盗賊達の国興し

扇 朔弥

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果てしない夢の欠片

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「で、最初は何からやる?」

 ラルフ、と振り向きもせずにレイが名前を呼ぶ。

「南にまだ貴族が残っている、比較的裕福な町だよ」
「噂には聞いた事あるなソレ」

 傭兵を雇い、守られてる町
 食料も物資も蓄えがあると聞く。

「襲うのか、そいつらを」

 武器を持つ相手に。幾ら異能を持っている自分達でも攻略は難航。武力の差が有りすぎる、人数だって桁違いだ。

「まさか、そこまではしないよ…当てがあるって言っただろう?遠い親族がいるんだ、あの町にね…話をしに行くだけさ」
「出来んのか?町に入るってだけでも苦労するって話らしいが」
「そこはそれ、抜け道と言うものがある…元とは言え俺も貴族の名を持つからね」

 漸くラルフの方を向く、レイ。

「使えるものは何だって使う、それが俺自身だろうと」
「なかなかどうして…お前も大概曲者って訳か」

 レイの口元に笑みが浮かぶ。

「手段は限られているからね、俺の使える手なら幾らでも使うよ…仲間達や他の人を助ける為なら、勿論キミ達も入ってる、仲間だ」
「お人好しって言うんだぜ?そう言うの」
「まぁ良く言われる」
「………いつ動く?」
「早くて明後日には立つつもり、レイ…キミにも同行して欲しい」

 俺に?レイは訝しんだ。

「俺には話し合い、向かねぇぞ」
「力が必要なんだ、向こうに話をつける為の切り札がね」

 視線を自分の掌に落とす、レイが持つ異能と力。
 この辺りで噂になる程に異能と力を持つ五人の、頂点に立つ事を実力だけで勝ち取った少年。

「役に立つのか、俺が?」
「十分過ぎる、行くのはレイと俺…そしてシェンの三人」

 他の四人にはここの護衛を頼みたい、とのラルフの言葉にイシュリーン達が一斉に立ち上がる。

「理由は分かりました、ですが」

 仲間になる事は承諾した。だが、今だ五人のリーダーはレイだ、その彼だけが引き離される、その事実は納得出来ないのだろう、感情が許さない。

「俺は行くぜ」

 だが、レイは静かにそう言い放つ。
 言葉には力があった。四人は静かになる、彼にそれ程信頼を寄せているのだ。

「仕方ありませんねぇ」
「レイの言葉なら」

 双子も頷く、場は決まった。

「納得してくれて、ありがとう。準備と言っても左程無いのだけどね、早速取り掛かろう」
「お前アレでいいのか?」
「うん、だってキミが五人のリーダーってのは変わらない。仲間になってもね」
「本当お貴族様ってヤツは理解できねぇ」
「ははは、俺は一族の中では変わり者って言われててね」
「だろうな、つーても会うのはお前が初めてでね」

 レイは後ろ頭を掻いた。産まれ落ちて、少しの間しか家族とは一緒に居た、筈。だがそれすらも既に朧げ、記憶にすら残っていない。あるのは共に生き延びてきた仲間だけ、家族と言えるのはヤツらだけだ、とレイは考える。
 口には出さない出した事も、あくまでも守る。それだけだ。一度出した言葉は命を掛けても守る、死ぬつもりは無い。

「だろうね、今の貴族は基本身分違いとは会わない…悲しい事だけれど」

 矜持、とラルフは言った。呪いだ、とも。もうそれすらも残らない現状だ。奪い合う日常、命すら軽い。それこそ道端に落ちている石ころみたいに誰も気にすら止めない。俺達だってそうだ、とレイは考えてる。

 それを救い上げる、とラルフは言う。前をしっかりと見据えて。軽い口調の筈なのに、人を惹きつけるそれには力がある。多分俺も惹きつけられた、レイは思う。
 こいつは違う、他の誰とも。
 気を許し始めている自分には気が付いている。

 だが、決して言わない。

「なら、準備だ」

 レイの言葉に、ラルフが頷く。

 そして、旅立ちの時。
 見送る新しい仲間達の中に四人もいる。

「行ってくる、後の事はお前らに任せる」
「承知しました、裸の王様」

 恐らく自分の代わりを引き受けたのだろう、何故かあれ以来行動を共にする、気紛れイシュリーンが返答する。俺に続く力の持ち主。
 なら安心して任せられる。

「応」と応え、行こうかと促すラルフと肩を並べた。
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