道産子令嬢は雪かき中 〜ヒロインに構っている暇がありません〜

荒瀬ヤヒロ

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87、心を開いて踏み出そう




 攻略対象達を毛嫌いせずにきちんと向き合うと決めたものの、いきなり「仲良くしましょう」と言ってすり寄っていくわけにもいかない。
 それに第一、もうすぐ学期末、テストがあるのだ。

 リリーナのことは気になるが、公爵令嬢として、将来は侯爵夫人になる身として、成績を落とすわけにはいかない。
 勉強をしつつ皆と仲良くなって情報を集める。なんて、器用な真似が私に出来るとは思えない。

 どうしたもんかな、と思いつつ廊下を歩いていると、明るい笑い声が響いた。

 通り過ぎざまにちらりと覗くと、ニチカが教室でなにやら楽しそうに新潟くんの背中を叩いているのが見えた。彼らの周りにはクラスメイトが集まって笑い転げている。

 その姿はまさにヒロイン。

 貴族令嬢にはない魅力を振りまいているニチカは、Bクラスの中で人気者のようだ。攻略対象の前でゲームのヒロインを真似るのをやめて、素で振る舞う今の方がよっぽどヒロインらしい。

 もしかしたら、彼女の方が私よりも早く、この世界の人々がゲーム通りではないと気づいたのかもしれない。少なくとも、私よりも友達が多そうだ。

 クラスメイトの前で大口を開けて笑うニチカは無防備で開けっぴろげだ。私ももっと、この世界に対して心を開くべきなのかもしれない。
 アホの子ヒロインだと思っていたニチカに、教えられたような気がする。

 よし。私ももっと皆を信頼して、友達を作ろう。
 そのためには……

「ねえ、ティアナ、ルイス。相談があるのだけれど」

 明くる日、監督室での会議を終えた後で、私はティアナとルイスに持ちかけた。

「なぁに?」
「テストが近いでしょ。だから、皆で勉強会をしないかと思って」

 私が言うと、ティアナは二つ返事で了承してくれた。

「もちろん、いいわよ」
「あの、それでね……私達だけじゃなくて、他の人達も参加してもらえたらなって」
「じゃあ、私はエリシアやチェルシーに声をかけてみるわ。ルイスはデイビッドを連れてくるでしょ」
「ああ」
「あー……もちろん、それはいいんだけど……えっと、その、あんまり成績がよくない子達が、気軽に参加できるような感じにしたいのよ」

 私が言うと、ティアナは目を丸くして、ルイスは怪訝な顔をした。

「それって、私達が教えるってこと?」
「なんのために? 落ちこぼれなんか放っておけばいいだろ」

 ルイスの言うことは一理ある。成績は自己責任だ。
 だけど。

「私はこれまで、自分の成績を維持することしか考えていなかったわ。でも、一生徒としての私はそれでよくても、監督生としての私は学年全体の成績を考えなくてはならないんじゃないかと思ったの。もしも、一年生から成績不良で退学するような生徒が出たりしたら、監督生としての私の恥となるわ」

 私がそう訴えると、ティアナとルイスは顔を見合わせた。



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