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第42話 子爵令息ジム・テオジールの進言
しおりを挟む「侯爵の屋敷には人を送った。二人を乗せたという荷馬車も探させている」
学園内の警備を受け持つ警備部の中でも王族しか使えない一室で近衛兵に指示を出すアレンは、エリオット、ミリアと共に城下の地図を広げていた。
「荷を積んだ馬車が王都から出るには許可証がいる。王都からは出ていないはずだ。二人の人間を荷馬車で運び込み、隠せる場所となると、そんなに多くないだろう」
アレンはダークブロンドの前髪をかき上げて歯噛みした。
学園の中だからと油断していた。先代国王の時代から続く平和も危機感を薄れさせた。王太子の婚約者に影をつけておけばこうはならなかったのに。
「必ず二人とも無事に助け出す。ーーミリア嬢は家に帰って待っていてくれ」
「……はい。――あ、でも、ジムが……」
ミリアが言うには、御者と会った時ジムが一緒にいて、彼は校内にスカーレットが残っていないか見て回ってくれているという。
「では、ジム・テオジールをここへ」
アレンの指示に従って近衛兵が出ていく。
入れ違いに、侯爵邸に向かわせていた隊から連絡があった。
「エリザベートもスカーレット嬢も見つからなかった。侯爵も姿がなかったらしい」
エリオットは壁を殴りたくなる衝動を抑えて奥歯を噛みしめた。
その横で、ミリアがへたりと床に座り込んだ。緊張の糸が切れたらしい。
アレンはミリアを助け起こして椅子に座らせ、無言でエリオットの肩を叩いた。
「冷静にな」
「……ああ。だが、自分の無力さが嫌になる」
頭が鈍く痛んで、冷静に考えようとしても思考がまとまらない。スカーレットとエリザベートに何かあったらと思うと、腹の底から熱い怒りが湧き上がってきて自分の体が業火に包まれるような気がした。
冷静にならなければ。婚約者をさらわれたのはアレンも同じだ。いや、アレンの場合は長年共に過ごした婚約者であり、先頃ようやく想いを通じ合わせた相手をさらわれたのだ。自分以上に激昂していてもおかしくないとエリオットは思った。
「一度、侯爵邸からは人を引き上げさせて、街中の捜索に当たらせる。それで――」
「お待ちください……っ」
アレンの言葉を遮ったのは、戸口に現れたジムだった。
「もう一カ所、調べて欲しい場所があります!」
ミリアが弾かれたように椅子から立ち上がってジムの胸に飛び込んだ。
「ジム!お姉様がっ、お姉様がっ……」
「ああ。……殿下、実は、グンジャー侯爵が所有する別邸があります」
「なに?」
ジムの説明によると、グンジャー侯爵が愛人を連れ込むための小さな家が城下に存在するという。
「テオジール家がスカーレットの件で侯爵から圧力をかけられていた時に、対抗するための情報を探ったことがあるんです。その際に見つけた家なのですが、城から離れた西の街はずれにあります。赤い屋根の二階建ての家です」
「そうか。よし、エリオット!私はその家へ向かう」
「俺も行く!」
「わ、私もっ……」
ミリアついてこようとしたが、ジムが肩を抑えて引き留めた。
「殿下達に任せよう。スカーレットは強いから、きっと大丈夫だ」
ミリアはジムの顔をみつめて、ぼろぼろと涙を流して頷いた。
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