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最終話 男爵令嬢スカーレット・バークスの大変に厄介で迷惑な最愛の義妹
しおりを挟むすっかり大きくなった飢えた獣達が庭を走り回っている。最近では第三騎士団が出動する際に同行し、罪人の捕縛に協力しているらしい。
ロレイン公も相変わらず毎日通っては餌を与えているらしく、厳しく躾たい第三騎士団団長から「甘やかさないでいただきたい」と苦言が届いている。
「侍女達の目が厳しくてエリザベートと二人きりになれん……もうすぐ卒業だぞ?すぐに結婚だ。それなのに何故、逢瀬を邪魔されるんだ?なんかゴミを見るような目で見られるのも気になる……」
「侍女にセクハラでもしたんじゃねーの?」
「馬鹿言うな!エリザベート以外に手を出すか!」
「侍女達はエリザベート嬢のことが心配なのでしょう」
「だから、なんで心配されるんだ!?私は婚約者で、もうじき結婚するんだぞ!?」
アレンの愚痴を聞きながら、エリオットとガイ、クラウスは飢えた獣達と戯れるロレイン公を眺めていた。
別に好き好んでもふもふと戯れるオッサンを眺めているわけではない。
結婚式のドレスや会場の装飾を選ぶためにエリザベートは王妃に呼ばれていて、それにスカーレットも付き合わされているのだ。その間、男は邪魔だと慈悲もなく追い出されて所在ない男達が庭に集まっているだけだ。
「そういえば、ミリア嬢とジム・テオジールの婚約が成立したんだってな」
「おお、やったな!」
クラウスとガイが言う。エリオットは頷いた。
「スカーレット嬢は公爵家に嫁ぐのだから、男爵家はミリア嬢の婿が継ぐことになる。収まるところに収まったという感じだな」
まったくだ。
ミリアがジムに告白するまでに、スカーレットが活き活きと暗躍してそれにエリオットも付き合わされたのだが、照れて逃亡しようとするミリアをタックルで止めて関節技で縫い止めてその体勢のまま告白させたスカーレットの手腕には惚れ惚れしたものだ。見事の一言に尽きる。偶然それを見かけた第三騎士団団長に婚約者がスカウトされかけたのもいい思い出だ。
エリオットはふっと目をすがめた。
いつの間にか、もふもふ達と戯れるオッサンが二人に増えている。国王だ。おそらく彼も王妃に追い出されたのだろう。
そんな平和な風景を眺めていると、不意にその平穏を引き裂く声が響いた。
「何をしているのよ、この痴れ者がああぁぁっっ!!」
全員がそちらへ目をやると、ミリアにタックルをかますスカーレットの姿が目に入った。彼女達の傍にはエリザベートが座り込んでぷるぷる震えている。
「エリザベート!何をされた!?」
すかさず、アレンが飛んでいく。
「で、殿下……わたくし、わたくしは、汚れてしまいました!この上はもはや修道院に……」
「行かせないぞ!!ミリア嬢に何をされたんだ!?」
エリザベートを抱き締め、アレンはスカーレットに締め上げられているミリアを睨みつける。
「ふっ……私はただ、エリザベート様に王太子殿下との愛を深めるお手伝いを、と」
「王太子殿下の婚約者であられる公爵令嬢に卑猥な絵本を見せた言い訳がそれなの?」
「お姉さま、ギブギブギブ!お姉さまにも見せてあげますから!」
「黙りなさい。だいたい……」
その時、一陣の風が吹いて、ミリアが手にしていた紙の束が風に舞い上げられて辺りに散らばった。
「なんだ?……こ、これはっ!」
「あら?……きゃあっ!」
「んまー!」
「なんてこと!」
あちこちから悲鳴が上がる。
「誰がこのようなものを城に……まったく、けしからん!」
「破廉恥よ!王妃様の目に触れないように隠さねば……」
「あらあら、私の秘蔵の品なのに、皆様がそそくさと懐へ……」
「お馬鹿!すぐに拾い集めなさい!」
スカーレットがミリアをせっつくが、ミリアは不敵な笑みを浮かべて言った。
「ふっ……お姉さま。「飛び散った羽を集めることは出来ない」という言葉を聞いたことがありませんか?」
「偉そうにするんじゃありません!ああもう、まったく――皆様!」
スカーレットが大きな声で叫んだ。
「義妹がやらかして申し訳ありません!」
完
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