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第14話
しおりを挟むハリィメルに好意を抱いてもらうにはどうしたらいいのか。
一晩考えてみてもなにも思い浮かばなかった。なにせ、生まれてこのかた、女の子から好意を寄せられるのが当然だったからだ。これまでは、ロージスがなにもしなくとも女子の方から好意を抱いて寄ってきた。
顔と頭がよくて、公爵家という地位もある。たいていの女子はロージスと目が合うだけで胸をときめかせるはずだった。
(それなのに……)
教室を見回して、クラスメイトの女子達を眺める。入学してからこれまでに、クラスの女子の何人から告白されたり手紙をもらったか覚えていない。
おそらく、クラスの女子の中でロージスに少しも興味を持っていなかったのはハリィメルひとりだろう。
休み時間もずっと教科書に向かっていて、他の女子達が楽しそうにしていても顔を上げない。
(あのまま友達も作らずに、卒業まで過ごすつもりなのか)
もやもやした想いを抱えたロージスは、教室を出て廊下を無目的に歩いた。
すると、向かいから近づいてくる女子ふたりがちらちらと自分を見ているのに気づいた。
よくあることなので、いつものように何事もなく通り過ぎようとして、ふと顔を上げてすれ違いざまにふっと微笑んでみせた。
途端に、女子ふたりが頬を真っ赤に染め、立ち止まって硬直する。
「どうした? 俺になにか用か」
「ふぇっ……ひぇ……えっと」
「な、なんでもないです!」
尋ねかければ、女子ふたりは「きゃあ~」と黄色い悲鳴をあげて逃げていった。
笑いかければ頬を染める。
話しかければ舞い上がる。
これが普通の反応だ。
なのに、ハリィメルときたら笑いかけても話しかけても無反応だ。むしろ「迷惑だ」とでも言いたげな態度でロージスをあしらう。同じ教室にいても目すら合わない。
(これでは駄目だ。もっと好感度を上げるにはどうすればいいんだ)
うんうん考え込みながら階段の前を通りかかった時、昇ろうとしていた女生徒が足を滑らせたのか「きゃっ」と短い悲鳴と共に倒れ込んできた。ロージスはとっさに倒れかかった女生徒を支えて助け起こした。
「立てるか?」
「は……はいっ!」
女生徒は真っ赤になってあわあわと慌てだした。
お礼を言われてその場から立ち去ると、背後から「触れちゃった!」「カッコいい!」とはしゃぐ声が聞こえてきた。
そうそう。これが当たり前だ。偶然触れられただけで意識してしまうような――
(意識する、か……)
たとえば、さっきのがハリィメルだったらどうだったろう。階段から落ちたところを助けられれば、さしものハリィメルもいつもの突っ慳貪な態度はとれないだろう。慌てて礼を言うはずだ。顔を真っ赤にして。
(真っ赤に……)
あの澄ました顔が染まるのを想像して、ロージスはにんまりした。もしそうなったらおもしろい。溜飲が下がる。いままでのそっけない態度も許せそうだ。
(触れたら、意識するか。赤くなるか)
そうだ。何気なく、軽く肩を叩いたり手に触れたりして反応を見てみようか。
軽い接触を繰り返せば、ハリィメルもロージスを意識せずにはいられないはずだ。
(よし。あの堅物を誘惑してやろう)
秀麗な顔にあくどい笑みを浮かべて、ロージスはそう決意した。
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