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しおりを挟む男物の服を着て髪をばっさり切りメリッサを失神させ、憂鬱な気分で学園へ向かう準備をした。
今回もアイナ・ユーメリーはいるのだろうか。いてもいなくても、もうアクセル達には関わりたくない。
仲良くしていた頃は大好きな人達だったが、前回の人生で嫌と言うほど彼らの視野の狭さを思い知ってしまった。思い込みであんなにも他人を傷つけられる人達には近寄りたくない。
今回は彼らには関わらないでおこう。
そう決意して家を出ようとした時、公爵家の馬車がやってきてルイゼルの前で停まった。
「ルイゼル!」
「カイン!」
馬車から降りてきたカインを見て、ルイゼルは目を丸くした。
「やっぱり、お前は覚えているんだな」
カインは少し安心したように息を吐いた。
「カインも覚えているんだね」
「ああ。つーか、思い出した。皆」
「皆?」
「中で話す。とりあえず乗れ」
カインは首を傾げるルイゼルを促した。
公爵家の馬車で送ってもらうと伝えて両親の度肝を抜いたルイゼルは、学園へ向かって走る馬車の中でカインから前回のことを聞いた。
「お前が魔獣の攻撃を受けた瞬間、全部思い出したんだ。俺も、アクセル達も」
「え?」
「最初から、全部だ。俺がアクセルの命を狙って魔獣を呼び出したことも、お前がアクセル達を救うために何度も何度もやり直していたことも」
カインが言うには、ルイゼルが魔獣の爪に切り裂かれた瞬間、それまでの何度も繰り返された生の記憶が蘇ったそうだ。
「アクセルの顔ったらなかったぞ。正直、ざまあみろって思ったわ」
カインはニヤリと笑った。
ルイゼルは眉を下げた。皆が思い出しただなんて、面倒くさいことになりそうだ。いっそこれまでと同じように何も覚えてくれていない方が、関わらずに済んでよかったかもしれないのに。
「あ。そうだ、前回の魔獣はどうして乱入してきたの?」
カインは前回、召還を行わなかったはずだ。彼はずっとルイゼルのそばにいた。
「ああ。あれは、あの女の仕業だった。アクセルにベタベタしてたアホ女」
「アイナ・ユーメリー?」
ルイゼルは目を丸くした。何故、彼女が魔獣を召還したのか、動機がわからない。
「俺を狙っていたらしいぞ」
「え?」
「俺だけがあの女を信じていなかったからな。俺が死ねばお前が孤立する。死ななくても、お前が魔獣を召還したと罪を擦り付ければ、俺がお前を見限ると思ったんだろ」
「なんで、そこまで……」
そこまで恨まれる心当たりがまったくない。ルイゼルは絶句した。
アイナ・ユーメリーが今回もいるとしたら、また彼女の攻撃を受けなくてはならない。正直、もう御免だ。関わりたくない。
「まあ、またあのアホ女に何かされたら俺のところに来いよ。俺達は友達だからな」
カインの言葉に、ルイゼルは感動して頷いた。前回はカインがいなかったら辛すぎて耐えられなかった。カインがいてくれてよかった。
そう思った時、学園に到着して馬車が停まった。
「ルイゼルっ!!」
馬車から降りるなり、聞きたくない声が聞こえてきて、ルイゼルは眉をしかめた。
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