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散歩
しおりを挟む帰り道を歩いていると、道路を挟んだ道の向こうに大きな黒い犬をつれて歩いている女性をみかけた。黒い犬は女性のすぐ後ろをぴったりとついて歩いている。
(うわ。でっけぇ犬……)
立ち上がったらおそらく女性より大きいだろう。成人男性くらいあるかもしれない。あんな大きな犬がもしも暴れ出したら、女性の力で抑えられるとは思えない。遠目に見ても女性はごく普通の主婦といった感じで、よく見ると腕にエコバッグをぶら下げている。
(犬を連れて散歩がてら買い物か? あんなでっけぇ犬、どこに繋いでたんだか……)
飼い主が買い物中、電信柱に繋がれている犬の姿は見たことがあるが、それらは小型犬かせいぜい柴犬ぐらいの大きさだ。あんな超大型犬から飼い主が離れたら、周りの人間が怖がるだろうに。高石はそう思って眉をしかめた。
そういう風に躾てあるのか、犬はぴったりと女性の後ろを歩き、横に並んだり前に出たりしない。
犬種はなんだろう、とぼんやり考えた高石は、ふと妙なことに気づいた。
しっぽが無いように見える。
まさか、と思って目を凝らしてみたが、やはりしっぽが無い。いや、しっぽどころか、耳も見えない。耳がぺたりと垂れたタイプなのかとも思ったが、そもそも犬を繋いでいるはずのリードが見えないことに気づいた高石は息を飲んだ。
あんな大きな犬をリードなしで放し歩きさせるだなんてあり得ない。
愕然とした高石は、次の瞬間に気づいた。
あれは、犬ではない。
真っ黒なあれは、犬ではなくて、四つん這いになって歩く人間だ。
全身、焦げたように真っ黒な、炭の塊のような人間が、地面に手をついて女性の後を追っている。
高石はまじまじとその姿を眺めた後で、くるりと踵を返して全速力で駆け出した。
来た道を駆け戻り、先程通り過ぎたコンビニに駆け込んだ。
いやもう、あんなのはやり過ごすに限る。
なんであんなものが、とか、どこであんなものを、とか、余計なことは考えない方がいいのだ。
しばらくの間、店内をうろうろして、たっぷり時間を置いてから帰宅した。幸い、女性の姿も黒い人間の姿もなくなっていた。
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