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しおりを挟む公爵邸の大広間の天井画は二百年前の天才画家によるもので、見上げているだけで圧倒されそうです。
公爵夫人は公爵様と共にいろいろな方とお話なさっていて、私の方へ来ようとはしていません。
考えてみれば、今夜の公爵夫人はホストなのですから、私に構っている暇はありませんわよね。
「今夜は大丈夫そうね」
お母様とお姉様もほっとした顔をされております。
私も安心して胸を撫で下ろしました。
その後も何事もなく、私は夜会を楽しむことが出来ました。
そして、夜会が始まって一時間ほど経った頃、ついに公爵夫人が私の元へ歩み寄って参りました。
「ご機嫌よう、セラフィーヌ嬢」
「お招きいただき光栄ですわ、ルドメール公爵夫人」
すぐさま私の家族が集まってきて私と公爵夫人の間に入ります。
「セラフィーヌ嬢。私ちょっと調べてみましたのよ」
公爵夫人はにこにこと笑みを絶やさず、私はなんだか嫌な予感が致しました。
「貴女の婚約させられたお相手、平民な上に農夫だなんて! あり得ませんわ! こんな非道を見過ごすわけには参りませんわ!」
公爵夫人の言葉に、私はムッとしました。
「でも、ご安心なさって。私がちゃんとセラフィーヌ嬢の幸せを用意しましたわ!」
「……それは、どういう意味ですかな?」
お父様がこめかみを引きつらせながら尋ねます。
「ええ。きちんと説明しますわ。どうぞ、こちらへ」
公爵夫人が夜会会場の外に設けられた休憩室へと私達を誘います。
ふと会場を見渡すと、いつの間にか公爵様の姿がありませんでした。
御嫡男様は婚約者様と共に他の貴族の方とお話しされていて、こちらに気づいていないご様子でした。
両親は少し逡巡した様子でしたが、私を一人にする訳ではないのだから大丈夫だろうと公爵夫人の後に従いました。
休憩室には他の方はいらっしゃいませんでした。公爵夫人は不敵な笑みを浮かべて私を見ます。
「実は、以前お知り合いになった隣国の伯爵へ、セラフィーヌ様の御事情をお伝えしたところ、たいそう同情してくださって。セラフィーヌ様をお助けしてくださるとおっしゃられております。セラフィーヌ様を第七夫人として迎えてくださいます! 明日にもお迎えがきますわ!」
公爵夫人の言葉に、私は目が点になりました。
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