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調子に乗ってやらかす少年
しおりを挟む武は二度目のテロリストの捕獲に成功して喜んでいる。
一方、お菊さんは武を見ていて気になることがある。
――この子は倫理観と危機感がない・・・
この年代の子供に『命を大切に!』と言っても響かないのだろう。
それに、今日も前鬼を2回殺しかけたのだから人の事は言えない。
倫理観に関してはこれから学んでもらうことにしよう。
確かに、新しいスキル(原子の操作)が使えるようになって武が嬉しいのは分かる。
でも、好奇心が危機感を大きく上回ってしまい、危険を顧みず実験しようとするのはさすがに良くない。
お菊さんが小言を言っても武は聞きそうにない。
だから、今回のテロリストとの戦闘で気付かせる方がいいのだろう。
武には、死なない程度にピンチに遭ってもらわないといけない。
お菊さんは武が次のテロリストに仕掛ける時に、こっそり後ろからついて行くことにした。
***
武は二度の成功体験から強気になっている。
これならレールガン(電磁砲)も出来るんじゃないか?
そう武は考えている。
レールガンは正確には『電磁レールガン』と言って、電力と磁力を使って弾を撃つ技術だ。
つまり、磁場のなかで電気を流すと力が発生する『フレミングの法則』を応用して弾を動かす。
武は原子から自由電子を取得できるかを試してみた。こっちは問題なくできそうだ。
磁力に関しては、磁石を使うか、電流を利用して磁力を作るかどちらかだ。
武は初歩的なことに気付いた。
――あっ、磁石がない・・・
磁石が無い場合は電流を流して磁力を作るしかない。
代表的なのは伝導体に電流を流して磁力を発生させる方法だ。
レールガン(電磁砲)は比較的単純な構造をしている。
伝導体2本とその間に飛ばす弾(弾も伝導体)を用意して電流を流す。そうすると、磁場が発生し弾に力(ローレンツ力)がはたらく。『フレミングの法則』と同じ原理だ。
だから、磁石を用意しなくても電源と伝導体を用意すればレールガンは作れる。
【図3-2:レールガンの仕組み】
レールガンを作ろうとして、武はまた気付いた。
――あっ、伝導体がない・・・
道端に都合よく長い針金が落ちているわけないし、道端に都合よく磁石が落ちているわけがないのだ。
針金と磁石はコンビニに売ってないだろう。
ホームセンターに買いに行くべきだろうか?
そんなことをしていたら、ピーチ・ボーイズが逃走してしまうかもしれない。
原子を合成して金属をつくるべきか?
レールガンを飛ばす量を作るのは時間が掛かりそうだ。
自力でレールガンを作れるか、武は試案している。
そして武は一つの結論に達した。
――レールガンを用意するのに時間が掛かり過ぎる!
レールガンでなくてもテロリストを倒す方法はあるはずだ。
武は単純な解決方法を思い付いた。
――感電させればいいのではないか?
武はテロリストの一人をターゲットに絞った。そいつは窓に手をついて外を眺めている。
窓枠は鉄の柵と繋がっているようだから、近くまでいけば感電させることができそうだ。
武はテロリストの死角から鉄の柵まで移動した。
安全に配慮しながら、少しの電子を鉄の柵に流し込んだ。
「痛!」
武とテロリストは同時に叫んだ。
武は危うく意識を失いそうになった。テロリストもフラフラしているが体が大きいためダメージは武よりも少なそうだ。
武はすっかり忘れていた。
電気は絶縁体を持っていないと感電する・・・。
武に気付いたテロリストは自動小銃を武に向けた。
――やばいっ 撃たれる・・・
武はリチウム弾をテロリストに撃ち込もうとするが、テロリストの方が一瞬早かった。
“ドドドドドドドドド”
武が目を瞑った瞬間、武の周りに水の膜が飛んできた。
テロリストの撃った弾はその膜に遮られて軌道が逸れた。
――助かった・・・
武は無事を確認するとリチウム弾をテロリストに撃ち込んだ。
すると、テロリストは壁まで吹っ飛んで動かなくなった。
武が後ろを振り向くとお菊さん立っていた。少し怒っているみたいだ。
「だから、危ないって言ったでしょ」
「ごめんなさい・・・」
武は反省しているように見える。
「自分の実力を過信したらダメよ。確実に敵を倒せる準備をしてから、一撃で倒しなさい」お菊さんは優しく言った。
「分かったよ。助けてくれてありがとう」
「さっきは何をしていたの?」お菊さんは武に聞いた。
「レールガンを試したかったんだ。だけど材料が足りなかった・・・」
「レールガン・・・。ホームセンターに買いに行く?」
「ピーチ・ボーイズが逃げちゃうでしょ。仕方ないからテロリストを感電させようとしたんだけど、自分も感電した・・・」
「危ないことするわね。電子は気を付けないとダメよ。気絶するわよ」
「気を付けるよ・・・」
武は小さく言った。
――反省したのだろうか?
お菊さんは不安を感じながらも、武が無事だったことに胸を撫で下ろした。
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