僕と猫とゲートキーパー ー 勝手に他人の半生を書いてみた(第3章)

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調子に乗ってやらかす少年

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武は二度目のテロリストの捕獲に成功して喜んでいる。
一方、お菊さんは武を見ていて気になることがある。

――この子は倫理観と危機感がない・・・

この年代の子供に『命を大切に!』と言っても響かないのだろう。
それに、今日も前鬼を2回殺しかけたのだから人の事は言えない。
倫理観に関してはこれから学んでもらうことにしよう。

確かに、新しいスキル(原子の操作)が使えるようになって武が嬉しいのは分かる。
でも、好奇心が危機感を大きく上回ってしまい、危険を顧みず実験しようとするのはさすがに良くない。
お菊さんが小言を言っても武は聞きそうにない。
だから、今回のテロリストとの戦闘で気付かせる方がいいのだろう。
武には、死なない程度にピンチに遭ってもらわないといけない。

お菊さんは武が次のテロリストに仕掛ける時に、こっそり後ろからついて行くことにした。

***

武は二度の成功体験から強気になっている。

これならレールガン(電磁砲)も出来るんじゃないか?
そう武は考えている。

レールガンは正確には『電磁レールガン』と言って、電力と磁力を使って弾を撃つ技術だ。
つまり、磁場のなかで電気を流すと力が発生する『フレミングの法則』を応用して弾を動かす。

武は原子から自由電子を取得できるかを試してみた。こっちは問題なくできそうだ。
磁力に関しては、磁石を使うか、電流を利用して磁力を作るかどちらかだ。

武は初歩的なことに気付いた。

――あっ、磁石がない・・・

磁石が無い場合は電流を流して磁力を作るしかない。
代表的なのは伝導体に電流を流して磁力を発生させる方法だ。

レールガン(電磁砲)は比較的単純な構造をしている。
伝導体2本とその間に飛ばす弾(弾も伝導体)を用意して電流を流す。そうすると、磁場が発生し弾に力(ローレンツ力)がはたらく。『フレミングの法則』と同じ原理だ。
だから、磁石を用意しなくても電源と伝導体を用意すればレールガンは作れる。

【図3-2:レールガンの仕組み】
 


レールガンを作ろうとして、武はまた気付いた。

――あっ、伝導体がない・・・

道端に都合よく長い針金が落ちているわけないし、道端に都合よく磁石が落ちているわけがないのだ。

針金と磁石はコンビニに売ってないだろう。
ホームセンターに買いに行くべきだろうか?
そんなことをしていたら、ピーチ・ボーイズが逃走してしまうかもしれない。

原子を合成して金属をつくるべきか?
レールガンを飛ばす量を作るのは時間が掛かりそうだ。

自力でレールガンを作れるか、武は試案している。
そして武は一つの結論に達した。

――レールガンを用意するのに時間が掛かり過ぎる!

レールガンでなくてもテロリストを倒す方法はあるはずだ。
武は単純な解決方法を思い付いた。

――感電させればいいのではないか?

武はテロリストの一人をターゲットに絞った。そいつは窓に手をついて外を眺めている。
窓枠は鉄の柵と繋がっているようだから、近くまでいけば感電させることができそうだ。

武はテロリストの死角から鉄の柵まで移動した。
安全に配慮しながら、少しの電子を鉄の柵に流し込んだ。

「痛!」
武とテロリストは同時に叫んだ。

武は危うく意識を失いそうになった。テロリストもフラフラしているが体が大きいためダメージは武よりも少なそうだ。

武はすっかり忘れていた。
電気は絶縁体を持っていないと感電する・・・。

武に気付いたテロリストは自動小銃を武に向けた。

――やばいっ 撃たれる・・・

武はリチウム弾をテロリストに撃ち込もうとするが、テロリストの方が一瞬早かった。

“ドドドドドドドドド”

武が目を瞑った瞬間、武の周りに水の膜が飛んできた。
テロリストの撃った弾はその膜に遮られて軌道が逸れた。

――助かった・・・

武は無事を確認するとリチウム弾をテロリストに撃ち込んだ。
すると、テロリストは壁まで吹っ飛んで動かなくなった。

武が後ろを振り向くとお菊さん立っていた。少し怒っているみたいだ。

「だから、危ないって言ったでしょ」

「ごめんなさい・・・」
武は反省しているように見える。

「自分の実力を過信したらダメよ。確実に敵を倒せる準備をしてから、一撃で倒しなさい」お菊さんは優しく言った。

「分かったよ。助けてくれてありがとう」

「さっきは何をしていたの?」お菊さんは武に聞いた。

「レールガンを試したかったんだ。だけど材料が足りなかった・・・」

「レールガン・・・。ホームセンターに買いに行く?」

「ピーチ・ボーイズが逃げちゃうでしょ。仕方ないからテロリストを感電させようとしたんだけど、自分も感電した・・・」

「危ないことするわね。電子は気を付けないとダメよ。気絶するわよ」

「気を付けるよ・・・」
武は小さく言った。

――反省したのだろうか?

お菊さんは不安を感じながらも、武が無事だったことに胸を撫で下ろした。
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