盗賊達の国興し

扇 朔弥

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行く末は夢の果てに

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「どれ位あるんだ?」
その町は

「まだ遠いね、数日はかかる」

 戦火に焼かれた町を幾つも抜けてきた。徒歩ではかなりかかるだろうと、覚悟はしていたが。

「数日、ねぇ」
「ボヤいていても始まらない」
「分かってる、てーの」

 嗜めるシェンの言葉にレイは返す。
 面倒くさい、ただそれだけに尽きる。レイは存外せっかちでもある。気紛れで気儘、気さくでもあったが。
 同じく、人懐っこい性質であるラルフが。

「まあまあ、レイごめんな。付き合わせて」
「今更、俺を連れて行くつーたのはお前だ」

 ラルフ、と名前をレイは呼ぶ。

「そうだね、キミの力が必要だ」
「つーて俺には異能と力しかねぇぞ、何が必要なんだ?何したらいい」
「それが重要、取引材料になる」
「ラルフ、お前だって持ってる。シェンだって」

 足りない、それだけじゃ。ラルフは頭を振る。

「レイ、まだキミの能力は伸びる。多分俺も追いつけない」

 は?とレイは返す

「感じるんだ、キミの潜在しているのは計り知れないって事をさ」
「何で分かる」
「単なる勘だけど…結構当たるんだよ」

 これ、とラルフは自分の頭を指指す。

「勘、ねぇ」

 会話しながらも三人は歩みを止めない。まだ昼間だ、警戒は怠らない。どこに何が潜んでるか分からない。
 たった三人、だけど多分誰にも負けない。自信もある、それは確証に近い。

「おや、珍しい」

 早速お出ましか、と瞬時三人の警戒が高まる。

「ここ、通るなら挨拶位して行けって話だ」
「挨拶ですか?」

 言葉通りでは無い筈。承知していながらラルフが明るい口調で返すのをレイは眺める。

「置いて行け、全部。そしたら見逃してやるぜ?」

 ほら見た事か。数少い物質、追い剥ぎ、いや寧ろ好戦的なソレ。

「困りました、無理な相談ですよ…それは」

 ラルフの言葉を合図に瓦礫の間から、男ら数名いや十数人が姿を現す。
 手にしているのは、鉄や木の棒。素手は居ない。だが負ける気はしない。
 ぼきり、と拳を鳴らし

「かかって来やがれ」

 レイが手招きする。
 
「叩きのめせ、殺してもかまわねぇ!」

 相手が吠える、仲間が同時に動く。

「話し合いで片付けようかと思ったんだけど」
「通じるか、んなもん」

 自分より年長者から襲いかかる鉄を身をよぎり避け、その背中を蹴り飛ばし、レイがラルフの言葉に返す。

「キミは好戦的だね」
「わりぃか」
「いや、ちっとも…それがキミだ」

 分かった風な口聞くな、とは言わず。目の前の敵からは目を逸らさずレイが拳を振るう。
 殴り飛ばされる相手。まるで風の渦の様に、中心にはレイの姿。

 向かってくる相手をいなし、投げ飛ばしながらラルフはチラリとレイの姿を見て感心する。
 あれがまだまだ強くなる。ラルフの勘が確信に変わる。
 シェンもまた身に付けた体術で敵を沈めて行く、一発一発の拳の重みが違う。

「こいつら!ただの子どもじゃねぇ?!」

 相手のリーダー格らしい男の声が上がる。

「舐めんな」

 あと数は数名程。
 レイが敵を地面に叩き付ける。

「全員で向え!!」

 男の命令と共に三人に一斉に、連中が飛びかかる。
 途端、渦巻く風。
 小石が巻き上がり、男達のむき出しの肌を切り裂く。

「俺達の出番は無さそうだ」
「………レイならあれ位、いやそれ以上でも余りある」

 俺がそうした、とシェンがそう呟く。ラルフも分かってると返す。

「流石、俺が見込んだ人だ」

 ラルフ達二人は風を見守る。悲鳴が上がる、野太い声。

「こいつ異能持ちだ!かなわねぇって!!」

 まだ動かない、リーダー格の男。いや動けないでいた。

「っしょう!」

 ぎり、と歯を噛みしめる音がこちらまで聞こえる様で。
 風が止む、立っているのはレイただ一人。切り札を使わずにここまでやるとは、ラルフは称賛の言葉を掛ける。

「お見事、お疲れ様レイ」
「まだ残ってやがる」
「戦意喪失しているよ?」
「仕掛けてきたのは向こうだ」

 レイの纏う殺気は治まらない。治める気すら無いのだろう。
 地を蹴り、リーダー格の近くに降り立つレイ。ひぃ、と悲鳴を上げ地面に崩れ落ちる男。多分腰を抜かしているのだろうそれに。襟元を掴み、片手を振り上げるレイのソレを。いつの間に寄ってきたのだろうラルフが止める。

「終わりだ、レイ」
「止めんな、こう言う奴等には身体に教え込まねぇと分からねぇ」
「駄目だ、キミだけは」
「ああ?俺に命令するな!」
「キミは王になるんだ」
その器が
「レイ、キミにはある」

 既に一部、住み着いた町では呼ばれている。

「んなもん、知るか」
「レイ」

 静かに掛けられる言葉に力を感じ、レイは仕方ないと男を解放した。

「ありがとう」
「お前の言う事に従った訳じゃねぇ」
「分かっているよ、キミは自由だ」

 ふん、と鼻を鳴らしレイは掌をパンと払う。

「命拾いしたな」

 本来の自分なら奪った。向こうもそのつもりだった、なら容赦はしない。だけど。
 こいつは、違う。
 場にそぐわずケラケラ笑うラルフに半ば呆れながらレイは「行くぞ」と声を掛けた。
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