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第80話 コリンの変化
しおりを挟む休み時間に話しかけてきた第一ポテトサラダ殿下に活性炭をぶつけていると、コリンがふらっとやってきた。
「コリン。入学おめでとう」
あんまり関わりたくないが、従姉として「おめでとう」ぐらいは言っておかねばなるまい。私は精一杯の笑顔を浮かべた。
「うん。ありがとう」
「それで、どうしてわざわざ二年の教室に? なにかご用?」
尋ねると、コリンはむすっとした表情でふっと短く息を吐いた。
しばらく見ない間に、なんか印象が変わったわね?
コリンは愛らしい容姿にふさわしく常ににこにこしていて、周囲から「天使みたい」と可愛がられていたはずで、人前でこんなやさぐれた表情を見せることはなかったんだけど。
「別に、用はないけど、ステラに会っておかないと母上がうるさいんだよ」
ああ。なるほど。
きっと、コリンも伯母様に言われているのね。学園に行ったら私の機嫌をとれとかなんとか。
「じゃあ、それだけだから」
コリンはあっさりときびすを返そうとする。私に対する態度が変わり過ぎなんだけど。
いきなり塩対応になった従弟に戸惑っていると、廊下の向こうからエリーナがやってきた。
「エリ……」
「エリーナ、なんでここに?」
私が声をかけるより先に、コリンがエリーナに歩み寄った。
「ステラ様にご挨拶に参ったのですわ。我が家はグリーンヒル家と親戚ですから」
「ああ。そうだったね」
エリーナは目を丸くする私のそばまで来ると、そっと耳打ちしてきた。
「少し前に、偶然のふりして知り合ったのです。お友達になりました」
「え、どうして……」
今回はまだエリーナはコリンの婚約者になっていないはずだ。それなのに、エリーナの方からコリンに近づいたの? なんのために?
「前回のコリン様を見ていて少し気づいたことがありまして、同じようにならないよう働きかけてみようかと」
エリーナはそう言っていたずらっ子のように微笑んだ。
「なに話してるんだ?」
「なんでもありませんわ、コリン様。一年の教室に戻りましょう」
コリンの背中を押すようにして去っていくエリーナを見送って、私は目をぱちぱちさせた。
前回のコリンと同じにならないように、わざわざ関わりを持とうとするだなんて、フアナといいイベリスといい、なんて慈愛深いのかしら。
私も第一粉ふきいも殿下にもっと優しくするべきかしら。
「ステラ! 今日も活性炭をありがとう。これでまた世界に蔓延る悪しき存在と戦うことができるよ」
私の投げつけた活性炭を拾い集めて何故か満足げな顔をする第一煮っ転がし殿下を眺めて、私は溜め息を吐いた。
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