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究極の選択1

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「一人しか助けられないとしたら、父親と母親、どっちを助ける?」

 休み時間、窓の外を見ていたら男子生徒の声が聞こえた。今日は雪が降っていて運動場に遊びにいけない。暇を持て余した誰かがバカな話で盛り上がっている。
 誰の声かは見なくても分かる、山田だ。
 究極の選択、クラスの男子はそう呼んでいる。くだらない遊びだけど、この質問には興味を持った。私にはママがいない。だから、選択肢はパパしかない。さて、何というのだろうか?

「俺は……お母さんかな」

 鈴木くんの声がした。顔は見えないけど、声が少し上ずっているように聞こえた。
 鈴木くんは母親を助ける。父親が嫌いなのかな。

「マザコンだな」とからかう山田に「ちげーよ」と鈴木くんはムキになる。

「じゃあ、次の問題。一人しか助けられないとしたら、自分と母親、どっちを助ける?」

 山田は質問を変えた。選択肢は自分と母親。どういう状況なんだろう。
 母親と挑戦した雪山登山で遭難し、何日も救助隊の助けを待っている。そろそろ食料が尽きそうだ。リュックの中にはソイジョイが1本。最後のソイジョイをどちらが食べるか……なかなかのレアケースだ。
 山田はそういう状況を想定したのか?

 ママは病気で亡くなったとパパから聞いた。もし、私の命と引き換えにママを助けることができたら……これは難問だ。

 * * *

「15歳になったらね」

 ママのことを聞いたら、パパはいつもはぐらかした。なぜ15歳なのか、尋ねても教えてくれなかった。
 ママは私が2歳のときに亡くなった。私が生まれてからずっとママは病院に入院していたそうだ。だから、私にはママの記憶がない。

 お祖父ちゃん、お祖母ちゃんは会う度に「本当に葵にそっくりね」と言った。葵はママの名前。お祖母ちゃんはいつもプレゼントをくれた。ママに似合う洋服やアクセサリー、私が着けるとお祖母ちゃんはとても喜んだ。
 パパは家にママの写真を置かなかった。だから、本当にママに似ているのかどうか分からない。

「本当に私にそっくり?」
「うりふたつよ。ママはあなたに似て、可愛くて賢い女の子だったわ」とお祖母ちゃんは私の頭を撫でた。

 中学生に入ったころから、鏡に映った自分をママに見立てて話すようになった。
 席替えで鈴木くんの隣になった、毎日学校に行くのが楽しい。この前、鈴木くんが数学の教科書を忘れたから見せてあげた。学校で起こったいろんな出来事を話すと、ママは笑顔で聞いてくれた。でも、ママは何も言ってくれない。いろいろ相談できればいいのに。
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