助けてなんて言ってません!余計なお世話です!

荒瀬ヤヒロ

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「うふふふ~」

 私はセラフィーヌ。
 子爵家の次女です。

「やーね。セラフィーヌったら、いつまでもニヤニヤしちゃって」

 呆れたお姉様に軽く頬をつねられてしまいましたが、それくらいで私の幸せ気分は壊れないのです!

 私がどうしてこんなにも幸せなのかといいますと、つい先日、大好きな彼との間に正式に婚約を交わしたのです!

 私の彼は我が家の領地で広大な葡萄畑を有するワイン農家の長男です。
 私は幼い頃から領地へ帰る度に彼と遊んだものでした。
 次女とはいえ子爵家の令嬢である私と、葡萄栽培とワイン製造で裕福とはいえ農家の彼とでは身分が違います。
 しかし、幸いにも私には優秀なお兄様とお姉様がいらっしゃり、お二方がそれぞれ格上のお家と縁づいたため、私の結婚については自由にしていいことになったのです。

 といいますか、まずお兄様の婚約者はお兄様にベタ惚れの侯爵令嬢でございます。向こうからのアプローチがすごかったですわ。
 高潔と名高い侯爵様が「娘が恋に狂ってしまい申し訳ない」と謝罪にきたほどでした。お父様が腰を抜かしてましたわ。
 お兄様のことを大好きすぎて偶に暴走することさえ除けば、美しく教養もおありになって素晴らしいお方なのですけれど。

 お姉様のお相手はなんと、辺境伯様の御嫡男でいらっしゃいます。
 私のお姉様は私と違ってたおやかで思わず守って差し上げたくなる麗しい容姿なのですが、中身は非常にしっかり者で時にはお父様やお兄様をも口で言い負かしてしまうほどですの。
 そんなはっきりしたお姉様の気性に惚れ込んだ辺境伯様の御嫡男がお姉様を口説き落としたのですわ。お父様が泡を吹いてましたわ。

 そんな訳で、「これ以上、有力貴族と縁続きになったら逆にヤバい」と震え上がった小心者のお父様から、「お前は子爵以下と結婚してくれ~」と拝まれたのです。ええ。家同士のバランスとかありますものね。

 だったら貴族でなくてもいいですか? と交渉してみたところ、あっさりとお許しが出ましたわ。
「昔からよく知っている信用のおける相手だし、娘が領地でのんびり暮らすなら心配せずにすむ」とのことで、私と彼は私のデビュタントの直前に婚約することになったのです。えへえへ。

 そして、本日は私のデビュタントの夜会です。

 私は学園を卒業したら貴族籍を抜けて彼と結婚しますので、社交の場に出るのは学園にいる間だけですから気楽ですわ。

「うふふふ~」
「もう! そんな締まりのない顔でデビュタントを迎えるつもり!」

 お姉様に叱られますが、どうしても顔がにやけてしまうんですの。うふふ。

「セラフィーヌ。浮かれるのは構いませんが、気をつけて。私やジョセフィーヌから離れてはいけませんよ」

 お母様がきりりとした顔つきでそうおっしゃいます。

「そうよ。もしも私達とはぐれてしまったら、デビュタントを迎えたご令嬢達で固まるか、人目の集まる位置に立っていなさい」

 お姉様も私に言い聞かせます。

 どうして、こんなにも警戒しているのか、そして、デビュタント直前に私が婚約を整えたのには理由があります。

 その理由とは、夜会の会場で間違いなくデビュタントを迎えた令嬢に張り切って突撃して行くであろう、あの御方でございます。


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