第4王子は中途半端だから探偵することにした

kkkkk

文字の大きさ
2 / 197
第1回活動報告:横領犯を捕まえろ

内部調査部を立ち上げよう(その1)

しおりを挟む
(2)内部調査部を立ち上げよう

内部調査部を立ち上げることになった俺は、とりあえず総務省内で使っていない一室を内部調査部として使うことにした。
総務省の建物には部屋がたくさんあるが、備品の数が足りていない。内部調査部で使う机と椅子がなかったので、仕方なく内務省で廃棄予定だった机と椅子を4個ずつ貰ってきた。デザインがバラバラの机と椅子だから、ゴミ捨て場から拾ってきたみたいになっている。
予算が潤沢にあれば、こういう苦労をせずに済むのだが。

俺が内務省から運んできた机と椅子を並べていると、ルイーズがやってきた。
第13穀物倉庫の調査は俺一人ではできないから、総務省の市場調査部で働いているルイーズにお願いして、内部調査部のメンバーとして手伝ってもらうことにしたのだ。

総務省の人事異動は毎年決まった時期に行われるため、一般職員を内部調査部に異動させにくい。不定期の異動は、不祥事と思っているからだ。
もし、総務省の他の職員を内部調査部に異動させたら、選ばれた職員は、ショックを受けるだろう。

ルイーズは、一般的に見れば、美人と言えるだろう。ただ、性格が変わっている。最初は人が寄ってくるのだが、人間性が分かると人が離れていく。だから、まだ独身だ。
彼氏がいるかどうかは知らない。聞いたらセクハラになるかもしれないから、デリケートな話題はしないように気を付けている。
彼女は王立大学の同級生で、4位で卒業した。ちなみに、俺は3位だった。残念ながら1位と2位の生徒は王国軍と内務省にとられた。就職先ランキングが総務省よりも上だから仕方ない。
とにかく、ルイーズの性格はあれだが、俺はあまり気にならないので、内部調査部に来てもらった。内部調査部の専属ではなく、市場調査部と兼務だ。総務省はそんなに暇ではない。

ルイーズは内部調査部(仮)に入ると、言った。

「この部屋、臭くない?」

まず先に言うことがあるだろう。
机と椅子を内務省から運んで汗だくの俺は、少し機嫌が悪い。

「臭かったら、消臭剤とか買ってきて、置いといてよ。」

「それに、机の高さが違うから、ガタガタじゃない。粗大ゴミ置き場から拾ってきたみたい。ひょっとして、椅子も拾ってきた?」

失礼なことを言ってくれる。粗大ゴミ置き場を経由はしていない。
内務省から粗大ゴミ置き場に行く前に、貰ってきた。

「総務省の備品が足りなかったから、内務省からもらってきたんだ。サイズ違いしか余ってなかったから、しばらくはこれで我慢して。」

「えー。ホコリ溜まってるから、座るのは嫌だな。」

それくらい、拭けばいいじゃないか。
第13穀物倉庫の調査を始める前に、内部調査部を掃除する必要があるようだ。

「ルイーズ。内部調査部の最初の任務だ。君を掃除大臣に任命する。」

「小学生みたいなことを言ってないで、さっさと清掃員を呼べばいいじゃない。」とルイーズはもっともらしいことを言う。
でも、清掃員は呼べない。契約にこの部屋の掃除は入っていないからだ。

「この部屋は清掃する契約になっていない。しばらくは、自分たちで掃除だね。さっそくだけど、掃除機を総務部から借りてきて。」

俺の言い方が気に障ったのだろう。

「私は市場調査部の仕事で忙しいんだから、自分で取りにいけばいいじゃない。」とルイーズは言った。

「そんなこと言ったら、俺だって、総務大臣で忙しいんだ。」と俺は言い返す。

「掃除大臣が命令する。ダニエル、掃除機を持ってきなさい。」

「分かったから、掃除機を取ってくるから、その間に机と椅子を拭いといてよ。」
俺は折れた。このまま平行線をたどれば、第13穀物倉庫の調査が進められないからだ。
この辺りが、落としどころだろう。

その後、俺とルイーズは1時間くらい黙々と手を動かし、何とか内部調査部の掃除が終わった。最後に「殺風景だから、絵でも貼ろうか?」と聞いたが却下された。
どうやら俺のセンスを信じていないようだ。

いろいろあったが、これで第13穀物倉庫の調査に取り掛かれそうだ。

俺はルイーズに、国王宛に届いた第13穀物倉庫の件を説明した。誰かが穀物を盗んで売っているだろうから、それを調査しないといけないのが、内部調査部の第1号案件だ。

<続く>
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...