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第38話
しおりを挟むロージスになにを言われたのか、ハリィメルはすぐには理解できなかった。
(カフェ? 男って――)
遅ればせながら脳が言われた内容を理解して、ハリィメルはぽかんと口を開けた。思い当たるのはひとつしかない。ジョナサンと会っていたことを言われているのだろう。
カフェで会っているところをロージスに見られたのか、あるいは誰かから伝え聞いたのかわからないが、「勉強が忙しい」という理由でロージスの誘いを断り続けたハリィメルが他の人間を優先したようで気に入らないのだろう。
「それは……えっと」
弁解しようとして、ハリィメルは口ごもった。
なんと説明すればいいだろう。あれは親に強制されたお見合い相手だと説明すればいいのか。
「彼は……」
何故か上手く言葉が出てこなかった。いつもと違うロージスの怒りのオーラに気圧されてしまったのかもしれない。目も合わせられなくて、床を見てしまう。
ハリィメルがしどろもどろになっていると、余計にロージスの苛立ちが増す気配がした。
すでに教室中がざわざわして、皆何事かとこちらを見ている。
騒ぎを聞きつけたのか、別クラスのダイアンとティオーナも戸口に現れたのが視界の端に見て取れた。
注目を浴びたことで余計に混乱したハリィメルは顔を上げられない。
うつむいてしまったハリィメルの頭の上で、ロージスが大きく舌打ちをした。
そして、彼はこう吐き捨てた。
「他の男と会うなんて……お前は俺と恋人同士なのにどういうつもりだ!?」
その言葉を聞いて、ハリィメルは頭の中が急速に冷えていくのを感じた。
(……なによ、それ)
なんでハリィメルが怒鳴られないといけないのか。なんでロージスが腹を立てているのか。関係ないくせに。ハリィメルのことなどどうでもいいくせに。
なんでハリィメルが一方的に責め立てられなきゃならないのか。
(私のことなんて、別に好きじゃないくせに……ただの嘘告のくせに)
ハリィメルはぎゅっと唇を噛みしめた。
頭と心がすーっと冷えていくと、今度は重たい塊のような怒りが腹の中にどっしりと居座った。
(もういい。こんな茶番、終わりにする)
ハリィメルは大きく深呼吸をすると、顔を上げてにっこり笑った。
「素晴らしいですね。コリッド公爵令息」
今や教室中の目が集まっていることなど、ハリィメルにはもうどうでもよかった。
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