助けてなんて言ってません!余計なお世話です!

荒瀬ヤヒロ

文字の大きさ
7 / 12

しおりを挟む



 私は公爵夫人という立場にあります。この国の公爵家の夫人として、いつも年若いご令嬢の幸せを祈っておりますのよ。

 ええ。女の幸せはなんといっても結婚相手で決まるものですわ。
 ですから、少しでも幸せになれるようにと、不幸な結婚で人生を台無しにする令嬢を救うために縁談を進めるのですけれど、どうしてか皆さんお断りになりますの。

 公爵家が世話した縁談を断るだなんてありえませんわ。

 どうしてこう、娘を道具のように嫁がせる心ない親が多いのでしょう。嘆かわしいことですわ。
 貴族は政略結婚が当たり前だなんて、古い時代の価値観ですわ。

 だけど、私は諦めません。私が諦めてしまっては、この国の貴族達の目を開かせる役目は誰がするのです?
 娘を不幸な結婚に追いやる親達にも、いつか私の正しさを認めさせねばなりません。
 彼らが良心を取り戻し、不幸な結婚から娘を救い出すというのであれば、私はいくらでも協力いたしますわ。
 それに、傷物になったご令嬢でもきちんと嫁ぎ先をみつけて差し上げます。
 それが私に与えられた役目ですわ。

 そんな私ですが、今回ばかりはほとほと呆れました。
 カロビス子爵夫妻は、兄には侯爵家、姉には辺境伯家との縁を結んでおきながら、妹のセラフィーヌ嬢は平民に嫁がせ家から追い出すつもりなのです。
 平民などと結婚したら、貴族籍から抜けることになります。
 おかわいそうなセラフィーヌ嬢。
 どうしてそのような血も涙もない真似が出来るのかしら。
 もしや、セラフィーヌ嬢は普段からカロビス子爵家で虐げられているのではないかしら。
 夜会の時にも夫人とジョセフィーヌ嬢がセラフィーヌ嬢を喋らせないようにしていましたわ。
 なんてことかしら。すぐにセラフィーヌ嬢を救わなくては。一刻の猶予もありませんわ。

 幸い、明日は我が公爵家が開く夜会です。
 明日こそはお気の毒なセラフィーヌ嬢を冷たい家族から救い出し、平民と結婚などというおぞましい未来に怯えている彼女を頼れる殿方に預けなくてはなりません。
 
 待っていてくださいな、セラフィーヌ嬢。
 私が貴女様を救って差し上げますわ。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

貴方の知る私はもういない

藍田ひびき
恋愛
「ローゼマリー。婚約を解消して欲しい」 ファインベルグ公爵令嬢ローゼマリーは、婚約者のヘンリック王子から婚約解消を言い渡される。 表向きはエルヴィラ・ボーデ子爵令嬢を愛してしまったからという理由だが、彼には別の目的があった。 ローゼマリーが承諾したことで速やかに婚約は解消されたが、事態はヘンリック王子の想定しない方向へと進んでいく――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

婚約者を交換しましょう!

しゃーりん
恋愛
公爵令息ランディの婚約者ローズはまだ14歳。 友人たちにローズの幼さを語って貶すところを聞いてしまった。 ならば婚約解消しましょう? 一緒に話を聞いていた姉と姉の婚約者、そして父の協力で婚約解消するお話です。

婚約破棄、別れた二人の結末

四季
恋愛
学園一優秀と言われていたエレナ・アイベルン。 その婚約者であったアソンダソン。 婚約していた二人だが、正式に結ばれることはなく、まったく別の道を歩むこととなる……。

みんながまるくおさまった

しゃーりん
恋愛
カレンは侯爵家の次女でもうすぐ婚約が結ばれるはずだった。 婚約者となるネイドを姉ナタリーに会わせなければ。 姉は侯爵家の跡継ぎで婚約者のアーサーもいる。 それなのに、姉はネイドに一目惚れをしてしまった。そしてネイドも。 もう好きにして。投げやりな気持ちで父が正しい判断をしてくれるのを期待した。 カレン、ナタリー、アーサー、ネイドがみんな満足する結果となったお話です。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

嘘の誓いは、あなたの隣で

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢ミッシェルは、公爵カルバンと穏やかに愛を育んでいた。 けれど聖女アリアの来訪をきっかけに、彼の心が揺らぎ始める。 噂、沈黙、そして冷たい背中。 そんな折、父の命で見合いをさせられた皇太子ルシアンは、 一目で彼女に惹かれ、静かに手を差し伸べる。 ――愛を信じたのは、誰だったのか。 カルバンが本当の想いに気づいた時には、 もうミッシェルは別の光のもとにいた。

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?

山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。

処理中です...