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第50話 男爵令嬢ミリア・バークスの来襲
しおりを挟む「という訳で、今日こそエリオットはスカーレット嬢に告白するらしい」
「はあ~……」
「まあ、エリオットが女嫌いと言い張るのは何か理由があるとは思っていましたが……」
まさか、幼いスカーレットに怪我をさせたトラウマから女性を遠ざけていたとは。でも、ある意味そのおかげでスカーレットと再会して婚約者になれたのだし、結果的には良かったのではないか。
朝の生徒会室でアレンとエリザベートから話を聞いたクラウスとガイも友のポンコツぶりに苦笑いを浮かべた。
「そう言えば、エリオットの奴、遅いですね」
「また徹夜で告白マニュアルでも作成してるんじゃねぇのか?目の下にクマ作ってちゃ色男が台無しになるぞ」
そんな風に軽口を叩き合って笑っている時だった。不意に強い殺気を感じたアレンは咄嗟に横に避けた。
どがんっ
派手な音を立てて、上から振ってきたミリアが生徒会役員達が囲んでいた机の上に着地した。書類が宙を舞う。
「ふーっ……アレン殿下……エリオット・フレイン様はどちらです?」
「ミ、ミリア嬢っ!?なんだ!?今度は何が目的だっ!」
エリザベートを背に庇い、アレンが問いただした。
「目的?そんなもの、こちらが聞きたいくらいですよ……いったいなんのおつもりです?」
「なんのことだ!?」
ミリアは据わった目でアレンを睨みつけている。さてはエリオットが何かやらかしたのかとアレンは舌を打った。
「ミリア嬢、落ち着け。エリオットは不器用だが、スカーレット嬢のことを大切に思っているのは間違いない。これまでずっと朴念仁だった故に失態を犯すこともあるやもしれぬが、長い目で見てやってくれないか?」
なんで王太子である自分が男爵令嬢にこんな弁解をしなくてはならないのか、アレンは複雑な気持ちになるが、相手はミリアだ。一手対応を間違えれば王太子といえど足下をすくわれかねない。
「長い目……長い目でなんて、見れる訳がないでしょう?早朝に我が家にやってきてお姉様を馬車に乗せていったから、てっきり迎えに来てくれて朝の学校でデートするのかと思いきや、お姉様がまだ登校してきてないって言うじゃありませんか!フレイン様もどこにもいない!どこです!お姉様をどこに連れて行ったんです!!」
「……なんだって?」
怒りに打ち震えるミリアに、アレンは動揺した。
エリオット。あのポンコツ野郎、いったい何をしでかした?
「クラウス、ガイ!すぐにエリオットの居所を探せ!」
「「はっ!」」
事態のやばさを悟ったのか、クラウスとガイも速やかに駆け出していく。
「ミリア嬢、今すぐ二人を探させるから、どうか怒りを静めてくれ」
生徒会室に取り残されたアレンとエリザベートは、怒れるミリアを宥めようとした。
その時、警備部に待機しているはずの近衛兵が一通の手紙を携えてアレンの元へ馳せ参じた。
「殿下。今し方警備部に届けられたのですが」
通常、警備部に王太子宛の手紙が届けられることなどない。持ってきた近衛兵も困惑気味であった。
「っ、エリオット?」
その手紙はエリオットからだった。
慌てて内容を確かめれば、そこには『スカーレットと一緒にバークス男爵に会いに行ってくる』と簡潔に記されていた。
「はあ?なんであのクソ親父にっ……」
ミリアは手紙を破り捨てかねない勢いで激昂した。
「私のおかあさんと結婚する時も一回顔を合わせただけで後は放置した男ですよ!?私とおかあさんが男爵家で暮らしはじめてから、お姉様に会いに来たことは一度もありません!そんな野郎に何の用ですか!」
ミリアはひとしきりぎゃあぎゃあ怒り狂った後で、荒い息を吐きながら低い声で笑い出した。
「はあはあ……お姉様に何かあったら……ふふ……ふふふ……私の前でお姉様を誘拐するだなんて……私も舐められたものね」
不穏な呟きを繰り返すミリアに、王太子とその婚約者は身を寄せ合い怯えながら、発見された後のエリオットの無事を祈った。
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