助けてなんて言ってません!余計なお世話です!

荒瀬ヤヒロ

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「うひひ」

「お嬢様。先ほどからお顔が崩れっぱなしです」

 夜会の準備中、髪を結ってくれる侍女が呆れたように言いました。

 だって、仕方がないのです。
 私の髪には、ロッドに貰った髪飾りが輝いているんですもの!

 うふふ。うふふ。

「まったく。これから夜会だっていうのに、その緩みきった顔をどうにかしなさい」

 お姉様に苦言を呈されても顔が緩むのを止められませんわ。

 せっかくなのでロッドにドレス姿を見て貰いたかったのですけれど、私が準備をしている間にお仕事に出かけてしまったそうです。
 残念ですわ。

「セラフィーヌ。今夜はルドメール公爵家の夜会です。私達から離れてはいけませんよ」
「はい、お母様」

 そうなのです。今夜は公爵家の催す夜会なのです。
 出来れば欠席したいぐらいなのですが、侯爵家と縁を結ぶお兄様と辺境伯家へ嫁ぐお姉様はいろんな方に挨拶せねばなりません。お父様もお母様も格上の家と縁を結ぶ子供達のために社交を頑張らなくてはなりません。
 それに、我が家が欠席しては公爵夫人にどんな噂を広められるかわかりません。
 私が一人で夜会を欠席するのも、家に一人残す方が心配ということで、私も夜会に行かなくてはなりません。万一、公爵夫人が何かしてきたら、使用人達では止められない可能性がありますからね。

「お父様とお兄様も出来るだけ近くにいてくださるわ。何かあったら助けを求めるのよ」

 家族は皆、私を守ろうとしてくれますが、ここのところ疲れているようで心配です。
 早く、公爵夫人が諦めてくださいますように。
 私は髪飾りにそっと触れて祈りました。

 そうして、気合い十分で夜会に臨んだ私でしたが、公爵夫人は私に突撃せずに他のご令嬢に声をかけていました。
 最初は警戒していた家族も、公爵夫人が一向にこちらに興味をしめさないため徐々に警戒を解き始めた。

「諦めたのかしら?」

 お姉様が呟きます。そうだったら嬉しいのですけれど。

 しかし、それは甘い考えだったと、後に私は思い知るのでした。


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