい、三人共」
応、と出迎えたイシュリーンに応える。次々と集まってくる自分の仲間やラルフのグループ。
ドウーエがレイに抱き着いてくる。それを引っ剥がし、不満気な彼の頭を撫でると、途端ご満悦そうな表情に変わる。
ノインとトレも口々に。
「レイ、お帰り」
「……お帰り…レイ」
「ああ、留守中何も無ぇか?」
「襲撃が一度ありました」
イシュリーンが双子の代わりに、そう言う。
「お前らなら片付けられんだろ」
「楽勝だよ」
ドウーエが答える。頷くレイ。
「流石だね」
「こいつらがそこらの連中に負ける事はねぇ」
ラルフの言葉にレイが返す。それ程に強いのだ、残した四人は。
恐らくは異能すら使わずに。
「そうだね、まあ先ずは荷物運ぼうか…皆食料あるよ」
ラルフの声に歓声が上がる。
「レイ、シェン手伝ってくれるかい?」
「背中に背負ってんだ、やるしかねぇだろ」
シェンは無言で頷く。
そうして、食料と物資は根城にしている廃屋内へと運び込まれた。
配られたパンを齧りながら、レイが言う。
「学校作る、ってたなラルフ」
「うん」
「どこに作るんだ?」
そうだね、とラルフは少し考え立ち上がる。釣られてレイが視線を上げる。
「ちょっと待ってて」
奥の部屋へと、姿を移し。少し経つとラルフが戻る。手には一枚の紙。それを広げる。
そこに描かれていたのは簡易的な地図。
「……どこで手に入れた?」
「俺が描いたよ、自分の足で調べた」
「暇か」
レイのツッコミに笑うラルフ。
「ここが現在地、で周辺…高台がある、自然に出来た所」
そこに
「城を作る、城下町に学校と住居だね」
「……国興すってマジ話か」
「冗談は言わないよ俺」
前に聞いた、王の器が俺にはあると。
だが。
「俺は王にはならねぇ」
ラルフ
「お前の方が適任だろ」
ラルフにはカリスマ性がある。人を惹きつけて止まない性質。
「王はキミだ、レイ」
「やだね、面倒事は嫌いだ」
はあ、と溜息を吐くラルフ。短い付き合いだが、レイは一度言い出したら聞かない。それは嫌と言う程痛感している。
「仕方ない、俺がやるよ…だけどもし俺に何かあったら」
レイ、キミが
「俺を引き継いでくれ」
親友、と呼ばれレイは驚く。ガシガシと頭を掻きレイは答える。
「親友って、お前ねぇ」
「少なくとも俺はレイの事、そう思っているよ」
屈託の無い笑顔。多分俺も気を許し始めている、こいつに。レイはそう思う。
「面白れぇ、だったら俺もそう呼ぶ」
握り締めた拳と拳、レイのそれとラルフのそれが。
コツンと合わさった。
◇◇◇
伯爵からの援助が届き、ラルフが示した場所高台に急ピッチで城が建設されていく。
「早ぇえな」
「そうだね、俺の想像より早かった」
レイとラルフは建設中の城壁を眺めていた。
「で、住人は?」
「来る人は拒まない、それが盗賊だろうと」
「荒れんぞ」
「俺達も似たようなものだろう?レイ」
だな、とレイは返す。
ラルフには自信があるのだろう。覚悟がある。
レイは珍しく夢を馳せる。自分達の国、飢え苦しむ事が無いそれに。
だが、奪いに来るヤツらはいる。
守る、それが増えるだけだ。
守り抜く、レイは身体に力が漲るのを感じる。
「レイ、一度帰ろう」
ラルフの言葉にレイは頷いた。
「どうだった?」
「楽しみだなぁ」
ラルフの仲間達が口々に言葉を発する。
「着々と進んでいるよ、皆楽しみにしていて」
ラルフの言葉に歓声が上がる。飛び上がる子もいる。
それらを眺め、レイは思う。
守る物が増えた。右手、掌を広げ握り締める。
「レイ?」
ラルフの言葉に顔を上げ
「んでもねぇ」
そう答える。
「ラルフ様っ、城に族が攻め入ってきましたっ」
建設に携わった者が数名、廃屋に飛び込んでくる。
立ち上がる五人、レイ、イシュリーン、ドウーエ、トレとノイン。ラルフとシェンも続く。
異能持ちが闘気を纏う。
それを見た周囲が息を飲む。
「行くぞ」
「ああ」
レイとラルフの言葉を皮切りに、七人は駆け出した。
建設中の城壁の一部が破壊されていた。見れば相手は大人数。銃器も手にしている。
「派手にやってくれたなぁ」
レイの挑発が飛ぶ。無言の儘敵側が攻撃を仕掛ける。飛ぶ弾丸、それを避け
「手加減は無用だ、お前ら好きにやれ」
四人は一斉に異能を使う。イシュリーンは闇を繰り出し男達を飲み込む。ドウーエは水の渦で数名を取り囲む、息が出来なくもがく男数名。ノインが重量を扱う、男達は地面に倒れ込む。トレは炎の渦を巻き起こし、敵を焼き尽くす。
そして響き渡るレイの風と雷鳴。それは敵側を沈黙させるには十分過ぎる程だった。
「俺達の出番無かったねぇ」
「………あいつらが本気出したらこうなるのか」
ラルフとシェンは少し離れた場所で会話していた。
噂には聞いていたし、調べは着いていた。
だけど、これ程とは。
ラルフは感心する。
この中にレイは立つのか、異能と身体能力を持つ四人が認めたリーダー。
本当に王の器を持っている。君なら周囲を纏め上げられるのに。
興味が無い、それだけで切り捨てる。
頑として動かないレイにラルフは溜息一つ吐いた。
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