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88、勉強会
しおりを挟む「それは、わからなくはないが……」
ルイスがむう、と頬を膨らませた。そこへ、口を挟んだ者がいた。
「素晴らしい考えだと思う」
アルベルトだった。いつの間にか、二、三年生の監督生達がこちらに注目していた。
「生徒の学力を引き上げるのは、将来的にこの国にとって利となる。俺はレイシール嬢に協力したいよ」
アルベルトはそう言うと、「ふむ」と唸って監督室を見回した。
「こういうのはどうだ? 週に二日だけ、放課後は監督室を開けておいて、誰でも質問に来ていいようにする。その日は監督生の誰かが必ずいるようにしよう。もちろん、無理はしなくていい。でも、俺は出来るだけ協力しようと思う」
アルベルトが提案すると、ルイスも不承不承頷いた。
私はほっと胸を撫で下ろした。
「ありがとうございます。ルイス、ありがとう」
「はあ……物好きだな」
ルイスには呆れられてしまった。
アルベルトは早速教師に許可を取ってくれて、テスト前の監督室の解放は決定された。
言い出しっぺの私は解放日には必ず監督室で勉強するようにした。ティアナは用事のない限り付き合ってくれたし、ルイスもデイビッドを連れて顔を出してくれた。三年生はさすがに忙しいようで、いないことの方が多かったが、二年生はちょくちょく参加してくれた。クシマフ先生はじめ教師方も頻繁に顔を出して生徒の質問に答えてくれた。
生徒達も最初は監督室に近寄りがたかったようだが、監督生が友達に声をかけて誰でも来ていいと示したおかげで徐々に足を踏み入れてくれるようになった。
テストの日まで、ほんの数回の勉強会だったが、これまで話したこともなかった他クラスや他学年の方とも知り合いになれて、私は概ね満足だった。
そして、ある解放日、偶然ガウェインと二人きりになった時間があった。
私は思い切って、話を切り出した。
「あの、リリーナ樣はガウェイン樣の従姉妹でいらっしゃいますよね?」
無言でノートに向かっていたガウェインは、リリーナの名を聞くとばっと顔を上げた。
「何かされたのか?」
「え……え? いえ……」
誤魔化すと、ガウェインは顔を曇らせた。
「あいつには関わるな。向こうから何かしようとしてきたら、必ず俺に言え」
階段からは突き落とされたのだが、でもあれは「書き換えられ」てなかったことになっているので、黙っておくことにした。
「夜会でご一緒でしたから、仲がよろしいのかと……」
「西の公爵家として、身内としての責任で一緒にいただけだ」
ガウェインの態度ははっきりと拒絶を示していた。
これは……何か、あったんだろうな。
でも、ガウェインから無理矢理聞き出すのはやめた方がよさそうだ。レオナルドに聞けば、何かわかるだろうか。
それとも、私は首を突っ込まない方がいいのだろうか。
迷っているうちに、ガウェインは勉強道具を畳んで出て行ってしまった。
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